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ステルスウルフ

「うわあああああ!!」


「きゃあああああ!!」


突然のステルスウルフの奇襲に村人達は逃げ惑っていた。


「くっ......ぬぉっ......!」


兵士はステルスウルフの噛み付きを剣で、必死に防御していたが、力負けしているのは明らかだった。


そしてステルスウルフは剣ごと兵士を持ち上げ、村の一軒家に向けて勢い良く、投げ飛ばした。


「ぐああっ......!!」


木製の家の外壁に激突した兵士は悲痛の声を上げ、気を失った。


投げ飛ばしの威力は、外壁に大きな穴を開けている事から、十分に強力である事が容易に察せられた。


冒険者独特の雰囲気を察したのか兵士を投げ飛ばした後、ステルスウルフは遠くから俺達を凝視した。


「不意討ちで一瞬で決めようかと思ったが......そうはさせないか......。」


俺が『完全逃走』を発動する前にロックオンされたようだな......。


ステルスウルフの体毛が風でなびくたひ、体の所々が透明になったりしている。また、左後ろ足はほぼ常時背景と同化していた。


「エレノア! エリザリアとコーデリアさんを守ってくれ! 村人の事は気にしないでいい。被害が及ぶ前に討伐する!」


「わかった!」


「ジャレオさん! これを使って下さい......!」


コーデリアさんは懐からある薬を取り出し、俺に渡した。


「これは......?」


「『怪力薬』です......! これを飲めば攻撃力が1.5倍になります......!」


「おお! それは助かります! ありがとうございます!」


「いえ......。お礼には及びません......。」


恥ずかしさで顔が真っ赤になっているコーデリアさんから怪力薬を受け取った。


ああ......ごめんね、コーデリアさん......エリザリアとエレノアの目の前で、堂々と、感謝の気持ちを伝えちゃった......。これじゃあ完全に『いい人』だよね......。今度から小さく言うよ......。


まあ、気を取り直してステルスウルフ討伐に取り掛かろう。


俺は怪力薬を飲んだ後、『完全逃走』を発動させた。


「さて......。」


俺もステルスウルフに向けてアレグレンズナイフを構えた。


ステルスウルフは俺から見て反時計回りに数歩歩くと、姿が次第に消えていった。


すると突然、俺はとんでもない風圧を感じた。


「......ッ!」


辛うじて、俺は直撃を避けたが、ステルスウルフのするどい爪が、腹の辺りを切り裂いた。


「ジャレオ様!!」


「大丈夫......はぁ......はぁ......ギリギリセーフだ......。」


「来い! ジャレオ! エリザリアに回復してもらえ! その間、私が皆を守る!」


「ああ......。すまないな......エレノア。」


エリザリアとコーデリアさんと同様に、俺はエレノアの盾の後ろに身を潜めた。


「すぐに『HP』を回復します!」


エリザリアは早速俺に回復魔法をかけた。


生物は体内に魔力を2つ持っている。『MP』と呼ばれる魔法、特技を使った時に消費する魔力と、『HP』と呼ばれる体内から皮膚の表面へ漏れ出ている魔力だ。生物は攻撃を受けると、HPを使い、自動的にダメージを軽減する。


職業関係なしに冒険者は学校に入ると、まずHPの総量を増やす、またはコントロールする訓練を行う。一般人よりも打たれ強いのはその為だ。


回復魔法はMPをHPに変換し、人に分け与えるという原理になっている。


HPが0になると、もろに魔物の攻撃を受け、例えスライムの攻撃だろうと大ダメージを受ける。ステルスウルフの体当たりを受けたらなんて想像したくない。


「ふぅ......困ったな......。さっきの攻撃は辛うじて避けれたが、次の攻撃はそう上手く行かないかもしれない......。奴の姿が見えたら反撃出来るんだが......。」


「うわああああああ!! もう何が何だかわからないいいい!!」


村人はアリアの実が入った籠を倒しながら、逃げていた。


「わかった、これだ......。」


地面に転がったアビアの実を見て俺はあるアイデアを思い付いた。


「エレノアは引き続き2人を守ってくれ。次の攻撃で奴を仕留める。」


「何か思いついたのか、ジャレオ......。」


「ああ、バッチリな。」


「そうか......。わかった......! 無茶はするなよ......!」


エレノアの守護範囲から出た俺は村の果物屋からアビアの実を持ち出した。


体の過半部分を透過させていたステルスウルフは俺に狙いを定め、完全に透明になった。


そして再び襲ってきた。


俺は攻撃を避けた後、ステルスウルフの足元を見た。


「......よし、成功だ。」


何もない場所に赤色の獣のような足が見えるようになった。


「アビアの実......これ、実は染色作用が結構強くてな......。戦ってる最中に脱色しない程度には強い......。」


「大方、踏んづけたって所か......。ずっと見えなかった左後足がよく見えるようになったぜ......!」


ステルスウルフは一旦俺から距離を取ろうとしたが、


「もう遅い!」


『完全逃走』を発動させた俺から逃げ切ることは出来なかった。


俺はアレグレンズナイフを逆手で持って、ステルスウルフを斬り上げた。


何か重くて大きなものが地面に落ちた音がした後に、透過が解除された、討伐されたステルスウルフの姿が少しずつ顕になった。


「さて......これで本当に終わったな......。」


俺はアレグレンズナイフについた血を振り払い、しまった。


「う......うおおおおおおおおおおおおお!!」


周りから村人の喜びの歓声が上がった。

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