025 ふたり(前)
揺蕩うような水面の光だけが差し込む水底で、2つの影が踊る。その様をアリソンは氷塊に押し潰されながら、為す術なく見つめていた──はずだったのだが。
「えっと、これ、どういう状況⋯⋯?」
背中が重たくて冷たい、のは構わない。氷塊が乗っかっているのだから、至極当然のことだ。
でも、身体が壁に嵌まっているのは、一体何故なのだろうか。
壁と氷塊から這いずり出ようと伸ばした指先が、ガリガリと地面を引っ掻く。黒檀のような漆黒の床は、とてもじゃないが水底のようには思えない。明らかに、誰かの家の、どこかの床だ。
というか、魔界でアリソンとラズが暮らしていた、あの家の床だ。
壁からも氷塊からも逃れられず、ため息を吐きながらばたんと両手を伸ばしたまま下ろす。すると、ふいにぞわりとした悪寒が駆け上がる。パッと顔を上げるが、誰かが来たわけでも、何かが変わったわけでもない。
ただ、ほんの少しの寒気と、胸に残ったかすかな違和感にぱちりと瞬きをし、アリソンは首を傾げる。
「⋯⋯あれ? いま一瞬、床が消えたような⋯⋯」
気のせいかな、と呟き、アリソンは顔を横に向けて地べたにつける。
──どうしよう、こんなところで壁に嵌まっている場合じゃないのに。
周囲がまだ水底だったとき、最後に見た景色を思い出しながら、アリソンはもう一度、大きくため息をついた。
◇◆◇
襲い来るセネカの魔術を器用に躱しながら、ラズは徐々に距離を縮めていた。懐に入り込んだ彼女の渾身の蹴りは、けれど防壁魔術に遮られて届かない。
「アッハ! そんな攻撃、通るわけないだろ。僕を誰だと思ってるんだよ?」
「あら、あの子にはっ倒されておいて、そんな大口聞けるなんて面の皮が厚いのね。見習いたいものだわ」
「そっちこそ随分とよく回る口だよねえ。口を回したって、戦況が変わるわけじゃないってのにさ!」
セネカの杖に冷気が集い、氷のつぶてがラズに向けて放たれる。バックステップで回避しながら、彼女も手から風の刃を放つ──セネカが誇らしげにしていた無詠唱であるが、簡単な魔術であればそう難しいことではないのだ──が、またしても阻まれてしまう。
先程は魔人の炎で焼き切ることができたのに、今は防壁にヒビひとつ入りはしない。ラズが舌打ちするのをニヤニヤと笑うセネカは、勝利を確信しきっている。
それらを、溶ける気配のない氷塊に押し潰されたまま見ているしかできないなんて。なんとか背中にのし掛かるそれを退かそうと試みているものの、氷塊はビクともしない。
ラズを助けに来たはずなのに、自分はなんて無力なのだろう。歯を噛み締めたアリソンは、それでも諦めずに身を捩る。
自分の無力さを嘆いて泣くのは後だ。今はまだ、そんな時ではない。彼女に加勢しなければ──例え、己がラズよりもはるかに無力だったとしても。
『諦めようよ』
頭上に響いた声に、驚いて身を捩る。後ろに立ってこちらを見下ろす人影は、若草色のワンピースと皮の胸当てをつけ、灰を被ったような髪を首の付け根で一つに束ねていて。どこからどう見ても自分とそっくりの姿をした人物に、ゾッと鳥肌が立つ。
どこまでも自分とそっくりで、けれど目の色が青いそのアリソンは、悲しげに微笑む。
『私に何ができるの? ルノーが殺された時だって、なんにもできなかったじゃない。今だって、ラズさんの中に飛び込んできて何か変わった? 変わってないでしょう?』
「っ、それは⋯⋯」
『できないんだよ、どうしようもないんだよ。ね、もう諦めよう?』
全部彼女の言う通りだ。自分はいつも大事な時に何もできなかった。イグニスの力がなければ、今だって無力で何の力も持たない村娘のままで。
それでも、いや、だからこそここで諦めるわけにはいかない。
「⋯⋯嫌だよ」
『え?』
「何も守れなかったから、何もできなかったからこそ、いま諦めるわけにはいかない⋯⋯!」
両親を守れなかった。ルノーを守れなかった。イグニスを守れなかった。
だから、ラズだけは。
いま目の前にいるラズだけは、もう失うわけにはいかない。
「幻の言葉なんかに、私は惑わされない。私は戦うの、ラズさんと一緒にレインナートとその仲間を殺して、失ったもの全部、取り戻すんだから!」
青い目のアリソンは、その言葉に目を見開くと、『そっか』と静かに零す。
『じゃあ、もう大丈夫だね。これから先どんなことがあっても、その炎を忘れないで。今のあなたなら守れるはずだよ』
「え⋯⋯」
言うだけ言って、彼女は静かに笑って消えた。セネカの魔術で生まれた存在のはずなのに、まるで本当にもうひとりの自分のようで不思議な気持ちになる。
視線を前方に戻すと、セネカの防壁を破こうとラズが戦っているのが見える。彼女もまだ、諦めていないのだ。
「どいつもこいつも、雑魚のくせに諦めが悪いなあ! さっさと諦めて膝を折って頭を地べたに摩りつけて靴でも舐めなよ!」
「ハッ。敵に膝を折るぐらいなら、死んだ方がマシよ──閃光!」
詠唱と共にラズの指先から光の砲弾が放たれ、セネカに激突する。当然、セネカの展開した防壁魔術に阻まれるが、それでも防壁ごと彼を押し退けるだけの強さはあった。
舌打ちをしたセネカが杖を掲げ、ラズの頭上から氷の槍が降る。防壁を展開することなく躱し切った彼女だが、呼吸が少し荒い。ここにいるのは実体ではなく精神体とは言え、始終動き回っていれば疲れが生じるものなのだろう。
目ざとくそれに気づいたセネカの口端に、邪悪な笑みが広がる。
「必死になって虚勢を張るなんて、意外と可愛げがあるんだね。もっとそういうところをアピールして弁えてれば、勇者様に捨てられることもなかったんじゃない?」
「黙って! あいつの名前なんか出すんじゃないわよ、吐き気がする!」
「吐き気じゃなくて、動揺する、の間違いだろ? ほら、空間が歪んでる。ここはお前の精神世界なんだ、心の持ちようでいくらでも変わりようがある。お前が動揺すれば不安定になるんだ。いくら口先で誤魔化したって、自分の弱さからは逃げられないのさ!」
勝ち誇ったセネカが杖を振り上げ、ラズの頭上から雷が降り注ぐ。
「っ──ラズ!」
届かないと分かっていてなお、思わず手を伸ばしたアリソンの叫びに、スローモーションでラズが振り向く。揺れる蒼が大きく見開かれた瞬間、ぐらりと空間が歪み、目の前の景色がぐにゃりと混ざり合う。目眩がした時のような極彩色と浮遊感、喉に迫り上がる気持ち悪さ。
あまりの負荷に堪えきれず意識を手放す前、最後に見たラズの唇は、確かに意味のある音を紡いでいた。
──イグニス、と。
◇◆◇
そして、現在に至る。
「じゃあ、この景色もラズさんの記憶の中、なのかなぁ⋯⋯」
壁に身体が嵌まった状態にも、段々と慣れてきてしまったアリソンは、ため息まじりに呟く。
どうせ壁に嵌る前から氷塊で身動きが取れなかったのだ。よりいっそう絵面が馬鹿馬鹿しくなったところで、さして変わりはない。するべきことは同じ。
ここを抜け出して、ラズを見つけて、それから。それから。
「やっと見つけた⋯⋯!」
凛とした声と共に、ばたんと部屋のクローゼットを開けて現れたのは、ラズだった。息を切らせた彼女はスリットの入ったワンピースの裾を翻しながら、駆けつけてくる。
なんでそんなところから、とか。私が見えてるんですか、とか。言いたいことがいくつも登ってきて、どれもが声にならない。
口をぱくぱくと開け閉めしているアリソンに構うことなく、彼女はツカツカと近くまでくると、壁に嵌まっているアリソンの現状に呆れたように手を腰に当てる。
「ちょっとアンタ、何その格好は⋯⋯」
「えーと、気がついたらこうなってて⋯⋯全然、身動きが取れないんです」
「見れば分かるわよ、もう。とにかく氷塊を消せば、その分いくらか空間が生まれるはずだから、その隙に空間が埋まる前に脱出しなさい。いいわね?」
「え、えっと⋯⋯」
困惑を顔に浮かべたアリソンに、ラズは顔を顰めたのち、「手短に言うわよ」と前置きして、常よりも些か早口に語り出す。
「ここはあたしの記憶の中じゃなくて、記憶を『再現』した空間みたいなの。だけど完全に再現できてるわけじゃないから、さっきみたいにどこかのドアがクローゼットに繋がってたりするのよね。アンタがそこに嵌まってるのも、多分その辺りが原因なんじゃないかしら」
「な、なるほど?」
「だからその氷塊を消滅させれば、壁がその場所を埋めるはず。だけど、この空間はあたしの動揺がきっかけで作られた物だから安定していない。よって、壁が完全に埋め尽くすには少しのずれが発生するわ。さっきその辺にあるもので試したから間違いないわ。あたしが氷塊を解除してあげるから、アンタはすぐに走り出せるように準備しておきなさい。いいわね?」
そう言って、ラズはアリソンが頷くのを待たずに、背中の上の、壁を貫通している氷塊に手を伸ばす。
息を切らしているのはセネカと戦闘を繰り広げたせいか、あるいは自分を探しにあちこち走り回ってくれたからだと思っていたが、もしかして他に理由があるのだろうか。彼女の焦りようは、少し尋常でないように思えた。
気になるけれど、切羽詰まった理由は抜け出してから聞いても遅くないだろう。ラズに言われた通り、アリソンは壁に嵌まって、おそらくは反対側の部屋かどこかにあるのであろう両足がいつでも地面を蹴れるよう、力を入れる。
「さあ、解除するわよ。1、2、3──今よ!」
「わわっ⋯⋯!」
ラズの号令と同時に走り出したアリソンは、壁からすっと抜け出して、そのまま地面に倒れ込む。慌てて這って壁から離れ振り向くと、そこにはもう何の隙間もない壁が立ちはだかっている。
もし少しでも遅かったら、今度は両足があそこに引っかかっていたかもしれない。ゾッとしない想像に、アリソンは肩をすくめる。
「全く、危ないところだったわね。立てる?」
「は、はい。ありがとうございます、ラズさん」
差し出された手に掴まり、立ち上がる。
と、ふいにどこかでパリンとガラスの割れる音と、誰かの怒号が聞こえてきた。
「今のは⋯⋯」
「セネカよ。大方、あたし達を見つけられなくて物に当たり散らしてるんじゃないかしら」
「なら、反撃するなら今がチャンスですね」
アリソンの言葉に、何故かラズは複雑そうな顔をして答えない。
どうしたのかと顔を覗き込むと、彼女は視線を逸らした後、意を決したように口を開く。
「あなたは、ここから出ていくべきだわ」
「⋯⋯えっ? えっと、それはもちろん、出ていきますよ? ラズさんと一緒に戻るために、ここまで来たんですから」
「そうじゃなくて⋯⋯あなたは先に、この世界から出ていくべきだと思う」
ラズの視線は、相変わらずアリソンから逸れたまま、何もない床を見つめている。その目を合わせて欲しくて、アリソンは彼女の両手を掴む。
「どういう意味ですか? 何か考えがあるんですか?」
「⋯⋯あなたが現実に帰れば、アイツを殺せるんじゃないかと思って。アイツも魂を全部飛ばしてきてる、ってことは、いま現実には意識のないアイツがいるってことでしょ?」
「あっ! 確かに⋯⋯そういうことですよね。でも、どうやって帰れば⋯⋯」
「さっきまではわからなかったけど、今なら多分、アンタひとりぐらいなら帰せると思う。ここはあたしの精神世界なんだし、あたしが強くアンタに出ていってほしいと願って、アンタも出ていこうと強く思えば、なんとかなりそうな気がするのよね」
じゃあそうしましょう、と言いかけてやめる。
──何かが腑に落ちない。
問題はないはずだ。アリソンが一足先に現実に帰り、セネカを殺す。現実で意識のない、無防備な彼を殺す方がここで戦うよりも遥かに楽なはず。
ならばどうして、ラズは目を合わせてくれないのか。
「そうと決まれば──」
「待ってください。ラズさん、待って」
「⋯⋯何よ。早くしないといつセネカがこっちに気づくか、」
「現実の身体が死んだら、ここにいる魂はどうなるんですか」
その問いに、掴んだままのラズの手が固くなる。
やはり何か隠しているのだと確信したアリソンは、「そうなんですね?」と確かめるように言う。
「もしかして、現実で身体を殺しても、魂はそのままなんじゃないですか? 身体が死んでもセネカの魂はこのままラズさんの中にいるし、ラズさんもここから出られないままなんじゃないですか?」
「⋯⋯ただの推測でしょ。どうなるかなんて、やってみなきゃ分からない」
「でも、そうなる可能性があるんでしょう? 私だけ助かるなんて嫌ですよ、私が何のためにここに来たと思ってるんですか!」
「だからよ!」
声を張り上げたアリソンに負けじと叫んだラズに、一瞬怯む。
その隙を逃さず、ラズは畳み掛けるように言う。
「元はと言えば、あたしが疑いもせず不用意にあの柘榴を食べたせいで、アンタもこんなところまで来る羽目になったんじゃない。なら、あたしがケジメをつけるべきだわ」
蒼い瞳が決意を示すように、真っ直ぐに向けられる。
自分が責任を取るべきだとラズは心からそう思っているのだろう。でもそうじゃない。そんなことを自分は望んでいないのに。嫌だ嫌だと頭を振るアリソンを、彼女は子供を相手にしているような目をする。
「違う、それは違います。私は、こんなところに来る羽目になったなんて思ってない。迷惑をかけられたなんて、全然思ってない。だって、ここに来るのは私が選んだことなんです。私がラズさんを失いたくなくて、勝手にここまで来たんですよ!」
「アンタがどう思ってるかは関係ないのよ。あたしがケジメを果たすべきだと思ってるの。それにこれが一番、確実にセネカを殺せる」
「でもっ! そうなったら、ラズさんの魂もここで永遠に閉じ込められちゃうじゃないですか⋯⋯!」
「そうね、あの魔術師と心中するのは嫌だけど仕方ないわ。とにかくあなたは現実に帰っ──」
「帰るわけないでしょうっ!?」
ガツン、と鈍い音がしてラズの顔が揺れる。
勢い余って頭突きしたのだとアリソンが自分の行動に気が付いた頃には、据わった目をしたラズに前髪をかき上げられ、額にグリグリと頭を押し付けられていた。痛い。
「何すんのよ! 痛いじゃない!」
「私だって痛かったですっ! 今も痛いですっ!」
「痛くしてるんだから当たり前でしょ! そっちが先に手を出したんだから我慢しなさいよ!」
「うぅっ⋯⋯言い返せないけど痛いです〜!」
そんなくだらないやり取りは、数分後にラズが動きを止めたことで終わった。痛みが止まったことへの安堵よりも、動かなくなった彼女への心配が勝ったアリソンは、「ラズさん?」と首を傾げる。
ふるふると小さく肩を震わせるラズに、そんなに怒ってるのか、と冷や汗が流れるも、彼女の口から出たのは怒りの言葉ではなく。
「ふっ⋯⋯あっはははは! 戦いの最中だって言うのに、あたし達ってば何やってんのよ⋯⋯」
涙が出そう、と言って腹を抱えるラズに、目を丸くした後、アリソンも「そうですね」と同意を返す。
「ああ、もう。こんなに笑ったのいつぶりかしら⋯⋯」
「だ、大丈夫ですか? 立てますか?」
「⋯⋯アンタは平気なの?」
「はい?」
「⋯⋯いえ、いいわ。忘れてちょうだい」
前屈みになったラズに手を貸そうとすると、必要ないと手で制される。立ち直った彼女と目が合った瞬間、空気が切り替わるのを感じた。
「こんなことしてる場合じゃないし、お互い譲歩しましょ」
「譲歩、ですか」
「ええ。あなたを無理に帰すのはやめるわ。その代わり、本当にどうしようもなくなったら⋯⋯それ以外勝ち目がないような状況になったら、あなたは現実に帰るって約束して」
「⋯⋯わかりました」
ラズの提案に、アリソンは素直に頷いた。
あっさりと条件を呑んだアリソンにラズは少し意外そうにするが、アリソンとて考えなしに条件を呑んだわけではない。
要はそんな状況にならなければいい話だし、そんな状況になった時はまだ戦えるとごねよう──そんなやや姑息な考えを内心に秘めて、アリソンは頷いていたのである。
たとえ相手がラズ本人であっても、ラズの安否を天秤にかけさせたくはない。もう目の前で大事な人を失いたくないという、決意というよりは執着のような、あるいは妄執じみたような思いがアリソンの中にあった。
「さて、逃げ回ってても勝てないわけだし、そろそろ攻めに入るべきでしょうけど⋯⋯一緒に戦おうって言うからには、何か策があるんでしょうね?」
「うっ⋯⋯」
わざと意地悪な言い方をしたラズに、アリソンはぎくりとする。
──策もないならやっぱり帰ってもらおうかしら、なんて言われたらどうしよう。
ラズなら言うかもしれない。元々アリソンが来ることなど露ほども期待せず、孤軍奮闘するようなひとだ。にじり寄ってくる想像上のラズに、アリソンはさして早くもない頭を回転させる。
「ま、でしょうね。とりあえず、」
「あのっ! 策ってほどじゃないですけど、思ったことはちょっとあります!」
「⋯⋯思ったこと?」
条件を反故して帰される前に何か言わないと──食い気味に口を開いたアリソンに、ラズが困惑気味にオウム返しにする。
彼女の困惑に気づいていないアリソンは、力強く頷く。無策ではないから帰さないでと、切実な思いを込めて。
「あの、さっきラズさん、クローゼットを開けましたよね?」
「? そうね?」
「え、えっと、私、さっきは触れなかったんです。ラズさんの記憶を見てた時のことなんですけど、なんでもすり抜けちゃうから、たとえば椅子を持ち上げてレインナートを殴るとかそういうこともできなくて」
「⋯⋯ちょっと待って、あなた、そんなことしようとしてたの?」
「だ、だってあの男、ラズさんに馴れ馴れしくするから胸がむかむかして⋯⋯。は、話を戻しますけど、ラズさんがさっき言ったみたいに、ここはさっきまで私がラズさんの記憶を見てた時と違って、ただ記憶の中にある空間を再現しただけだからなのかは分からないんですけど、私たちは今触れることができるんですよね」
だったら、と言いながらアリソンは手身近な椅子に手を伸ばす。背もたれに触れれば、確かな木の感触が伝わる。持ち上げようと思えば持ち上がるはずだし、その辺の窓に向けて放り投げれば、窓も割れるだろう。遠くの方で癇癪を起こしたセネカが、何かを割ったように。
そして、こうして触れることができるというのであれば。
「だったら、武器も調達できる⋯⋯ってことですよね?」
アリソンの言葉に、ラズの唇に笑みが浮かんだ。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
明日で投稿を始めて1年になります。まだまだ未熟ですが、ぜひ引き続きお付き合い頂けると嬉しいです。
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