注意喚起
「音が...止みました...!」
「ああ...よく頑張った、エリザリア。」
「はい...! でもこれはジャレオ様が付いていてくれたからこそ出来たことです...。私一人では、とても......。」
「俺はただ少しだけ、エリザリアを支えただけさ......。」
俺はちょっとキザに決めてみた。似合っているかな...。
俺を見てエリザリアが微笑んでくれたので良しとしよう。
しばらく沈黙が続いた後、エリザリアが言った。
「あの、ジャレオ様.....?」
「どうした?」
「その...もう少しこのまま続けてもらえませんか...?」
「続けると言うのは、抱擁をか?」
「はい.......、ジャレオ様の抱擁...とても落ち着くんです。」
「そうか...、わかった。それじゃ期待に応えるとしよう。」
俺は抱擁を続けた。エリザリアは安らいでいた。
暫くすると、ある少女が俺とエリザリアに話し掛けてきた。見た目は幼く、10代前半って感じの見た目だった。
「こらー!そこのカップルー!館内でイチャイチャするなー!」
少女はちょっと怒り気味だった。
「うん...? ああ...、すまない...。そういえばここ、図書館だったな。」
「そうよ! 二人とも非の打ち所がない、容姿をしているけれども、美男美女だったら何でも許される訳ではないのよ!図書館の規則はきっちりと守ってもらうわ!」
「すみませんでした......心から謝ります......! えっと...。」
「ロゼッタよ。」
「ロゼッタさん......!」
エリザリアはロゼッタに謝った。
「すまない、ロゼッタ......。」
エリザリアに続き、俺もロゼッタに謝り、そして続けた。
「元はといえば、場所を弁えずに、俺がこれを読もうと提案したのが悪いんだ。巻き込まれたエリザリアは何も悪くない....。」
「いえ!そんな...!ジャレオ様は悪くありません! 悪いのは私です......。私がもっと抱擁をして欲しいなんて言わなければ......!」
「あーあー、わかったわかった。わかったから、その惚気るのをやめなさい......。 全く...聞いてるこっちが恥ずかしくなるわ......。」
ロゼッタは続けた。
「別に私ここの司書じゃないから、貴方達に罰を与える権利なんて無いわよ......。とにかく司書にバレない内に反省してくれればそれで良いのよ......。」
「そうなのか......。俺はてっきり司書の方かと思ったぜ。」
「うん、司書じゃないけどこの図書館についてはかなり詳しいわね。」
ロゼッタは続けた。
「貴方達、調べものをしに来たのよね?」
「ああ、そうだ。俺が脱線させてしまったが、本来はそれが目的だ。」
「余計なお節介かもしれないけどもし良かったら案内しようか?」
「ああ...それは助かるな、よろしく頼むよ。」
という事でロゼッタに図書館を案内してもらうことにした。
「ちょっとこういう本を探しているんだが......。」
「ああ、それならこっちにあるわよ。」
「おっ、あったあった......。すまない、助かったよ。」
「いいって事よ♪」
「すみません、回復魔法の本はどこにありますか......?」
「それなら、彼処の2列と、向こうの1列にあるわ。」
「ありがとうございます!」
早速エリザリアは指定の本棚に向かった。
ロゼッタは俺達の探している本の種類がある本棚の位置を完璧に覚えていた。
「凄いな、ロゼッタ。検索機と同じぐらい早いぞ。」
「まあ、この図書館に入り浸っているから......。この程度は楽勝ね。」
「どの位、この図書館に通っているんだ?」
「そうねぇ......。ざっと20年ぐらいかしら......?」
「20年......?」
俺は困惑した。いや、そんな事はあり得ない。大人になっても童顔だから子供に見えるって言うのもあるが、そういうのじゃない。100%、十代前半子供の顔立ちなんだ......。俺より確実に年が下のはず.......。
「ああ、言い忘れてた...。私、魔女なのよ。」
「魔女...?」
「そうよ。ちょっと若返り薬を飲み過ぎちゃって今はこんな姿になってるけど.......。」
「なるほどそういう事か......。」
俺は続けた。
「となると俺とエリザリアより年が上なのか....。すみません、敬語を使うべきでした。」
「別にタメ口でもいいわよ...。今更変えても違和感があるじゃない。」
「そうか、それじゃ遠慮なく使わせてもらうぜ。」
俺は続けた。
「しかし魔女か...、魔女って言うと作れる薬から決まる『○○の魔女』みたいな2つ名があるんだよな。」
「ああ...透過薬を作れるから『透過の魔女』みたいなやつ?」
「そう、そんな感じの。」
「まあ、一応あるけど、ごめん、秘密。私のはあまり口外しちゃいけないのよ。」
「そうなのか...。薬が軍事利用されてしまうとヤバイから......みたいな......?」
「いや、実際そんなにヤバくないんだけど.......う~ん......まあ、機会があったら改めて言うわ。」
そう言ってロゼッタは笑った。