二刀流訓練
「おっ......そちらの金髪の美女は私の事を知っているようだな......。」
「知ってるも何も、貴女はAランクNo.3の冒険者ではありませんか......!」
「まあ、そういう事だな......!」
エヴァさんは決め顔で答えた。
「エヴァさんはロージアン王国出身ではないですよね......? 何故この国に......?」
興味本位で俺は訊いた。
「特に目的は無いんだが、強いて言うなら観光だな!」
エヴァさんは歯切れよくさっぱりとした口調でそう答えた。
驚くべき事に全世界の冒険者のトップ5に入る冒険者が偶々、この国に観光に来ていたようだ。
「色男......お前は短剣使いなのか?」
「はい、そうですね。」
「二刀流にしないのか? 短剣と言えば二刀流だろう?」
「そうしたいのは山々なんですが、まだ『二刀流』のスキルを習得していないんですよ......。」
「そうか......。」
少し間が開いた後、エヴァは言った。
「色男......お前には才能がある! もっと強くなるべきだ! 私が『二刀流』について教えてやろう......!」
「いきなりですか......!」
エヴァさんが突拍子もない事を言うので、思わずツッコんでしまった。
「そうだっ! いきなりだ! あっ......もしかして依頼が入ってて忙しいか?」
「いえ、近々行われる合同依頼に参加するつもりなので、2週間は自由です。」
「それじゃ、尚更都合がいいな! 私もその依頼に参加するしな!」
エヴァは続けた。
「私にかかれば『二刀流』は、1週間もあれば習得できる! 今は私は大剣を使っているが、もともとは二刀流で戦っていたからな! 教えるのは自信があるぞ!」
エヴァは更に続けた。
「ただ1ヶ月でやるべき事を無理矢理1週間にしているから、滅茶苦茶厳しくするがな! 行こう!」
エヴァは俺の腕をグイグイ引っ張った。
何処にそんな力が有るのかって思うくらい不思議とエヴァさんは力が強かった。
「ちょっ......ちょっと待ってください......。」
結構必死に俺は踏み止まった。
「皆と話をさせて下さい......。個人で勝手に決める訳にも行きませんから......。」
「おっと......! そうだったな! 悪いな、私は思い立ったらすぐ体が動いちまう性分なんだ! 許してくれ!」
「ええ、別に気にしてないですよ。」
俺は皆に相談した。
「という訳だが......別に俺、留守にしてもいいよな? 適当に1週間、暇を潰しててくれないか?」
「私は構いませんよ♪ 個人で試せる新薬の研究はまだまだ残っているので、幾らでも♪」
コーデリアさんは自信満々にそう言った。
「私もコーデリアと同じだ。幾らでもって訳じゃないが、それなりにやるべき事とか、趣味がある。」
エレノアも一人で過ごせそうだった。
「1週間も......。」
エリザリアはぽつりと小声で呟いた。
「エリザリアは大丈夫そうか?」
「えっと......はい! 大丈夫です......! 1週間、ジャレオ様とお会い出来ないのは、寂しいですけれど......。」
「そうか......ごめんな。まあ、たった1週間だ。意外と短いものさ。」
「......はい!」
エリザリアも同意してくれた。
「オッケーです。俺と皆の都合を合わせて来ました。いつでも行けます。」
「了解! それじゃ早速私の家に行こうか! ......あっ待った!」
「どうしました?」
「美女3人に言っておきたい事がある......。」
エヴァは真剣な表情で3人を見つめ始めた。
「3人とも......。」
「......はい。」
コーデリアさんが緊張しながらそう答えた。
「......いい乳をしているな! はっはっはっ!」
そう言ってエヴァは腰に手を当て、胸を張り、豪快に笑いだした。
こんなことを言っているエヴァさんも実は、結構、胸が大きかった。
「よし! これで心残りは全部なくなった! 行くぞ!」
「は......はい......。」
エヴァさんって本当ワイルドだよな......。
それから俺はエヴァさんの家で特訓をし始めた。
「色男! 大事なのは『流れ』だ! 良い流れが作れていなければ、片手の威力が落ちる。一糸乱れなく、流れるように連撃を繰り出せ!」
「わかりました......!」
特訓一日目、エヴァさんからほんの軽く説明を受けた後、自分から「正直、私から話すべき事は特にない!とにかく実戦だっ!」と言って、実戦訓練が始まった。
「うむ、言葉で言ってもあまり伝わらないだろう......! 私が見本を見せる!」
エヴァさんは所持品の短剣を2つ持ち、勢いに任せて、周囲にあった1本の木を引き裂いた。
「うおおおおりゃあああああああ!!!」
途中でエヴァさんは、何故か短剣を大剣と持ち替えて、木を粉砕した。
「どうだ! わかったか!」
「......ちょっと......わからないです......。」
大剣を叩きつけられた木は、一瞬して木片と化していた。