二話 主人は世界を代表する賢者様
二人で話したい。主人にそういわれた。こんなセリフかわいい女の子に言われたら飛んで行くところだが、この主人。恐ろしく魔力が多いのか、オーラが強すぎる。一体何者なんだ?
「ねえ。ミューさん??私よくわかんないんです。記憶喪失を告げられて一度もこの迷宮という場所から出ていないからまだ言い切れませんが、目を覚ましてすぐに組織の統括をしろとか意味わかんないです。」
俺の方がわかんないよ。転生したと思ったら変なチートメイドに会って主人が記憶喪失とか。
「私は...だれ?」
自分を見失うとか中二病すぎぃ。って昔は思ってたが、そんなこともなさそうだ。
「お犬さんに相談してもわかんないですよね。本題に入ります。
それでこの体について理解しようとインベントリ?というのですか?そういった魔法を使ったら空間に穴が開いて、その中に厳重な宝箱を見つけたんです。どうやらこの体の持ち主。マイレさんが書いてた書物みたいですけど、私じゃ読めなくて。あなたはどうでしょうか?」
そう言うとマイレとやらは手を空中に突っ込んだ。そしてちょうど本が一冊入るくらいの小さな宝箱を出した。宝箱自体に魔力がこもっているのか、強いオーラが見える。鎖とかでも繋がれていて本当に厳重だ。オートロックとかがない辺り時代は現代より昔か。
「開錠せよ。オフロック。」
魔法だ。彼女は触れることなく厳重そうな宝箱を開錠して見せた。
「ああ、これはマイレさんの部屋にあったメモにあった魔法ですので。」
緊張した視線を送っていると、それに気が付いたのか慌てだした。女の照れた顔というのはかわいいものだ。この女も日本にいたらトップアイドル...いや顔はアジア系じゃないから外国のアイドルでトップを狙えるだろう。だが犬だからだろうか?全く欲が沸かない。
「これです。どこの言語でしょうか?」
俺はこの世界に来てまだ間もない。当たり前だが文字も読めない。でも言葉は理解できている。これはおそらくこの犬の理解に関係していると思う。言葉は独自に犬が覚えたのだろうが、さすがに文字までは覚えていないのだろう。
だから俺が読めるはずがないのだ。そう謎の余裕を持って文章を見ると俺は驚愕した。日本語だ。俺はひったくるように書物を奪い、読んだ。最初の一文それですべてを理解した。
(私の実の名前はマイレではない。鈴塚美玲だ。この世界では私が私でなくなる可能性がある。だから忘れないようにここに記す。)
美玲だ。美玲も転生してたんだ!これは日記だ。俺は喜びの目で彼女を見た。だが美玲はきょとんとしている。そうだ記憶喪失。何があった?
俺は最近のページを開いて読んだ。
(フリーズバイト帝国が前線を上げてきた。正直二級魔聖賢者も残り少ない。負ける可能性が見えてきた。)
(■■■■■■■■■■■)
この次の日は書かれていない。涙の痕があるため、戦争で何かあったな。慰めてやりたいな過去に行ってでも。
(昨日は泣いてしまって書けなかった。部下にこんな姿は見せられないな。昨日一番の友人であるメリウス■■■■■)
戦死か。思い出してしまったのだろう。涙の痕が残っている。それより部下?どういうことだ。
俺は必死に全ページを呼んだ。それを止めることはマイレは決してしなかった。
---
三日後
---
俺は完徹漬けで何とかすべてを読んだ。部屋に持ち込み、読み続けた。くだらないような内容にも目を通した。
大体わかったことはある。
まず一番気になっていた単語-賢者-。どうやら言葉通りらしい。彼女は百五十年前に人と魔族間のハーフに転生したらしい。そして様々な出会いと別れを終えて二十歳の時に不老魔術を会得。その時に命を懸けたらしい。なぜそこまでと思ったら理由はなんと俺。俺も転生していることを確信していて探すためにそうした。っと書いてあるがなぜそんな確信が持てるかは書いてなかった。
そこから約百年を世界最大の地下ダンジョンでの修行に使ったところ、なぜか自分が最深部のボスになってしまい桃太郎のように下部を作り続けた結果国のように大きくなってしまった。美玲...
一様四百万戦無敗で、途中から-賢者-の名を付けられた。
階級のシステムについても書いてあった。
〇〇級魔聖賢者というのはここでの階級のことで一級が一番で五級が最弱。っとはいえ最弱でも常人にとっては化け物クラスらしい。そのほかの部下は全員階級圏外で。そしてすべての部下が美玲に忠誠を誓っているらしい。まあ四百万戦無敗の人に逆らうやつはいないだろう。
自分のことをそんなに褒めるやつがあまりいないように、この書物も控えめに書かれているのを考慮すると...美玲つっよ。海の神とかと互角に戦う美玲の本が出版されているそうで、ほぼアイドル。ちなみに海の神とは実際に戦ったそうで、今この迷宮の守護者をしているらしい。つまり圧倒的だったのか。幸いといっていいのかはわからないが、愛人や結婚相手はいないそうで人生で一度も付き合ったりはしてないそう。そこは変わってないな。
魔道具とやらが何かも書かれていた。魔道具はとても貴重な物で、世界中のダンジョンにあるらしい。どうやらダンジョンにある膨大な魔力が死んだ迷宮挑戦者の剣や防具と混ざってできるらしい。一つできるのに途方もない年月がかかる。そして魔道具にもレベル分けがされており、特級、一級、二級、三級、下級のレベルに振り分けられている。
下級はほぼゴミで、用途がわからない、又は使えないもの。
三級は使えなくはないが、魔力消費が多かったりと大変。
二級は高級品で、上級貴族とかが隠し持っているレベル。飲み水が無限に出るとか使えるものが多い。
一級は国宝級。ランダムな場所に隕石を降らせるという魔道具もあるらしい。
特級は存在がまだ確認されていない幻の品。見つかったらすぐに隠蔽されて醜い争いが生まれるのは確か。それほど高価。
戦争のことはよくわからないが、美玲が記憶喪失になって主君がいなくなったことにより(厳密にはいるけどほぼ機能してない)ダンジョン自体を遠く離れた地に転移させて十年も引きこもってるそうだ。だが十年というのは約の話。このダンジョンは強い魔力で守られているので時空も少し歪んでいる。いつもはそこまでではないそうだが、転移によってその魔力防御システムにトラブルが発生したそう。それによって時間の流れが遅くなったという。一級魔聖賢者が帰ってくる、もしくは美玲がすべてを思い出すまで引きこもるようだ。
===
そうして俺は転生というハプニングに巻き込まれた。だが人生腐ったわけではなさそうだ。美玲が返ってくる。その可能性があるなら俺は彼女が行ったように信じてみよう。彼女のように自分から彼女に会いに行くのだ。ほかでもない俺が記憶を直す。そのためならなんだってやってやる。
だって彼女。鈴塚美玲は
俺の最後の希望だから。