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女賢者と人狼の唄  作者: けまり
第一章 人狼転生
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四話 人狼の誕生

 美玲の記憶を取り戻すと決めてまず考えたのはこの世界の難易度だ。

 戦えなくて死亡。

 なんて美玲に顔向けできない。現在外に出て美玲を直すための魔道具を探しているのは美玲の配下の一級魔聖賢者のみ。そいつらは五人いて、美玲専属近衛兵として機能していたらしい。五人で世界のどこかにあるたった一つの道具を見つけるなんて不可能だ。

 そう考えるとやはり自分が動くのが一番良いと思ったが、どうやらこの犬体。なかなか位が高い。意思を伝えられることができればこの迷宮全員で魔道具捜索命令を出せるのに..

 そう思いメイドであるリーンを連れて魔道具室に来た。魔道具ならこの会話という問題も解決できるかもしれない。魔道具室は薄暗く、警備の蜘蛛兵がいい雰囲気を出している。ちなみに俺が一吠えしただけで平伏してくれる。


 俺は色々な魔道具化した武器、書物、ポーション(時間が経ってて飲める色じゃない)の匂いを嗅いでいった。そんな中、異様な雰囲気の短剣。カッコよく言うとダガーがあった。(ガード)部分に石が埋め込んである。正直記憶を戻してくれるとは思えないなぁ。と思いつつ咥えてみた。


 ふむふむ初めて持ったけど普通のダガー...ん?俺が咥えた瞬間石が白く光り、俺の身体と繋がった。そして体が強く光ったかと思ったら...無事だった。なんだったんだ?今のは。そういうエフェクトを出す系の魔道具か?

 不思議...いやこの世界で今のところ不思議じゃないことはないな。


 ここに住んでいるリーンなら何か知ってるかもしれない。

「なあリーン?あの光って何かわかるか?」


 俺の口が動いた!そして言語を喋った!どういうことだ?さっきの光か!リーンもよくわからない顔をしており、何を血迷ったのか俺に魔法を向けてきた。


「誰だ貴様!ここは魔道具室だ!勝手な侵入は...そうだミュー様!貴様ミュー様をどこにやった!この部屋にいたはず。」


 ミュー?ミューは俺のはずだが?それにしてもリーン。下をチラチラと見てくる。どうしたんだろう?不思議に思い俺も下を見てみた。

 そこには人間の身体と、男性器らしき物が見えた。


「え?」


 俺は転生して狼の身体を手に入れた。そしてその体には大きな特徴があった。月の光を受けると任意のタイミングで人化することができるという特徴だ。つまり俺はただの狼ではなく、人狼に転生していたのだ。そういえばさっきリーンが説明書を読んでいるときに月がどうの石がどうのとか言ってたな。


「それにこの私は五級魔聖賢者だ!そんな私を名で呼びすてとは!無礼者!それに...服を着ないとはなんと破廉恥な!死んで詫びろ!」


 リーンはまだ顔を赤らめて怒っている。


「ごめん。俺。ミューは俺。」


 ...

 沈黙きっつ。


 ---


 そのあと俺は彼女に説明した。自分が恐らく人狼であるということ。月の光がトリガーだということ。ちなみに全裸で説明してたからめっちゃ恥ずかしいけど女性が全裸の男と密室から出てくるなんていう状況を警備が見たら()()()()()()を想像しちゃうでしょ。だからここで説明した。

 しかも最悪なのはこのボディ。大体前世の年齢の身体だ。十五歳くらいになっている。たしかリーンって精神年齢が十五歳くらいって...同年代に裸体なんて、あー恥ずかしい。ちなみに明らかに狼フォルムのころよりも興奮した。中身も人間になったんだろう。


 彼女は言葉も出ない表情で服を取りに行った。それにしても思わぬところで人化したな。俺はダガーをもう一度持ってみた。何も起きない。もしかしたら発動回数が決まってるとか、月の光が足りないとか、何か理由があるのかもしれない。

そういえばこの後絶対マイレに書物の内容を聞かれる。転生者ですとか美玲の身体とかは言わないほうがよさそうだな。もしかしたら転生者は悪かもしれないからだ。


服を持ってきたリーンはまだ赤い顔をしていた。なんだ?ボーイズエクスカリバーを見たことがないのか?年齢も年齢だからググれば...そうだ異世界。

よしここは面白いから鈍感系で行こう。純粋な人にはこれが刺さる。数多くのラノベで予習済みだ。


「リーン?どうかしたの?顔が赤いよ?」


「な...何でもございません!」

目を合わせようとしてくれない。っというかずっと右を向いている。


俺は適当に服を着た。パーカーにジーンズっぽいやつ。美玲の発明っぽいな。ジーンズの材質はちょっと違うけど色や見た目の再現度がすごい。日本で着ても違和感がないね。


ダガーを腰にしまい、マイレへ報告に向かった。


===


「マイレ様。五級魔聖賢者のリーンでございます。緊急の用件で参りました。」


「はい。リーンですね。どうぞ?」


やはりすごい魔力量だ。一目見ただけで緊張感が走る。俺も魔法とか使いたいな。魔法は男のロマンだからな。


「きゃ!リーン?その殿方は...?あなたの夢の彼氏ですの?」


夢?彼氏?なんの話だ?それとなんか狼の頃と対応違うくね。


「///ちょっ。マイレサマ!ナンノハナシデスカ!

...ゴホン。

こちらはミュー様です。先ほど魔道具室にて人狼であることが発覚しました。現在は人型です。」


「...始めまして。私マイレと申します。えっと。。よろしくお願いします///」

なんだこいつら。俺は服を着ているというのに顔を赤くして下向いて。


「顔を上げてください陛下。」


起こらせた可能性があるな。ここは下手に出てうまく立ちまわろう。

「へへへ...陛下?!私はそんな...」


「ご謙遜を。それよりマイレ様。提案があるのですがよろしいでしょうか。」


「...あっ。その前にあの書物について聞いていいですか?」

チッ。うまく話しを逸らしたと思ったのに。


「はい陛下。あの書物から懐かしい香りがしたので嗅いでいました。」


「報告では中の文章を見ていたということですが?」


こいつ...鋭いのか鈍いのかどっちなんだ。


「はっ。インクを嗅いでいました。」


だが俺は二オイフェチだということを突き通すぜ。


「...そうですか。残念です。」 「申し訳ございません。」


この下手に出るのも悪くないな。そういえば俺が彼女の前に現れてからマイレは統制に積極的になったと聞く。現に今きちんとこの迷宮の王らしい言葉使いをしている。何か記憶とかやる気に響いたのかもな。


「それで。提案とはなんですか?」


来たチャンス!

「はっ!現在マイレ様の記憶を捜索しているのは一級魔聖賢者のみだと聞きます。ですがそれだと一生見つかりません。

そこでこの迷宮から外に出て、我々全勢力で捜索すればよいのではと思い...」


「外は危険と聞きますが?」


「確かに外のほとんどが人間に支配された地域です。ですが、陛下の言葉に耳を貸さない生命なんぞ存在しません。配下であった私が保証します。」


「それで?まず何をするつもりなの?この迷宮は過去に転移して外は砂漠。ほかの町や都市への距離が遠すぎます。」


「迷宮をもとにあった場所へ戻しましょう。」


どんどんマイレの表情が険しくなっていく。没案か...


「.........


許可する。」

え。ほぼ即答だと。ここは何日か待ってーからの許可か、何日か待ってーからの却下かと思った。


「迷宮の転移の方法については私が担当する。ミュー。あなたは私の部屋へ来なさい。一様ペットですから。」


.....めっちゃ行きたくないんだが。

===


それにしても誰に聞いても十年前、この体が人狼だった記録がない。月の光くらい浴びたことあるだろうに。そう考えると俺が転生したことで何かが起こった可能性が高いな。


体はほとんどが人間で、唯一耳が狼の耳だ。ケモミミというやつだな。尻尾はなぜか生えていない。人狼という種族について情報が欲しいと思い、全魔物を知っているというやつに話を聞いてみた...


「そんな魔物はいない?」


「ああ。人狼。又は人の姿と狼の姿を自由に変化できる魔物は存在しない。九尾という狐と人間の姿を自由に変化できる魔物はいるがな。その亜種っといったところか。今のところお前とてもレアだぞ?狼と人間の生殖どっちが反映されるんだろうな。実験してみてぇ。

そういえばその獣耳があるってことは獣人なのか?だとすると獣人狼...ややこしいな。人狼でいいや人狼で。」


不気味な笑みを浮かべているこいつは、記憶力の天才で幼少期に見た魔物大全という本の内容を丸暗記しているそうだ。胡散臭いが、今は情報が足りない。信じるしかない。


唯一の魔物。唯一の生物。唯一か。でもこれはでかい。人化したことで美玲に存在を証明できるようになった。起こしたらすぐに会える。これは嬉しい。


怖いことも多い中、少しの希望が見えて心の中で密かにガッツポーズをする俺であった。

三日に一度の投稿を目標で行きます。

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