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満面の笑み

「んっ...。」


「おはよう、エリザリア。」


「あっ...おはようございます。ジャレオ様。」


「今日はドミニエルさんの所へ行く約束だったな。一緒に冒険の準備をしようか。」


「はい...!」


早朝、俺とエリザリアは支度を済ませ、冒険者ギルドの集会所に向かった。





ギルドマスターの部屋前に着いた俺はドアをノックをした。

「ジャレオです。ドミニエルさんにお会いしに来ました。」


「おお、来たか。入っていいぞ。」


「失礼します。」


俺はドアを開けた。


中に入ると、前と同じように、ドミニエルとエレノアが待っていた。


「おはようございます! ドミニエルさん、エレノアさん!」


「ああ、おはよう...。朝早くからすまんな...。」


申し訳なさそうにドミニエルは挨拶を返した。


「おはよう、エリザリア。」


エレノアはクールに挨拶をした。


「一日ぶりだな。エレノア。」


「ジャレオ......ぷっ...ふふっ。」


エレノアは俺の顔を見るなりいきなり吹き出した。何だ、俺の顔に何か付いてるのか...。


自分の顔を触って確かめてみたが、別に何ともなかった。何なんだ一体。


「さて、全員揃った所で早速、今回の依頼の説明をしよう...。」


ドミニエルは続けた。


「今回の依頼は、ケイスター村の近辺調査だ......。この村の近くの森で魔物らしきものが出没しているのではないかと連絡を受けてな。」


「魔物らしきもの......ですか。魔物と断定出来ないのですか?」


俺は尋ねた。


「うむ...、裂かれた木の痕跡や足跡を見る限り、明らかに大型魔物の物なのだが、ケイスター村の村人がこれは魔女の仕業である......と主張しているのだ......。」


「魔女がその村の近辺に住んでいるのですか?」


「うむ、森の奥地に『活性の魔女』が住んでいる。」


ドミニエルは続けた。


「だが、その魔女が村人に危害を加えたなどといった報告はこれまで一度も受けていない。危害を加えるどころか、寧ろ、悪天候による作物不作で村が食料難になった時に、恐らく自家栽培で有ろう作物を村に献上したと言う話を聞いたことがある......。」


「お話をお聞きする限りでは、魔女さんはとてもお優しい方としか見受けられないのに、どうしてケイスター村の皆さんは魔女さんを嫌っているのでしょう......。」


エリザリアはそう言った。


「そうなんじゃよ、正しくそれじゃ。なぜ村人が魔女を嫌っているのかが分からん......。」


ドミニエルは続けた。


「まあこれは、絶対ではないが、皆にはそこの調査もやってもらえると助かる。」


「わかりました...。」


エリザリアは返答した。


「後、今回の依頼は大型魔物の詳細がわからない以上、発見した場合はすぐに撤退してもらっても構わない。あくまで今回の依頼の目的は調査だからな......。」


ドミニエルは続けた。


「こんな所じゃろうか...、前回と同じように馬車を用意しておいた。準備ができ次第、これに乗ってくれ。それでは頼むよ。」


「わかりました。それでは調査して参ります。」


「うむ......。」


俺達はギルドマスターの部屋を後にした。





馬車に乗り込むとエレノアが早速、喋りかけてきた。


「なあ、ジャレオ......。これは今日の魔法新聞の朝刊だが...。この写真に写ってるの...ジャレオだよな?」


エレノアは魔法新聞を広げ、ある写真を指差した。


「ああ、そうだ。俺が昨日インタビューを受けた時に撮った写真に間違いないな。」


「これ、『おんぶの英雄、ルーシティ街を救う!』って書いてあるんだけど、どう言う事? エリザリアをおんぶして戦ったの?」


「ああ、そうだ。おんぶしながらでも大型魔物に勝てるくらい俺は強いってエリザリアに証明したかったんだ。そのお陰でもうどんな魔物が襲ってきても、俺と一緒なら怖くないよな、エリザリア。」


「はい! ジャレオ様が一緒ならもう何も怖くありません!」


「とまあそんな所だ。」


「なるほど、そういう理由があった訳か...。」


エレノアは真剣に俺の話を聞いていた。


「『おんぶの英雄』か......ぷふっ...。」


エレノアがまた吹き出した。


「エレノア?」


「いや、ちょっと『おんぶの英雄』って言葉が私のツボに...ふふふっ......。」


「確かにミスマッチな言葉の組み合わせだと思うが、そんなにおかしいか?」


俺は素朴な疑問をエレノアに投げかけた。


「絶対おかしいぞ......。ふふっ...ジャレオ、すまないが、そんなに真剣な表情をされたら......ぷふっ...今日は...笑ってしまう......はははっ。」


エレノアは口元を手で隠していたが、目が完全に笑っていた。


......なんか『おんぶの英雄』がエレノアのツボっぽいので、せっかくだから話に乗ることにした。


「真剣な表情って例えばどんな感じだ?」


「それ! それだよ! ジャレオ! はははははっ....。」


エレノアはかなり嬉しそうだった。


「エレノア......あんまり笑ってるとおんぶするぞ?」


「ふふふふふっ..... やめて、ジャレオっ! そんなに笑わせないで...! はははははっ...!」


「.........おんぶするぞ?」


「ぶはーーー!!! あはははははははははっ!!!」


エレノアは満面の笑みで笑っていた。


エレノアがこんなに笑った所、はじめて見たな。

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