誕生日
「おめでとージャレオ!今日で18歳ね!」
家族に祝福されながら俺は18歳になった。
俺の名はジャレオ。冒険者として名を馳せるのが俺の野望だ。
「ジャレオももう18歳か〜、じゃあとうとうスキルが貰えるね。」
そう言ったのは姉のアメリーンだった。
「懐かしいな~『魔力15%UP』を貰ったのを思い出すな〜」
18歳になった時に姉は教会から『スキル施し』の儀式を受け、魔法の威力が上がるパッシブスキル『魔力15%UP』を授与され、魔法使いとして世界中を冒険していた。
「ジャレオも冒険者だから戦闘向けスキルが貰えるといいね!」
「ああ、何が何でも勝ち取ってやるぜ。」
「おお!その意気だ!」
姉は俺を鼓舞した。
「ジャレオ、お前がいち早くスキルが欲しいなら、教会まで連れて行くがどうする?」
父さんが俺に訊いてきた。
「ああ、やっぱり今すぐ欲しい、連れて行ってくれ。」
「そうか...じゃあ行こうか」
「あっ待って待って私も行くー!」
俺のスキル施しに姉も付いて来ようとする。
「冒険者の経験が俺より長い姉さんなら俺が授かったスキルの価値がすぐ判るだろう。付いてきてほしい。」
「オッケー!お姉さんがバッチリ判断してあげよう!」
「ちょっと待ってーみんなも行くならお母さんも行くー」
「あ...うん...。」
そんなこんなで結局家族全員で教会へ行くことになった。
教会に着くと早速俺は神父によってスキル施しの儀式を受けた。
「最後の儀礼として、施しを受ける者はこの聖杯に入った聖水をお飲みください...。」
ジャレオは聖水を飲み干した。
「飲み干されたので、無事スキルを授かったことでしょう...。この魔術書に魔力を込めるように念じてください。そうすればスキルをご確認できます...。」
神父は魔術書を取り出し、ジャレオに渡した。
「ありがとうございます...、さて、いよいよだな...。」
ジャレオは魔術書に魔力を込めた。
すると魔術書は独りでに白紙のページが開き、そこに文字が表示された。
『完全逃走』...素早さ関係なしに、戦闘時、必ず「逃走」が成功する。
「これは...どうなのだろう...。」
冒険者とはいえ、危険度が高い魔物を狩ったことがない俺ではこのスキルの価値が分からない、姉に見てもらおう。
「どれどれ〜?お姉ちゃんに見せてみなさ〜い。」
姉が俺の魔術書を覗き込む。
「完全逃走...う~んはじめて聞くなぁ...戦闘時必ず逃げられる...か...直接的な攻撃力には関係しないだろうけど、結構便利なスキルなんじゃない?冒険者としてありだと思うよ!て言うか戦闘時なんて明らかに冒険者向けだし...これは本格的に冒険者になるしかないね!良かったねジャレオ!」
「そうか...何はともあれ冒険に役立つスキルで良かったぜ...。」
俺は心の底から安堵した。どんな形であれ姉のように世界中を冒険したかったからな...本当によかった。
「アメリーン、ジャレオのスキルはどうだったー?」
母さんが姉に尋ねた。
「うん、いい感じだったよーー!」
「そう!良かったわね!ジャレオ!」
「良かったな...ジャレオ。」
「うん...ありがとう母さん...父さん...。」
俺たち家族は教会を後にした。
家に帰ってきた俺は早速近所の森へ出かけた。そこにはスライムがいて、俺の授かったスキルを試すには一番近場の魔物であった。
「これでよしっと...」
俺は足元を布で縛った。
足元をがっしりと固定しているので例え最弱の魔物であるスライムであっても、逃走術を使わなくては逃げ切ることはできない。
「さあ、来い!スライムよ!」
程なくしてこちらに向かってくるスライムが現れた。
「よし来た!逃げるぞ!」
俺はスライムから逃げようとすると、早速『完全逃走』が発動した。
「動ける...足を縛っているのに物凄く早く動けるぞ!」
『完全逃走』で加速した俺はあっと言う間にスライムを置き去りにした。
軽くやってこれだからな...恐らくどんな魔物相手でも逃げれるのだろう。
...そういえばこの『完全逃走』の効果時間はいつまで続くのだろう...。ちょっと神父から頂いた魔術書を詳しく読んで見るか...。
神父から貰った魔術書は便利でスキルだけでなく自分自身の現在のステータスも確認できる。
そのため俺のパッシブスキルである『完全逃走』の異常性が早期に明らかになった。
「現在素早さステータス...99999...!?」
勿論これはもともとの俺の素早さではない、もともとは20くらいだ...。『完全逃走』の効果か...。
念のため他のステータスも確認してみる。うん...問題ない...素早さ以外は10だ...。
取り敢えず効果が切れるのを待つか...。
しばらく待ってみたが一向に素早さが下がらない...。とっくにスライムからは逃げ切っているのに...どういうことだ?いつまで効果が続くんだ?
もっと待ってみたが以前変わらず素早さがカンストしていた。仕方ないから家に帰るか。
「ただいま...。」
「おっ、お帰り〜どうだった?『完全逃走』は?」
「ああ...姉ちゃん...丁度その話をしたかったんだ...。俺のスキル魔術書のステータス欄を見てくれ...。」
俺は姉にスキル魔術書を見せた。
この後すぐ次話を投稿します。