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魔女病

「10年前.......我々は悪天候による作物不作により飢餓に苦しんでいた。その時、森の奥で静かに暮らしていた『活性の魔女』がふらりと現れ、我々に恵みを分け与えたのだ.......。ああ......我々は助かった、餓死を免れたと思った......。」


俺達は村長さんの話を静かに聞いていた。


「しかし、事件は起きた......。魔女の施し物を食べた者が病魔に襲われたのだ.....。」


「我々はその病魔を『魔女病』と呼んでいる.......。」


「魔女病......」


俺はこぼすようにそう呟いた。


「魔女病の症状は異常な体温上昇、発熱が特徴的であり、腹を下すなどの症状もあった......。奇跡的に薬学に精通しているドクターベイシムのお陰で全員助かったが。もし彼がこの村にいなかったら、我々は自身の異常な体温により自身の臓器の機能を壊し、死に絶えていた......と彼は言っていた.......。」


村長は話を続けた。


「そしてこの事件以外にも正体不明の獣がこの村の近辺に住み着いているなどと言った件がある......。魔女がこの村に姿を見せてから始まった事だ.......。このような出来事があった以上、我々は魔女に良いイメージを持てない......。」


「獣の正体は『ステルスウルフ』という名の忍ぶ事が得意な狼の魔物とコーデリアさんは言っていました......! 私達がその魔物を退治したいと提案した時、コーデリアさんも協力したいと仰っていました......!」


エリザリアは続けた。


「ステルスウルフが出現しやすいエリアの近辺に住まいを持っていながら襲われていないコーデリアさんが、退治に協力的だとという事は、皆さんの安全を守りたいと言う意思表示なのではないでしょうか......!」


エリザリアは熱心に村長に訴えた。


「......仮にそうだとしても過去に『魔女病』が我々を襲ったのは事実だ......。疑いは晴れない......。」


「私達はつい昨日、魔女に会ってきましたが、襲われる所か自らの住まいに私達を暖かく向かい入れ、宿泊させて下さいました。魔女病は......本当に魔女病なのでしょうか?......何か別の病気の可能性があるのではないでしょうか。」


エリザリアに続き、エレノアも熱心に訴えた。


「私の息子が魔女病にかかった時、ベイシム殿が仰っておりました......。『ここまでの高熱を引き起こし、尚かつ腹痛を伴う病気は今まで見た事がない』と......」


別の病気か......。


うん? いや、待てよ......確かに10年前のケイスター村で流行り病があったが、図書館でさらっと読んだ時、名前は魔女病ではなかったはずだ......。


えっと確か......『ヒフキ病』だ。症状に腹痛はないが、異常な発熱を引き起こすのは魔女病と同じだ。発症時期と稀有な症状を引き起こす事から言って、2つとも全く別の病気とは言えない。同一の物と考えていいだろう。しかしなぜ、腹痛が引き起こったんだ......?


「村長さん、もしかすると魔女病は本当の正式名称ではないのかもしれません。魔女病は......恐らくヒフキ病という10年前に流行った病気と同じものでしょう。ヒフキ病は魔女病と酷似した病気で、腹痛はありませんが感染者の異常な発熱を引き起こします。少しだけ時間を頂ければ、腹痛の原因を...... 。」


「黙れ!」


兵士は槍の矛先をこちらに向けた。


「これ以上魔女に肩入れするような戯言を言うようならばお前たちを牢屋行きにする!」


兵士は語気を更に鋭くし、俺達に詰め寄った。


(ジャレオ様......ど......どうしましょう......?)


エリザリアは心配そうに小声で俺に話しかけた。


(ダメもとで言った俺の提案の為に俺はともかく、2人が牢に入る訳にはいかない......。)


俺は続けた。


(それに調べたい事がある......。ここは一旦コーデリアさんの所へ戻ろう......。)


二人は頷いてくれた。


「わかりました。それでは俺達はここで帰ります......。貴重なお時間をすみませんでした......。」


俺達は村長さんの家を出ようとした。


その時、俺はある違和感を感じた。


あれ.......?誰か覗いている?


閉じたはずの村長の家のドアが少し開いていて、その隙間から誰かが覗き込んでいた。


すると俺達に見つかると思ったようで、慌てた様子でドアを閉じた。


誰が覗いていたのか気になる処だが、まあ、後回しだな。とにかくます、コーデリアさんのもとへ戻ろう。





「あっ......! おかえりなさいませ......! 皆さん! ステルスウルフの手がかりは掴めましたか......?」


家に着くと、早速本人が出迎えてくれた。


「コーデリアさん、実は俺達、ステルスウルフの捜索ではなくて、ケイスター村の村長さんに会って魔女の悪しき風潮を正しに行って来たんです......コーデリアさんは村の皆さんが思うような凶悪な魔女では決してないと......。」


俺は続けた。


「その時に、村長さんから聞きました。魔女病の事について......。」


「そうなんですか......。」


コーデリアさんは静かに呟いた。


「もし良かったら教えて下さいませんか? 魔女病の真相について......。」


しばらく沈黙した後、コーデリアさんは言った。


「わかりました......。真実のみ......お話します......。」

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