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誰もいないこの世界で  作者: 如月月 月
番外編『A sequel to the story』
21/24

後日談その四『確かな温かさ』

久しぶりの後日談回。そして祝・初キス回です。

 ◆倉科結絃視点◆


 初夏の陽気が続くこの頃。レイラと正式に交際を始め、数日が経過した時のこと。


 その日は、俺が一人で礼拝堂の掃除を行っていた。たまたま俺の手が空いたので、普段できないような細かいところの掃除をしていたのだ。


 もう少しすればレイラも手隙になるので手伝いに来てくれるそうで、二人でやればすぐに終わるだろう。


 ……と言っても、思ったよりも汚れておらず、もう少しで終わりそうなのだが。


「――ふぅ……だいたいこんなもんか」


 礼拝堂の中を見回し、いつもと変わらず綺麗なそこの、先ほど掃除をしたところを注視する。


 俺はその出来に満足がいったのでポツリと独り言を。そして、疲れた身体を伸ばすように少しだけ伸びをした。


「ふあ……」


 その伸びの勢いのままあくびが出る。あくびが出ると、今度はなんだか眠たくなってきたような気も。


 ……そういえば、最近は忙しかった。休めていないわけではないが、まとまってダラダラする時間というのも作っていない。


 今からレイラが来るまでまだしばらくあるだろうし、礼拝堂の椅子に座ってゆっくりするくらいは構わないだろう。暇な時間をこうして浪費するのも、たまにはいいはずだ。


「…………」


 俺は礼拝堂の長椅子たちの最前列、その端に陣取る。ちょうど日差しのないそこは、初夏の陽気の中での数少ない涼しさをもたらしてくる場所だ。


 俺は背もたれに身体を預けて、全身から力を抜く。


「……ふ、あ……」


 また一つ大きなあくびが。これはなんだか本格的に眠ってしまいそう。


 ……。


 ……別に、少し寝るくらいいいだろうか。レイラが来れば起こしてくれるはずだし、それまでの間だけだ。


 こんな椅子で眠ったって熟睡もしないだろうし、少しだけだ、少しだけ。


「…………」


 俺は目を閉じる。背もたれに預けた身体を動かし、居心地のいい体勢を探してもう一度、今度は先ほどよりも深くもたれかかった。


 ――意識が眠りに落ちたのは、それからすぐのこと。






 ◆喜多川レイラ視点◆


 残っていた作業を、やや苦戦しながら片付けて。


 結絃くんを待たせているからと、若干急ぎながら私は礼拝堂に入る。


「――ごめん結絃くん、遅くなっ……た……?」


 そして私は、それを発見したのだ。


 ――窓から降り注ぐ、初夏の日差しを避けるように。日陰の長椅子、その端に結絃くんが腰掛け、背もたれにもたれかかって目を閉じているのを。


「……え、結絃くーん……?」


 自然と私の声は小さくなる。おっかなびっくり呼び掛けながら、私は結絃くんの下へと忍び足で近寄った。


 ……結絃くんは、目を閉じている。呼吸は規則正しく穏やかで、呼びかけに応じるどころか身動きの気配がない。


 私の所感が正しいのなら、これ……。


「……ね、寝てる……」


 結絃くんが居眠りなんて、珍しいというかなんというか……。


 お仕事の途中に居眠りをするような人ではないのだけれど、それくらい疲れが溜まっていたのだろうか。ちょっとした休憩のつもりで寝落ちてしまったとか。


 それか、警戒心の強い結絃くんがうっかり寝てしまうくらい、彼もこの教会でリラックスできるようになった、とか……。


 ……後者はともかく、前者はありえる。というかそれしかない。


「…………」


 そういえば、最近の結絃くんは働き詰めだった。潰れてしまうほどに無理はしていないけれど、それでも目立って休む時間なんて就寝中と食事中くらい。


 そんな生活がもう何日も続いている。無理をしてはいなくとも、知らず知らずの内に疲れが溜まっているなんていうのはよくある話だろう。


 ……うーん。


 寝かせておいてあげた方が、いいような……。


 いやでも、こんなところで寝て風邪を引かないだろうか。体勢も悪いし、身体が痛くなりそう……。


 ……でも結絃くんの疲れが溜まっているのは本当だろうし、彼のことだ、起こせばまたせっせと働き出すに決まっている。


 ……うーん……。


 ………寝顔、可愛いなぁ……。


「…………」


 ……寝かせておいてあげよう。


 そう、疲れが溜まっているのなら休むべきなのである。


 決して、結絃くんの寝顔をもっと見ていたいと思ったとか、あわよくば頭撫でるくらいいいよねとか、普段できないようなことが彼が寝ている今ならできるんじゃないかとか、そんなことは決して……。


 決して、考えていない……。


 …………。


 ……ちょ、ちょっとだけ……。


「……っ」


 ゴクリと唾を飲み込んで。そうして私は、結絃くんの頭に手を伸ばした。


 普段ならば絶対に踏み越えてはならない一線として存在するそこを踏み越え、彼に直接手を触れる。


 ――フワリ。


 少し傷んではいるけれど、それでもフワフワの結絃くんの髪の毛。起こさないようにと注意しながら、私は慎重に手を動かした。


「…………」


 そう、普段ならば、こんなことはさせてもらえない。


 長年染み付いた反射やトラウマが、私を例外と認められるよう。結絃くんと共有する時間を増やし、少しずつ慣れていく――そんな風に、今の私たちの関係は決まっている。


 だから、まだ肉体接触はNG。接近も、過度なものはアウト。


 せいぜい、ベッドに隣合って腰掛けて話したり、並んで行う作業などを意識するようになった程度。


 ――髪を撫でさせてもらうのは、これが初めてなのだ。


 故に、私の内心を素直に表現すると――うわぁ……! と言いながら目をキラキラさせている……ような、そんな感じ。


「………い、いいよね……」


 次は、結絃くんの隣に座ってみたい。いつもは並んで座っていても視線を向けたりしないので、至近距離から結絃くんのことを見てみたい。


 ストン


 ……じー


「…………」


 ……顔、綺麗だなぁ。


 結絃くんの容姿は、見慣れているからこそ新鮮だった。こうしてマジマジと眺める機会は皆無なので、そういった意味では初見とも言える。


 いやはや、それにしても顔がいい。結絃くん、なかなかにイケメンなのではないだろうか。目は切れ長で眉も綺麗、唇は薄くてこちらも綺麗、肌にシミもニキビもなくて荒れてもいない。その肌質が羨ましい。


 素材がいい、というのはこういうことを言うのだろう。もしかすると、気合を入れてメイクをすれば女装だっていけるかもしれない。


 この世界に化粧品があるのかはわからないけれども、日本でならばワンチャンあった。


「…………」


 ……それよりも。


 実に、気持ちよさそうに寝ている。


「……ふふ」


 知らず、私の頬が緩んだ。それくらい結絃くんの寝顔は穏やかだったのである。


 静かに眠る想い人を眺めるのは、なんだか微笑ましくて胸が温かくなる。


 それに、〝あの〟結絃くんが私の隣で寝ているのだ。すごく嬉しい。


 ここまで私が大胆な行動をとるなんて、結絃くんが起きている時では絶対にできない。そしてなにより、こんな行動をとっても結絃くんが怯えず眠ったまま、というのがとても嬉しいのだ。


「……ふあ……ぁふ」


 結絃くんの寝姿に触発されたか、私まで眠気が来てあくびが出てしまった。


 思えば、結絃くんが働き詰めだというなら、私だって似たような感じだろうか。二人でこの教会を維持する、揃って新米の牧師と修道女。負担ならば同じくらいありそうである。


 私も無理せず休むようにしているが、結絃くんがこの通り疲れが溜まっていたのだ。私もそうであっても不思議はない。


「…………」


 ……いけない。思考に没頭してしまったせいで、身動きをとるのが億劫になるほど眠気が深くなってきた。


 もういっそ、このまま寝てしまおうか。どうせここの掃除が終わればこの後は暇なのだし、溜まった疲れを癒すのなら時間の浪費も有意義だとさえ言える。


 そう――有意義なのだ。


 例えば、結絃くんが起きないのをいいことに、彼に身体を預けてもたれかかってみることも、疲労回復の効率を上げるという意味で殊更に。


 とても、有意義……。


「…………」


 ……わ、すごい。結絃くん、身体が結構がっしりしているらしい。


 私が体重をかけてもビクともしないのだ。さすが男の子。


 ――……ん、これ、結絃くんの匂いかな……?


 結絃くんにもたれかかるの、安心する……やっぱり好きだな、結絃くん……。


 ………あぁ、ダメだ。ほんとに、寝ちゃいそう……。






 ◆倉科結絃視点◆


「――……ん……」


 意識がぼんやりと浮上して、俺は目を閉じたまま眠りから覚める。


 寝起きだからか、目が乾燥して痛い。まばたきを繰り返してなんとかそれをごまかし、俺は目の前の風景に意識を向けた。


「……やべ、寝てた……」


 窓の外を見上げると、そこはもうすっかり茜色。夕食の準備の時間にそろそろなるはずで、俺はぐっすり寝てしまっていたらしい。


 レイラは俺を起こしてくれなかったようだ。気を使われてしまったかもしれない。


 ……というか、毛布がかけられている。


「…………」


 完全に気を使われてるヤツだ、と俺は自分に呆れた。


 あとでお礼を言っておかないとと思いつつ――そこでようやく俺は、自身の半身にピタリとくっつくなにかに気がついた。


 ちょうど、俺より少し身長が低いくらいの人間が隣に座り、俺にもたれかかっているような、そんな温かさと重量感が……。


「すー……すー……」

「…………」


 ……ドンピシャだった。なぜかレイラまで眠っていて、俺の身体にもたれて熟睡中である。


 毛布はレイラの身体にまで綺麗にかけられており、もしかしたらこれをかけたのは彼女ではないのかも。


 それよりも。俺と同じようにレイラも疲れていたのだろう、自然に起きるまでそっとしておいてあげた方がよさそうだ。


 となると俺が動くことができなくなる。できれば、レイラを起こさないままここを抜け出し、夕飯の準備をしに行きたいが……まあ、無理か。


「すー……すー……」


 ……それにしても、無防備に寝るものだ。


 眠る男の隣に腰掛けてもたれかかって寝るなんて、随分信頼されて……あいや、それもそうか。恋人なのだった。


 …………。


 ……好きな人が自分にもたれかかって眠ってくれるのは、かなり嬉しい。


 信頼されているということだし、ひいては気を抜いてくれたということでもある。


 俺たちはまだ恋人としてはぎこちなく、イチャつくなんてことも全くできていない。眠っている間だけとはいえ、レイラが無防備な姿を見せてくれるのは純粋に嬉しかった。


「…………」


 ……ちょっとくらい、触れてみてもいいだろうか。


 女嫌いでも、俺だって男だ。好きな子に触れてみたいという欲求は、当然の如くある。


 いつもなら、そういう欲求の前に躊躇や恐怖を覚えるのだが……レイラが静かに眠っているだけだからだろうか。今はそれもない。


 ただただ、レイラが隣で眠ってくれることへの安堵と喜び。そして彼女に触れたいという、逆らい難い欲求だけが胸にある。


 ……だって、恋人なのである。頭を撫でたり頬を触ったりくらいなら、許容範囲ではなかろうか。


「…………」


 そっと、レイラの側とは反対の手を持ち上げる。慎重にゆっくり、彼女を起こさないよう気をつけつつ、俺はレイラの頭に手を伸ばした。


 ――レイラの髪に手を触れる。そのまま、毛並みに沿って頭を撫でた。


「ん……」


 レイラの反応はそれくらい。目を覚ます様子もなく、大人しくされるがままだ。


「…………」


 少しの間、俺はそうしてレイラの頭を撫でていた。二度三度と手を往復させ、彼女に触れているという事実を噛み締める。


 ――レイラに触れられている。怖いと感じることもなく、彼女を愛しいと思うままに。


 そのことは、俺の思っていた以上に重要なことのような気がした。


「……レイラ」


 ポツリと、俺は彼女の名前を口にする。その言葉が持つ意味も、今は普段の何倍も大きい。


 ――俺の好きな人。この人と共に生きていきたいと、本気で願うことのできる人。


 その想いを同じくし、同じように願いを抱いてくれる人。お互いに望み合って、隣を歩いてくれる人。


 ……あぁ。好きな人というのは、こんなにも――


「レイラ」

「……んぁ……?」


 ――頭を撫でられる感触か、些か声量が大きくなってしまった俺の呼び声か。


 どちらが原因かはわからないが、レイラは寝息をこぼすようにしてそれに反応した。


 どうやら起きてしまったらしい。レイラに躊躇なく触れることが出来るのもこれで終わり……な、わけではないな。


 壁を越えたとでも言えばいいのか。なんというか、レイラへ触れることへのハードルが、今のでなくなったような気さえする。


 まあたぶん、不意を打たれたりすればレイラ相手でもまだ無理だろうが。それでも、こうして触れることができた。その実績は、それこそ宝石のように価値が高いものである。


 ――ともかく。俺は目覚めたレイラに、寝起きにも優しい声量で話しかけた。


「おはよう。よく寝れたか?」

「ぇ……? ……え、あ、えっ!?」


 レイラの頭に手を置きながらの俺の発言に、彼女は一気に覚醒し……現状の様々なことに驚いて慌てて、凄まじい勢いで起き上がって俺から離れた。


 先ほどまでレイラがもたれかかってきて温められていたところが、突然吹き込んだ冷たい風を感じて寂しくなる。毛布も大胆に吹き飛んで、床に落下しかけたのを俺はすんでで引き止めた。


 起きるなりそんな過剰な反応をされたのもちょっと傷ついたし、なにより寂しい。


 ……まあ、仕方がないことなので、悪くは言えないのだけれど。


 とりあえず、今は――


「ゆ、結絃く、ごめんっ! ね、寝ちゃってて! ほんとごめん!」


 長椅子の端にいる俺から、長椅子の上を滑るような器用な動きでもう反対の端っこにまで行き、レイラはそう捲し立てた。


 レイラの顔色は、いかにも「やってはいけないことをやってしまった」と言いたげに青ざめていて、謝っているのは俺へもたれかかっていたことだろうか。


 寝起きだということもあってか、パニックになっているようにも見える。まずは落ち着かせる方が先決であろう。


「大丈夫だ、気にしてないし怒ってない」

「で、でもっ……!」


 依然パニックのレイラ。話を聞いてくれないのは予想できていたので、手っ取り早く態度で示そうと思う。


 俺は、大胆に距離をとったレイラへと、毛布を置いて近づいた。もちろん、レイラが逃げることができないくらいの短時間で。


「だから――大丈夫だ」

「っ……!?」


 レイラのすぐ隣にまで距離を詰めて、俺は彼女の顔を見ながら言った。


 ……うん、やはり大丈夫そうだ。


 こんなに近づいて、近距離から見つめ合って、それでも全く恐怖を感じない。


 些か強引な方法だったような気もするけれど、終わりよければ全てよし。これにて俺とレイラの間にある最後の障害がなくなった。……はずだ。


 とにかくあとはもう、普通に恋人としてのステップを踏んでいくのみ。


 ……なのだが。


「い、いやっ、でも!」


 これまでの俺を覚えているからだろう。レイラはこれだけでは納得してくれない。


 今の俺が大丈夫に見えたとしても、今までの俺を考えれば信じきることは無理な話か。レイラからしてみれば、これでもまだ足りないらしい。


 ……それなら、もっとすごいことをしてやる。


「大丈夫だって言ってるだろ?」

「っ、だ、だって……!」


 ――たぶん、少しの苛立ちが含まれていたと思う。


「じゃあ、証拠見せてやろうか」

「……、え?」


 脈絡のない俺の発言に、レイラが驚いて一瞬動きが止まる。その隙を突いて、俺はレイラの肩に手を置いて彼女を捕まえた。


 ――つまるところ、レイラの行動というのは、見当違いな理由で恋人としての行動を渋っている、ということ。


 その理由が俺のためを思ってくれているものなのは確かで、それ故あまり強くは言いたくないのだけれど……。


 ……つい今しがた、恋人に触れる喜びを知ったばかりで、それがそんな形で取り上げられるのは。


 嫌、だったのだ。


「えっ、しょ、証拠……?」


 困惑したのか、それともこれからの俺の行動を察したのか。レイラは自身の肩に置かれた俺の手をチラリと見て、次いで上目遣いで俺の顔を見た。


 ……嫌がられている気配は、たぶんないはず。躊躇いが見て取れるのは、先ほどと同じく俺への心配か。


「証拠だ。レイラとこういうことしても大丈夫っていう、証拠」

「え、そ、それ――っ」


 レイラは恐らく、「それなら今でも充分だ」などと言おうとしたのだろう。


 その言葉を言われるのは面白くない――この先の行動に移れなくなるので、俺は肩に置いた手をレイラの頬に移動させることでそれを遮る。


 レイラが固まり、顔を真っ赤に染めた。俺が求めている行為はもう伝わったはず。


 ……確かに、今でも証拠としては充分だ。これだけでも、今までの俺では考えられない大胆な行動なのだから。


 でもさすがに、それを言うのは野暮である。


「嫌か?」


 ……土壇場でこんなことを聞いてしまうのも、野暮だと思うけれども。


「っ……や、じゃ、ない……です……」


 しかし、それがトドメになったのか。


 レイラはポソポソと言いながら抵抗をやめて、上目遣いを経て目を瞑り、微かに顎を持ち上げて唇を少し尖らせる。


 彼女のその仕草に、心臓を持っていかれるかと思うくらいに俺は目を奪われて――


「――――」


 ――証拠は、きちんと示すことができた。


 これでレイラも遠慮しなくなってくれるとありがたい。俺が心構えさえすれば、たぶんもう大丈夫なはずだから。


「……レイラ、可愛いよ」

「ふえっ!?」


 唇を離して、それでも手と距離は離さず。至近距離から見つめ合って、俺は素直に内心を口に出す。


「なっ、や……! ……うぅ」


 レイラは抱いた動揺をこれでもかと顔に出し、最後は顔ごと視線を逸らして呻いた。


 こういったことは不慣れなのだろう。俺が初めての彼氏なのかも、と、浅ましい独占欲が芽生えてくるような。


 ――やんわりと、レイラの逸らされた顔を元に戻すように、彼女の頬に当てた手でほんの少しだけ促して。


「もういっかいしたい」

「っ……」


 俺がもう一度ねだると、レイラはおずおずと顔を元の向きに戻してくれた。


 今度は、レイラの頬に当てた手を彼女の後頭部に置き、もう片方の手を背中に回して――抱きしめるように、俺はレイラと口付けを交わした。


 ――感じる彼女の体温は、酷く心地よくて、温かい。


 その温かさは……きっと、身体で感じるだけのものではないのだろう。


 胸の内。ともすれば心と呼べるそこも、泣きたくなるくらいに温かいのだから。

次回からはまたifルートに入ります。後日談よりもifルートの方がネタがたくさんあるので、しばらく続いてしまうかも。

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