訓練3日目
エヴァさんの訓練を受け始めてから3日目、俺は大木の前に立っていた。
右手にフェザーソード、左手にアレグレンズナイフを逆手に持ち、両手を前に出し、その両腕と、刀身を交差させた。これは短剣二刀流の構えである。
構えの姿勢を取りながら、俺は呼吸を整え、意識を集中させた。
集中力が最大限まで高まった所で、俺は大木切り裂いた。
2つの刀痕が着いた後、大木は徐々に傾いていき、倒れた。
その時に、一瞬地面が揺れ、他の木々に止まっていた鳥達がその衝撃に驚いたかの様に、一斉に飛び去った。
俺は静かに2つの短剣を納刀した。
「流石だな! 色男! まさか3日でここまで『二刀流』を物にするとはな! 私でも今のお前のレベルまで行くのに4日はかかったと言うのに!」
エヴァさんは俺の成長を大いに褒めてくれた。
「恐縮です......。」
「褒美にヘッドロックをかけてやろう!」
そう言うとエヴァさんは跳び、俺の頭を自分の脇に抱えて、ヘッドロックをかけ始めた。
「えっ......! ちょっ......ちょっと待って下さい!」
エヴァさんの力はオークと同じくらいかそれ以上なので、俺はマジに命の危険性を感じた。
「はっはっはっ〜! おらおら〜!」
本格的に締め上がる前に必死に抜け出そうとしたが、流石にエヴァさんは力加減を知っていたので、軽くじゃれ合う程度で済んだ。
しかしながら、エヴァさんは非常にワイルドである為、異性の壁を感じさせないほど、思いっきり俺をヘッドロックをした。その時に、俺の顔はエヴァさんの豊満な胸に思いっきり突っ込んでいた。もはや『ぱふぱふ』であった。
エヴァさんのご褒美は罰に思えたが、実は紛れもなく、ご褒美であった。
「そろそろ疲れただろう? 休憩にするか!」
「はい......!」
程よく訓練を続けた後、エヴァさんから休憩の許可が出た。
「そう言えばエヴァさんて凄く力が強いですよね......。筋トレしているんですか?」
「いや、全くやっていない!」
エヴァは即答した。
「えっ? それじゃあ何故そんなに力が強いのですか......?」
「ある医者の話によると、私の体はどうやら特異体質らしくて、筋量が常人の2倍あるらしい......。」
「......筋量が常人の2倍ともなると、見た目に変化が出そうですが、エヴァさんは普通の女性らしい体つきをしていますよね......。」
「そこも何か説明が有ったんだが......まあ、詳しい事はよく聞いていない!」
俺は一瞬、これセクハラになる発言をしたなと思ったが、エヴァさんのワイルドさによって気付かれずに済んだ。
しばらく休憩をした後、再び俺は訓練を始めた。
「またしばらく大木を切る練習をしますか?」
「いや、ここまで出来れば上出来だ! もう実戦訓練に入ろう!」
「実戦訓練と言いますと......?」
「実際に魔物を狩りに行く! 依頼を受けてな!」
「ええっ!! 来週、合同依頼が控えてますけど大丈夫ですかね......?」
「大丈夫大丈夫!! さあ、行くぞ!」
エヴァさんは俺の腕をグイグイと引っ張り、ロージアン冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドに着くと、すぐにエヴァさんが俺に訊ねた。
「色男、お前のランクは今何処だ?」
「Bランクです。」
「了解した! それじゃ、移動込みで2日で終わるBランクの依頼を受けて来る! ちょっと待ってろ!」
エヴァさんは受付嬢と少し話をし、すぐに依頼を受けて戻ってきた。
「よし、依頼を受けて来た! ダッシュで馬車に乗り込むぞ!」
エヴァさんは何故かダッシュで馬車乗り場に向かった。
「ちょっ......ちょっと待ってください......!」
置いて行かれる前に俺もダッシュで馬車乗り込んだ。
目的地のバスキ村に着くと、俺とエヴァさんは村長に挨拶しに行った。
「白いスライムのような魔物です! 20体ほど湧き始めてどうしようもありません! 是非ともお願いします!」
「わかりました。」
「了解した!」
挨拶を終えた後、俺達は外に出た。
「それじゃ行くぞ! 色男! どっちが多く狩れるか勝負だ!」
「えっ......?」
エヴァさんはいきなりクラウチングスタートの構えをした。
「位置について......よーい......ドン!」
エヴァさんは勢い良く走り出した。
「はっはっはっ! スタートダッシュ......良好!」
恐らく、エヴァさんは本気で魔物を殲滅しにかかるので、ノロノロやっていたら多分全部狩られてしまう......。
そうなったら訓練も何も無いので、俺も急いで、準備をした。
俺が『完全逃走』を発動させると、遠くから何かを地面に叩きつけるような爆音が聞こえた。
もうそんな所にいるのか......!? エヴァさん......。
まあ、そんなこんなでエヴァさんと魔物退治勝負する事になった。