サバイバル
「ここがドンデリー山ですか......。」
「思ったより普通の森だな。」
俺達はドンデリー山に着いた。
「見た所、単純な道なりだから地図はあまり必要ないだろう。魔物に警戒しながらこの道を進んでいこう。」
「わかりました!エレノアさん!」
俺達は道をまっすぐに進んで行った。
道を進んでいくと、小型の魔物に遭遇した。
「早速来たな。」
魔物はきのこの型をしていて、全長は60cmほどであった。
「私に任せてくれ。」
そう言うとエレノアは背中に掛けたあった剣を引き抜き、構えた。
魔物が俺達に襲いかかると、エレノアはその瞬間に素早く斬撃を与えた。
思いがけない反撃に怯んだ魔物は、足早に、この場を去った。
「うむ、逃げたか。」
「流石ですね!エレノアさん!」
「ふふふっ......ありがとう。」
エレノアは剣をしまった。
「俺も加勢するつもりだったが、その必要は無かったようだな。」
「うむ、この程度の魔物ならしばらくは私1人でも大丈夫だろう。オールダートレントと戦う時によろしく頼むよ。」
エレノアは微笑みながらそう言った。
「ああ。」
俺達は再び道を進み始めた。
「あっ......!彼処に湖がありますよ!」
エリザリアは湖を指差した。
「本当だ。湖だ。」
「そろそろいい時間だし、丁度いい、あそこで休憩しないか?」
エレノアは休憩を提案した。
「そうだな、そうしよう。」
「そうですね!」
俺達三人は休憩することにした。
「しかし、この森はあまり魔物が出なくて助かったな。私が前受けた依頼では恐ろしいぐらい小型魔物と遭遇してな。4人パーティーだったから多少は手数が多かったが、目的の大型魔物を討伐するより苦労したのを覚えているよ......。」
俺達は各々、その場にあった切り株に座った。
「何体ぐらいと戦ったんだ?」
「うむ......大体25体ぐらいだろうか。」
「25体もですか!」
エリザリアは驚いた。
「ここの魔物よりは弱いかったから何とかなったがな。」
エレノアは笑みを浮かべ、自信満々にそう言った。
「凄いですね!」
エリザリアはとにかく感心していた。
しばらくゆっくりしていると俺の脇腹あたりから、小さなリスの魔物がひょっこりと顔を出した。
「魔物か。」
俺は咄嗟に魔物と距離を取ったが、襲ってくる気配は無く、姿の表し方からむしろ、人懐っこい印象を受けた。
「魔物だが私達に危害を加える訳では無さそうだな。」
「そうみたいだな。」
俺はアレグレンズナイフをしまった。
「魔物とはいえ、全員が人間を襲ってくる訳ではない。このリスの魔物ように人懐っこい魔物もいる。」
エレノアは冷静に説明した。
リスの魔物は体を登り、エリザリアの肩に乗っかった。
「わあ〜!可愛い〜!!よしよし。」
エリザリアはとても喜んでいた。そしてリスの魔物はとても懐いていた。
「そのリス...命拾いしたな......。普段の私ならなんの躊躇なく、仕留めて焼いて食っていただろうな。」
エレノアは小言で恐ろしい事を言った。
「ええ!?」
「それは本当か、エレノア。」
「ふふっ、本当さ。まあ、今は十分に食料があるから、そんなことはしないがな......。ふふふっ......恐ろしかろう?」
そういってエレノアは笑みを浮かべた。
詳しい事はよくわからないが、たまに姉ちゃんからサバイバルな土産話を聞くことはある。
今は十分に農業や畜産業が発展していて、冒険前に大量の保存食が支給されるから、遭難ならまだしも、ダンジョン探索中に食料不足になる事はあまり無いと聞いたが、冒険者は今もサバイバル性が求められる職業なのかもしれない。
「さて、十分に休憩したし、そろそろ行こうか。」
俺は立ち上がり、二人に呼びかける。
「そうですね!」
「うむ、行こうか。」
俺達は探索を再開した。
俺達は湖を出て、しばらく歩いていた。
するとエリザリアが違和感を感じ始めた。
「何だか森の中が暗くなってきたような気がします......。」
俺は辺りを見渡した。
「確かに、これは暗すぎるな.......。まだ昼間なのに。」
「そろそろオールダートレントと接敵するかもしれないな......。エリザリア、私の後ろに。」
「わかりました......。」
エリザリアがエレノアの後ろに回った。
するとまたたく間に俺達の前方にある蔦が急成長し始め、しなる鞭のようにエレノア目掛けて飛んできた。
「来たかッ!」
エレノアは盾で攻撃を防いだ。
俺達の前方にあった大木がまるで動物のように動き出した。大木が歩く度に地響きする。
「ジャレオ!『オールダートレント』だ!」
「ああ、了解した......! と同時にありがとう。エリザリアを守ってくれて。これで俺達の勝ちだ。」
俺はオールダートレントの背後に回り、『完全逃走』を発動させた上でアレグレンズナイフでオールダートレントを切り裂いた。
オールダートレントは横に真っ二つに斬り裂かれ、倒れた。
「......えっ?」
エレノアは目を丸くしていた。