最高の4人 (一章 最終話)
「あっ、すまない......言い忘れていた......。」
ドミニエルは続けた。
「この依頼はパーティーを登録する必要がある......。パーティー登録をすると、この依頼だけでなく、他の依頼を受ける時も、およそ1年半程はパーティーメンバーを変更する事ができない......。」
「なるほど......つまり今後、エレノアが俺達と一緒に冒険するかどうか、決める必要がある......という事ですね......。」
「そういう事だ......。ワシのやった事はあくまで、一時的な呼び出しだ......。今後ジャレオ達と冒険するかどうかは本人が決める事じゃ......。」
「......どうする? エレノア?」
しばらく間を開けた後、エレノアは言った。
「......私は今まで......こんなにも心が通じ合えた仲間に出会った事がなかった......。以心伝心とはこの事だろうな......。エリザリア、コーデリア......そしてジャレオ......。3人と一緒なら、どんな難敵とも立ち向かえる! だから、私も仲間に入れてくれ......!」
「......決まりましたドミニエルさん、エレノアの決意は固いです......。仲間だからこそ、わかります......!」
「うむ、承知した......。」
エレノアが俺達の仲間になった。
「さて、皆......どうする? この依頼受けるか?」
「私はジャレオ様にお任せします!」
「このパーティーのリーダーはジャレオだからな。好きに決めるといい。」
「私も皆さんに同意です♪」
三人とも俺に意見を任せるようだ。
「わかった。それじゃ、ありがたく決めさせてもらおう。」
俺は続けた。
「ドミニエルさん、この依頼......受けます!」
「うむ! 承知した!」
ドミ二エルは景気よく書類に判子を押した。
「魔王様、報告に参りました。」
「ど〜ぞ~。」
巨大な城の大広間に魔王と呼ばれる者が玉座に座っていた。
魔王は、頭に角がある事以外は大人の男の人間と変わらない容姿をしていた。等身は高く、白く長い美しい髪をしていて、美形であった。
魔王の前には何かを報告しに来た部下と思われる悪魔が、膝と右拳を敷かれている赤いカーベットに付き、座っていた。
「『紅の賢者』率いる、上位Aランクパーティーがアースゴーレムを討伐しました!」
「へえ〜〜〜〜〜〜。」
「......他にもAランクのトップクラス5人が各地で上級大型魔物を次々と討伐しているとの報告も受けました。」
「ふ〜〜〜〜〜ん。」
「......あまりご興味がございませんか......?」
「まあな......完全に復活すれば、俺の力は今の3倍は強くなる予定だからな......。今の状態の俺なら人間の中でも倒せる奴がいるかもしれないが、復活以降は不可能だろう。」
「その為、お前達は俺の力が元に戻るまでの間、時間稼ぎをしていればいい......。それだけで勝てるからな。」
「だからやる事が殆どない俺は、暇なんだ......復活前もその後も......。」
「なるほど......。」
部下は魔王の言う事に対して只々相槌を打った。
「ただ......。」
魔王は玉座を座り直した。
「『白い閃光』と『完全逃走』はちょっと気をつけた方がいいな......。」
「『白い閃光』と『完全逃走』ですか......。」
「そうだ......。」
「『白い閃光』はAランクのNo.1、言わば冒険者の中で最高戦力ですので、察しは付くのですが、『完全逃走』は新人冒険者ですよね......? Aランク上位陣を凌駕する、若しくは『白い閃光』と肩を並べる程の潜在能力を持っているのですか?」
「ああ......間違いない。まず、奴には『白い閃光』と同じ様に『勇者』の資質がある。つまりは俺の大きな欠点である『光属性』の攻撃を出来ると言う事だ......。」
「魔法で攻めるか、剣技で攻めるか、どちらで来るかはまだ断定は出来ないが、どちらにしろ『光属性』を扱える者は警戒すべきだ......。」
「そして警戒すべきもう一つの点は戦法にある......。」
「『完全逃走』の戦闘スタイルは『白い閃光』とよく似ている......。極めて高い素早さで相手を攻撃を躱し、凄まじい攻撃力で相手を叩き潰し、速攻で決着を着けるタイプだ......。戦うとなると非常にやりにくい。」
「まあでも、その2人と戦闘になる前に俺が完全な力を取り戻せばいい話何だけどな。」
魔王は自分の座っている玉座に改めて深く腰掛けた。
「まあ......そんなところだ......。大型魔物が倒されているとは言え、まだまだ強力な奴は大勢いる......。そう簡単には俺の配下は倒しきれないだろう......。お前もそう気張らずに気楽にやるといい......。」
「承知致しました......。」
悪魔は一瞬にして姿を消した。