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1 大切な君の夢を忘れないでね。

 お化粧をする日


 登場人物


 堀川誉 堀川家の長男 かっこよくて真面目で優しい人 十八歳


 美山白湯 美山家の令嬢 美しいおてんばなお嬢様 十六歳


 プロローグ


 大切な君の夢を忘れないでね。


 本編


 君らしく、私らしく。


 美山白湯は将来、華族である美山家の令嬢としてどこに出しても恥ずかしくないように三人の姉たちと一緒にとても厳しく、いろいろな上流階級の作法やしきたりをお勉強しながら、幸せな子供時代をなに不自由なく育った。

 でも、なぜか白湯は白湯の三人の姉たちと同じように、清楚で可憐で慎ましい性格をした令嬢にではなくて、(その容姿は姉たちに負けないくらいに、とても美しいものだったけど)一人だけ、野原を駆け回る子馬のように暴れん坊な、やんちゃでおてんばな性格をした女の子として育ってしまった。

 そんな白湯を見て美山家の家長である白湯のお父様は頭を抱えて悩みこんでしまった。でも、とても美しい白湯のお母様はそんな白湯のことを見ても悩むことなく、「自分らしく、あなたらしく生きなさい」と言って笑って白湯のことを応援してくれた。(白湯は本当に嬉しかった)

 そんな白湯が十六歳になったとき、白湯にお見合いの話がやってきた。

 それは別に変なことではない。

 白湯の三人の姉たちも同じように歳のころ、十六歳から十八歳くらいまでの間に、ほかの華族である家のお坊ちゃんとそれぞれにお見合いをしていた。(三人の姉たちはそれぞれ、そのお見合いをした華族のお坊ちゃんとそれからすぐに結婚をして、美山の家を出て行った)

 だけど、白湯は十六歳で結婚をする気なんてまるでなかった。

 白湯にはいろいろとやりたいことや叶えたい夢がたくさん(それこそ山のように)あったし、結婚なんてしている場合ではないと思った。(自由がなくなってしまうと、白湯は思っていた)

 だから白湯は美しい赤色の牡丹の模様の着物をきて、小豆色の帯を巻いて、その唇に真っ赤な紅を初めて塗って、出席したお見合いの席にも、当然、「申し訳ありませんが、今回のお話はなかったことにしてください」、とそういうつもりで最初から望んでいた。それに、白湯のお父様もお母様もたぶん、この子の(つまり私だ)お見合いは成功しないだろうと思っていたようだった。(まあ、自分でもそう思うし別にいいけど)

 でも、人生というのは本当にわからないものだった。

 そんな不真面目な気持ちで出席した梅の花が咲いている静かで古い歴史のある旅館で開かれたお見合いの席で出会った堀川家のお坊ちゃんである白湯のお見合いの相手、堀川誉のことを見て、白湯は、『本当に、自分でも驚くくらいに、あっという間に(本当に落とし穴にでも落ちるようにして)誉に、すとん、と一目惚れの恋をした』。

「初めまして。堀川誉と言います」

 と誉が優しい顔で笑いながら白湯を見て自己紹介をしている間、白湯はもうなにも考えることができなくなった。

 顔を真っ赤にした白湯は、ぼーっとしながら、じっと誉のことを見つめて、それから自分の自己紹介をすることを「白湯。自分の自己紹介をして」と隣に座っているお母様に言われるまで、完全に忘れてしまっていた。

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