蒼炎の剣姫
ドミニエルの話を聞き終わった後、俺達は冒険者ギルドを出た。
「話によると合同依頼の作戦開始は2週間後らしいな......。」
「パーティーの構成員によっては、一体の大型魔物と戦うのに1週間近く準備する所もあるからな......。その上、Aランクの魔物と対峙する可能性もあるからこのくらい準備期間が妥当だろうな......。」
「なるほどな......。ただ俺達ってそんなに準備かからないよな......?」
「そうですね......。私はジャレオ様より少し遅いぐらいの早さで準備が終わるのであまり時間はかかりませんね......。」
「ああ......念入りに盾の手入れをしても3日あれば事足りるしな.....。」
「今の所、私が精製できる、戦闘に使いそうな薬なら1週間もあれば用意できますね......。」
「そうだよな......皆そんなに時間かからないよな......。さて、どうするか......。」
「あっ......旦那! お久し振りで御座いやすね!」
皆と話していると、遠くから聞き覚えのある商人の声が聞こえた。
「イーディーさん! お久しぶりです!」
「ジャレオ、お知り合いか?」
「ああ、このアレグレンズナイフはイーディーさんから買った物だ。」
俺は空を見つめ、こうも言った。
「......因みに『強制裸エプロン』もイーディーさんから買ったぞ......。」
「......そうか。」
エレノアは言葉には出さなかったが、顔は「......変態。」と言いたげだった。
「おっ......? へっへっへっ......旦那......暫くお会いしていない内にまた別嬪さんがお二人もお仲間に......。」
「まあ、成り行きで......。」
「へっへっへっ......流石は旦那でやんすねぇ......。」
イーディーさんは続けた。
「今日は旦那の望んでいる武器......短剣を仕入れましたぜ......。」
「そうですか! いや~それはありがたい!」
「へっへっへっ......喜んでいただけて何よりでやんす......。」
早速イーディーさんは売り物が入った馬車からある短剣を取り出した。
「『フェザーソード』......アレグレンズナイフと同じく、所有者の素早さが高ければ高いほど威力が上がる武器でやんす......。短剣には何と、あの『伝説の魔女 ドロシー』の弟子、『セリーヌ』の魔法が組み込まれているとも言われているでやんす......。」
「値段は少々張るでやんすが、レアリティはアレグレンズナイフより高いでやんす、使い勝手は旦那なら必ず満足される事でしょう......。」
俺は試しにフェザーソードを持ち、『完全逃走』を発動させ、ステータスを確認してみた。
「おお......! 確かにアレグレンズナイフより攻撃力が上がるな......。よし、気に入った。値段はいくらになる?」
「75000ゴールドになりやす......。」
「よし買おう。」
「へっへっへっ.....ありがとうございやす......。」
俺は『フェザーソード』を手に入れた。
「きゃーーーー!!」
「ま、魔物だーーー!!!」
突如、民衆の叫び声が聞こえた。
「魔物か......!」
俺は早速フェザーソードを構えた。
「俺は一足先に行ってくる。皆は後から付いて来てくれ......!」
「わかりました......!」
「ああ.....!」
「お気をつけて......!」
皆の返事が聞けたところで俺は早速、声のする方向へ物凄い勢いで走った。
「あっ!イーディーさんありがとう〜!」
「い......いえいえ......。」
俺は忘れぬうちにイーディーさんに感謝の言葉を言っておいた。
「へっ! 楽勝楽勝!!」
街角を曲がると、既に魔物と1人の女性冒険者が戦っていた。
「よーし! これで後1体!」
交戦中の冒険者は大剣を振るい、圧倒的な強さで魔物を倒しているので、別に加勢は必要なかったが、一応俺も戦いに加わった。
魔物との距離を詰め、背後に回った俺はフェザーソードで魔物を斬った。
魔物は瞬く間に消滅した。
「おおー!! 流石冒険者様だー!」
「素敵ーー!!」
いつも通り俺は民衆の歓声を浴びた。
「よう! いい戦いっぷりだったぜ......!」
交戦中だった女性冒険者が俺に話し掛けた。
彼女の口調、目つきはかなりワイルドだが、容姿、服装はその真逆で、まるで、何処かの国のお姫様のようであった。
「ジャレオ様〜! 大丈夫ですか〜!」
エリザリア、エレノア、コーデリアさんが走ってこちらに向かって来た。
「......あの3人は、お前の友達か?」
「はい、一緒に冒険している仲間です。」
「ええ!? あの3人皆冒険者なのか!?」
「ええ......そうですが......。」
「マジか......! てっきり人気トリオアイドルグループかと思ったぜ......。お前、色男だなぁ〜。」
「それはそれは......恐縮です......。」
一応謙虚に返答しておこう。
そんな問答をしている内に3人が来た。
「魔物はどこへ......?」
エリザリアが訊ねた。
「魔物なら私とこの色男が倒しちまったぜ......!」
「ジャレオ様と......えっと......。」
「私はエヴァ。『蒼炎の剣姫』って言えばわかるか?」
「なに!? 『蒼炎の剣姫』だと!?」
エレノアは口を抑え、驚いた。