ロージアン国立魔法図書館
何とかエレノアを振り切った俺は、エリザリアの待つ宿屋へ辿り着いた。
「やれやれ.......。」
「あっ....お帰りなさいませ!ジャレオ様!」
部屋に入ると、エリザリアが出迎えてくれた。
「ああ......ただいま。ネックレス、届けてきたぜ。」
「あ、ありがとうございます!」
俺はアレグレンズナイフをいつもの場所に置き、ベットに寝転んだ。
「ふう......。」
「ジャレオ様...何だかお疲れのようですね...。」
エリザリアが心配そうに尋ねてきた。
「ああ...ちょっとエレノアに殴られかけてな。」
「ええ!? 殴られかけた...ですか...?」
エリザリアは只々驚いていた。
「なるほど...そう言う事が...。」
何があったか説明するとエリザリアは納得した表情を見せた。
「ですがジャレオ様、あまりエレノアさんをからうのは...。」
「ああ、次会った時に謝るとするよ。」
「よかった....。」
「うん、ただエレノアが許してくれるかどうかだが......。まあその時はその時だな。さて......」
俺はベットから起き上がった。
「明日は俺、『ロージアン国立魔法図書館』に行ってくる。彼処は情報収集にもってこいの場所だからな。」
俺は続けた。
「俺の能力的に訓練を積んで自身のステータスを上げるのはあまり効率的に強くなれるとは思わない。上げて得をするのは精々『防御力』くらいだろう。だから俺はあらゆる情報を有効活用し、効率よく魔物を討伐しようと思う。」
「なるほど...流石ジャレオ様ですね!更なる高みを目指すその姿勢、私も学ばないといけませんね....!ジャレオ様、私も行きます!」
エリザリアは明るく返事をした。
「いいのか?別に無理に俺に付き合わなくていいんだぞ?休日は休日だからな...。好きに休んでいいんだぞ?」
「いえ、初心者ヒーラーの私は回復魔法についてもっと勉強しなくてはいけないので......。いい機会ですので私もジャレオ様と一緒に行きたいと思います!」
エリザリアの意思は揺るぎなかった。
「そうか、真面目だな、エリザリアは...。わかった、それじゃ一緒に行こうか。」
「はい!」
「それじゃ今日はもう遅いし、風呂に入って寝るとしようか。」
「あっ、私は既に入ったので好きなだけ気兼ねなくゆっくりと浸かって下さい。」
「わかった、それじゃ存分に浸からせてもらうとするよ。」
俺は風呂場に向かった。
そして風呂から出た俺は眠っているエリザリアを起こさないように、静かに同じベットに入った。ベットが一つしかないという状況にもそろそろ慣れてきた。
「それじゃ行こうか。」
「はい!」
翌朝、俺達はロージアン国立魔法図書館へ向かった。
「じゃあ俺はこっちの本棚に行ってるよ。」
「わかりました。それでは私は魔法関連のコーナーを......。」
図書館に着くと、早速俺達は各々目当ての本を探し始めた。
「エリザリア、中々面白そうな魔導書を見つけたぞ。」
机で回復魔法の本を読んでいるエリザリアに、ある一つの小説を見せた。
「夏のホラー魔導書シリーズ...魔法加工が更に進化して飛び出すゴーストの迫力が増しました! ですか...。」
「うちの姉ちゃん、このシリーズが大好きでな、怖いの苦手なのに毎年買ってくるんだ。」
「そうなんですね、ジャレオ様のお姉様が...。」
「エリザリアは怖いの得意か?」
「いえ、それが全然駄目なんです......。ゴースト系の魔物の図鑑ですらたまに直視できない時があるくらい怖がりなんです......。」
エリザリアは正直に答えた。
「そうか...。」
「ジャレオ様はどうですか?やはりお姉様が買っているのでこのシリーズは慣れていたりとか......。」
「いや、それが全然駄目なんだ......。怖いのは好きだけど。」
「えっ!そうなんですか?」
エリザリアは驚いた。
「ああ、このシリーズ良く出来ていてな。何回見ても怖いんだ。所見だと超怖い。」
「そんなに怖いのですか...?え...どうしよう......おトイレ行けなくなっちゃうかも......。」
「どうしても駄目なら無理強いはしないよ。俺一人で見る。そのうち本物のゴースト系の魔物を討伐する機会も出てくるだろうから、今のうちに慣れておかないとな。」
少し間を開けた後、エリザリアは言った。
「わかりました......。とても...怖いですが、私も頑張ります......!」
エリザリアは勇気を振り絞りそう言った。
「勇気を出してくれてありがとう。よーし、エリザリアの勇姿を見たら俺も勇気が湧いてきたぜ!行くぜ!」
「あっすみませんジャレオ様......。」
「うん?どうした?」
「その...抱き付いてもいいですか.....?」
エリザリアはもじもじしながら恥ずかしそうに言った。
「勿論、いいぞ!」
断る理由があるわけがない。
「あ...ありがとうございます......!」
エリザリアは俺に抱きついた。
そして、俺はエリザリアの肩を抱き寄せた。
「よし、準備オッケーだな、行くぜ。」
「うぅ...こ...こわい...。」
早くも震えているエリザリアを抱きながら、俺は『夏のホラー魔導書3』の1ページ目を静かに開いた。