スピードナイフ
「んっ!?素早さ99999!?!?どういうこと!?」
姉はかなりぶったまげていた。
「これって逃走時のみ?」
「いや...スライムから逃げ切ってからずっとこのままなんだよ...。その証拠にほら...」
足が縛ってある状態で俺は左右に横移動をする。
「す...すごい...あまりにも早くて残像が見えるわ...。」
俺は横移動を止めた。そして足元を縛っていた布を解いた。
「まあ、こんな感じ...。あと、帰ってくる途中に試したけど、この素早さ99999の『完全逃走』状態でもスライムと戦闘出来たよ。」
「ほんとに!?それはとんでもないわね...。
あっ...そうだ。」
姉ちゃんは突如何かを思いついたような表情をした。
「ジャレオだったらいいものがあるわ、こっちに来てっ!」
そう言って姉ちゃんは俺の腕に抱きついて自分の部屋まで俺を引っ張ろうとした。
その時、姉ちゃんの豊満な胸が俺の腕に当たった。柔らかな感触が確かにそこにあった。
姉ちゃん、まさか俺以外の男にも無自覚でこんなことやってるのか?俺は家族なのでなんとも思わなかったが...他の異性にやったら絶対勘違いするから止めといた方がいいぞって言おうと思ったが、面倒だったのでやめた。
俺は引っ張られるままに姉の部屋に着いた。
「ちょっと待っててね♪」
姉ちゃんは部屋に入ったと思うと、何かを探すようにがさがさと音を立てた。
「おおーあったあった!これこれ!」
姉ちゃんはそう言うと戦利品であろう短剣を俺に見せつけてきた。
「素早さが高ければ高いほど威力が上がる短剣、スピードナイフ。これを使えば凄いことになるんじゃない?」
「なるほど...確かに素早さ99999の『完全逃走』状態の俺がそれを使えばとんでもない威力が出そうだな...。」
「でしょ?ただ、あんまりレア度が高くないから恐らく何処かで武器の威力の限界が来ると思う...。まあ、また試してみて!」
「ああ、分かったよ。ありがとう姉ちゃん。」
姉ちゃんからスピードナイフを貰って、しばらくした後、ようやく俺の素早さはもとに戻った。
〜二日後〜
「とうとう行くのね...ジャレオ...。」
母さんが俺をじっと見つめていた。
「うん...。」
冒険に行く俺を家族が見送ろうとしていた。
「ジャレオ!スキルが強いからって油断しちゃダメだぞ〜!」
「分かってるよ。」
「アメリーンの言うとおりだ、スキルがどうのこうのは父さんには分からないが、これからはもっと強力な魔物と戦うんだろう?決して油断するなよ...。」
「うん、分かったよ。父さん。」
俺は荷物を持った。
「父さん、母さん、姉ちゃん、それじゃ行ってくるよ。」
「ええ、行ってらっしゃい!」
こうして俺は新たに冒険を始めたのであった。
手始めにいつもお世話になっているロージアン王国の冒険者ギルドで何かしらの魔物討伐の依頼を受けるか...。
しばらく歩いて俺は故郷からロージアン王国に着いた。
さてさて、冒険者ギルドは...って、うん?路地裏に人がいるな。
「君かわいいね〜、俺達と遊ぼうぜぇ〜。」
「仲間が来るまでのちょっとだけでいいからさぁ〜。」
「そんな...困ります...。」
二人の戦士風のチャラい男二人が一人の少女に言い寄っていた。
「そんなつれないこと言わないでさぁ〜。」
「すみません...。」
すると一人の男が少女の腕を掴んだ。
「えっ...?」
「おい、サム。これじゃあ埒が明かないから強引に連れて行くぞ。ここじゃまだ人気が多すぎる...お楽しみはその後でいいだろう...へへっ。」
「おっいいねぇ〜分かったぜ、ディナビー!」
「いや、そんなことは出来ない。俺が阻止するからな。」
俺は少女を掴んでいた男の手を振り払った。
「ああん?なんだてめえは?ぶっ潰...」
俺は近くにあった石壁をスピードナイフで粉々に切り裂いた。
「見ての通り、俺の短剣は石壁を切り裂く事ができる...。紙を切るように簡単にな...。向かってくるなら、容赦はしない。」
「へっ...へへっ...そんなんで...ビビると思ったのかよおおお!!!」
一人の男が向かってきた。
やれやれ、せっかく警告してやったのに、結局向かってくるのか...無意味な事を...。それに滅茶苦茶冷や汗かいてるし...そんなに怖いならとっとと逃げればいいのに...しょうがないなぁ...。
俺はスピードナイフの柄で軽ーーーく相手の頭を殴った。
「ぐあっ...!?」
向かってきた男が倒れ込んだ。
「ディナビー!てんめえー!!この野郎ーーー!」
もう一人の男も向かってくる。最初の男同様に軽ーーーく殴った。
「ほげっ!?」
もう一人の男も倒れた。
「やれやれ...終わったか...。」
「あっ...ありがとうございます...!」
助けた少女が俺のもとへ駆け寄ってきた。
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