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短編とかその他

チートを得た少年がチートを失う話

作者: リィズ・ブランディシュカ



 神様がそういった。


『あなたを転生させてあげましょう』


 一度死んでしまったけれど神様にチートをもらったから、ラッキーだった。

 次の俺の人生は、きっと良いものになる。


 転生を果たした俺は、実際その通りだった。


 子供の頃から、多くの人に注目されて、様々な人に一目おかれてきた。


(きっと俺が願うなら神にだってなれるだろう)


 転生するにあたって神様から与えられたこの即死のチート能力があれば、何だってできる。

 どんな奴だって俺の敵じゃない。それは、王様や勇者ですらだ。


 俺は、小さな頃から魔力の特訓をしてきたから、強大な魔力を有してるし、剣の練習も欠かさず行ってきたから、国一番の剣士になった。


 この世界の魔法は、どれだけ使用したかがカギになる。

 使えば使うほど熟練度が上がって、威力も上昇するのだ。


 だから、赤ちゃんの頃から確かな意思があった俺は、大魔導士にまで上り詰めるまでになった。


 剣技も同じく。

 同じ技を何度使用したかによって、熟練度が上がって、威力も上昇していく。


 もはや、この世界で俺に逆らえる人間はいないだろう。


 俺は、幼馴染や友人を見つめる。


 王座に座った俺を、彼女達はじっと見つめていた。


 そのまなざしには、崇拝の感情がやどっていた。


 彼女達は、俺が助けて、手を貸してきた者達だ。


 お金が無くて奴隷にされそうだった所を、モンスターに襲われて死にそうだったところを救ってきた。


 彼女達はそんな力強い俺に惹かれて、それからずっとついてきている。


 これからもこのチートで、彼女達の思いに応えなければ。


 そう思っていた俺は、突然の違和感を感じた。


 今まで体の中にあった強大なチートの力が、徐々に消えていくところだったのだ。


 一体何事か。


 うろたえる俺は、見た。


 王座の間に入ってくるくせ者の姿を。


 こんな時に限って。


 だが

 焦る必要はない。


 頼もしい仲間達がいるのだから。


 彼女達は、口々に「俺のために」と叫びながらくせ者へ立ち向かっていく。


 しかし。


 くせ者は強かった。


 立ちふさがった彼女達を次々と倒して俺の所へやってくる。


 俺は、王座の間から逃げ出した。


 背後から、倒れた誰かがすがる声が聞こえてきたが。耳をふさいで聞かなかった事にした。


 おいつめられた俺は、「なぜおまえが、その力を持っている!」と言った。


 俺を見据えるくせ者は、俺が持っていた「即死チート」の力を持っていた。


 内包している魔力の質が俺とまったく同じだった。


 薄く笑う、そいつは言った。


「利用された事も気が付かなかっただなんて馬鹿だな」と。


 残酷な言葉が続く。


「チートにも熟練度ってのがあってな」


 嘘だ。


「どうでも良い転生者に熟練度を上げさせて、それから本命の転生者に渡すってもくろみなのさ」


 神様は、そんなこと言ってなかった。

 チートにもそんな仕組みがあったなんて。

 聞いてない。


「つつましく生きていれば、もしくはチートなんかに頼らず努力していれば。これからも普通に生きていけただろうにな」


 やめてくれ、力を奪わないでくれ。


 即死チートがなくなってしまったら、敵が多い俺はどうなるんだ。


 魔法も剣の腕も、ただ練習してきただけなんだよ。


 見栄えしかよくないんだよ。


 だって、即死があるじゃん。


 チートが使えるじゃん。


 努力して頑張ったって、何の役に立たないじゃん。


 だから、俺自身の力だけで、命のやりとりをする技量なんて、ないんだよ。


「文句は過去の自分に言うんだな」


 体の中の力が消えていく。


「あああっ」


 俺は、力を完全に奪われて膝をついた。


 そこに、これまでにふみじにってきた連中が押し寄せる。


 死が押し寄せてきた。


 俺には当然、なすすべなどなかった。



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