不幸の始まり
コーデリアさんの家に泊まってから一日目の朝、俺は目覚めた。
「おはようございます! ジャレオ様。」
エリザリアが俺を起こしに来た。
「ああ、おはよう。」
体の伸びをした後、俺は言った。
「早速リビングに行こうか。」
「はい!」
俺達はリビングに向かった。
リビングには既にコーデリアさんがいた。
「あっ...おはようございます! ジャレオさん、エリザリアさん。」
「おはようございます! コーデリアさん。」
エリザリアの後に続いて俺も挨拶をする。
「あれ? エレノアは......?」
「私が知る限りではエレノアさんはまだ来ていませんね......。あっ......。」
「どうしました?」
「いえ、これは関係ない事だと思いますが、昨晩にエレノアさんの部屋で、何か猫のような声が聞こえたんですよね......。」
「猫......ですか......?」
エリザリアが不思議そうに尋ねた。
「はい......。『にゃんにゃにゃ〜ん!』みたいな感じに......。」
「にゃんにゃにゃ〜ん......ですか......」
「ふふっ......。」
「......? ジャレオ様?」
「ああ......いや、何でもない。」
やっぱり面白いな。エレノアは......。
「ところで今日は何か手伝う事はありますか?」
話題を変えつつ俺は尋ねた。
「いえ......。昨日ので全て終わりました。今日はご自由になさって下さい......!」
「そうですか......それじゃ今日は『ステルスウルフ』の捜索をしよう。」
今日の予定はステルスウルフの捜索になった。
出来れば早めに見つかるといいな......。何日も泊まってコーデリアさんには迷惑を掛けたくないからな......。
「ふわぁ......昨日はちょっとやり過ぎちゃったかな......。『にゃんにゃんモード』......。」
俺達がリビングに来てから数十分後、エレノアは欠伸をしながら階段を降りて、リビングへやってきた。
「あっ......おはようございます! エレノアさん!」
「ああ...コーデリアさん、おはようございます。皆もおはよう。」
エレノアは気さくに挨拶を返した。
「ところでエレノアさん......。昨晩エレノアさんの部屋から何か......猫が鳴くような声が聞こえたのですが......。何かご存知ですか.....?」
「えっ!? あっ......いえ......。」
エレノアにしては歯切れの悪い返事をした。
「はははっ.....。」
(笑うなっ! ジャレオ!)
エレノアが小声で耳打ちをしてきた。
(いや...すまない...。ツボなんだ.....。『にゃんにゃんモード』が......。)
(むむむむっ......!)
エレノアはやり切れない思いを込めながら俺を睨んだ。
「まあ、取り敢えずエレノア、準備してくれ......。『ステルスウルフ』を捜索しに行く。」
「わかった。それじゃすぐ準備しよう......。」
エレノアは準備し始めた。
「それでジャレオ......。具体的にどこを捜索するんだ?」
俺、エリザリア、エレノアの3人で集まり、俺達は話し合いを始めた。
「コーデリアさんの情報によればこの近辺にあるヴィエール川の周辺に『ステルスウルフ』は出没しやすいと言われている。」
「そうか、それじゃあヴィエール川に向うのか?」
「いや、その前に寄りたい所がある。ケイスター村だ。無意味になってしまうかもしれないが、村長さんに魔女、特にコーデリアさんは心優しくて、決して人に危害を加えないと人だという事を訴えようと思う。」
俺は続けた。
「今の現状ではやっぱりコーデリアさんが不遇だ.......。俺の提案、二人はどう思う......?」
二人は少し間を開けた後、まず先にエリザリアが返答した。
「素晴らしい提案だと思います! 私も付いて行きます!」
「誤っている事は正したほうがいいに決まっている。これはやるべき事だろう。」
二人は快く俺の提案を受け入れてくれた。
「すまない、二人ともありがとう。それじゃ早速行こうか。」
俺達ケイスター村へ向かった。
村に着き、俺は村長を尋ねた。
「失礼します村長さん。」
「貴方は......。昨日の冒険者殿......。」
「お知り合いですか?」
「ああ。」
村長の他に、この村の男の兵士もいた。
「村長さん、いえ、願わくばここに住む村人の皆さんの『活性の魔女』のイメージの誤りを正しに来ました。皆さんがイメージしている魔女と現実の魔女はかけ離れています。『活性の魔女』......コーデリアさんは慈愛に満ちたとても優しい魔女です。」
「『活性の魔女』が慈愛に満ちているだと? ここに来たばかりの冒険者の若造が何を戯言を.......!」
「まあ、待て......。」
村長は兵士をなだめた。
「ジャレオ殿......私を含め、村人全員が魔女を受け入れろと言う事ですな?」
「はい......。」
村長は深呼吸をした後、静かに語り始めた。
「君達は......魔女の恐ろしさを知らない......。10年前、魔女が我々に齎した不幸を......。」
エレノアの『にゃんにゃんモード』については14話「豹変」と15話「目撃」にて触れていますので、ご興味のある方は是非!