転職
俺の魔物討伐は想定外の盛り上がりを見せ、とうとう魔法新聞社のインタビューすら受ける事態になった。この騒動は恐らく明日の朝刊に乗ることになるだろう。
まあ、冒険者として名を馳せるのが俺の野望だから、有名になって損はないだろう。
そんなこんなでインタビューを終え、民衆の盛り上がりが程々になった所で、ようやく俺はエリザリアとロゼッタに再会する事ができた。
「す...すごい持て囃されましたね...。」
「ああ...これはなかなかだったよ...。」
「ジャ、ジャレオ...!」
ロゼッタが俺達の方へ駆け寄ってきた。
「ジャレオ...魔女、兼Bランク魔法使いである私ですらあの魔物に2発は最大威力の魔法をぶつけなければ倒せないだろうと言うのに...あなた...一体....?。」
ロゼッタはかなり驚いた様子で俺を見つめた。
「凄いだろ? 俺の『完全逃走』は。」
「いや...凄いを通り越してやばいんだけど......。」
ロゼッタは呆れながらそう言った。
「それじゃ、移動先は、エリザリアは図書館、ジャレオはオルレーム神殿でいいわね?」
「はい!」
「ああ、よろしく頼むよ。」
無事魔物を討伐し終えた俺達は、ロゼッタの『テレポート』を使い、用がある施設に行く事にした。
「オッケー! じゃあまずはエリザリアからね...。テレポート!」
ロゼッタがテレポートを唱えると、俺達の目の前にに『ワープゲート』が現れた。
う~ん、やっぱり便利な魔法だな...。俺も使いたい。
ワープゲートを通り、俺達はロージアン国立魔法図書館に着いた。
「それじゃ、エリザリアは引き続き、勉強していてくれ。俺はオルレーム神殿に行って転職してくるよ。」
「はい! 行ってらっしゃいませ...! ジャレオ様!」
「ああ、行ってくるよ...。」
俺は続けた。
「それじゃ、ロゼッタ、よろしく頼む。」
「オッケー! 『テレポート』!」
ロゼッタと俺はテレポートで出来たワープゲートを使い、オルレーム神殿へ移動した。
「おお! ここがオルレーム神殿か......。圧巻だな...。」
オルレーム神殿は幅700メートル近くはある滝の目の前に建設されており、迫力満点であった。
「確かに凄いけど、土台が流されたらどうしようって思うのよね...。ここに来るといつも...。」
「まあ、それは確かに思うな。」
「でしょ? まあ、滝の激流も当然考慮して建設してあるんだろうけど...。さあ、中に行きましょうか。」
「ああ。」
俺達は神殿の中へ入った。
中に入ると、これまた立派な石畳が敷かれており、壁は一切隙間の無い薄黄色の石壁造りであった。
「この神殿の奥に転職を司る神官がいるわ。後は神官と話して、転職する職を伝えるだけよ。」
「わかった。すぐに戻ってくるよ。」
「ええ。」
俺は神殿の奥へ向かった。
奥へと進んでいると、まるで賢者の出で立ちのような老年の男が佇んでいた。胸元まで伸びた白い髭が特徴的であった。
俺はその男に話しかけた。
「すみません、貴方が神官様ですか?」
「如何にも......ここで神官をやっているガストニーと言う者だ...。」
ガストニー神官は、厳かにそう応えた。
「早速お願いしたい事があるのですが...。」
「うむ...。」
「俺...『盗賊』になりたいのですけど......。」
「うむ、いいぞ......。あっいや...待った。念の為聞くが『冒険者としての盗賊』って意味じゃな? 『金品を人から奪う、法に触れる盗賊』の方ではないじゃろ?」
「勿論ですとも。」
「そうか...良かった...。いや、実はある窃盗事件で実行犯が供述で『俺はガストニー神官公認の盗賊だぞ〜!!』なんて言う奴がいたのじゃ.......。いや、幾らわしの立場でも窃盗は許可出来んて......。」
「曲解されてたのですね...。」
「ああ......まあ、普通に考えればわかる事じゃが......。」
ガストニー神官は続けた。
「話が逸れたな。ここに自分のサインを書いてくれ.....。その後に『盗賊の書』を渡す...。」
「わかりました...。」
俺は神官に渡された高級な羊皮紙に自分の名前を書いた。
「うむ...それではこれを渡そう。」
俺は神官から『盗賊の書』を貰った。
「さて、これで君は『盗賊』になった。魔物との戦闘を積めば、盗賊専用のスキルを覚える事が出来るだろう......。精進したまえ。」
「ありがとうございます...。ガストニー神官。」
「うむ......。」
晴れて盗賊になった俺は来た道を戻り、ロゼッタのもとへ向かった。
「おっ、来たね。無事、盗賊に成れた?」
「ああ、この通り。」
俺はロゼッタに盗賊の書を見せた。
「うん、それが貰えているなら間違い無いわね。さあ、図書館に戻りましょ。」
「ああ、よろしく頼むよ。」
ロゼッタはエスケープを発動させ、俺達は図書館へ移動した。