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誰もいないこの世界で  作者: 如月月 月
番外編『A sequel to the story』
19/24

ifルートその五 『例えば、最も望む結末に』

 ◆倉科結絃視点◆


 ――意外と、一ヶ月半というのは長いらしい。


 現役高校生ながら、勉強という代物を甘く見ていた。


 たかが一ヶ月半、されど一ヶ月半。現代日本でさえない異世界でそれだけの日数を過ごした俺は、当然の如く授業についていけなかった。


 これはいけない。帰ったら気合を入れて勉強しよう。


 ――そう思いつつ、帰りのホームルーム中。


 なんとなく、窓の外の校門に目を向ける。


「……え」


 思わず声が出た。それもそのはず、そこには見慣れた白金色があったのである。


 遠目で、身体は隠れていて頭の先程度しかわからないが……見間違えるはずもない。あれはレイラである。


 レイラの方が早く学校が終わるのだと、そういえば昨日話した。待ち合わせ場所の話をするのを忘れていたから、あとからトークアプリででも連絡をとって放課後になってから落ち合うものだと……。


 ……いや、そうじゃない。それはもういい。


 今重要なのは、レイラが――隣にもう一人いるようだが――校門前で出待ちをしているということであり、


 ここが、男子校だということだ。


 ――最後に礼をして、ホームルームが終わる。その瞬間、俺は自らの鞄を引っ掴んで席を立った。


 脇目も振らず、教室の出口へ走る。


「おい倉科! 走んなー!」

「すいません!」


 背後から投げられた担任の言葉には、二重の意味で謝罪を返して。俺は速度を落とすことなく生徒玄関へ直行する。


 ――やばい。


 胸の内には、その言葉だけ。


 ――だって、男子校にあんな美人がいるのだ。それも誰かを出待ちしていると来た。絶対噂になる。光の速さで持ち切りだ。賭けてもいい。


 ナンパはたぶんされない。男子校の生徒は女子に免疫がない故、声をかけるとか畏れ多くてできないはずだ。ましてあんな美人のレイラ相手なのだから。


 だがしかし、視線は絶対に集まる。注目される。その上で、「あの子すげえ美人」とか、「胸でかいな」みたいな下品な会話が行われる。むしろ俺もやったことがある。だからそれは確実なのだ。


 ――すごく、嫌だ。


「――!」


 靴を履き替える。足を突っ込んで、踵を踏むだけでは速度が出ないからという理由で履くのはきちんと。そしてそこから全力疾走。


 校庭にはある程度人がいて、その視線は当たり前のようにレイラ――とその隣の女子――へ向いていた。ザワザワと漏れ聞こえる会話は、概ね思っていた通りの代物である。


 その間を駆け抜けて、到着――


「――レイラ、はぁっ、お前……!」


 慌てていたせいか、俺の息は荒い。それでもなんとかレイラに声をかけると、俺が走り寄る音でこちらに気づいていた彼女は心配そうに答えた。


「そ、そんなに急がなくてもよかったのに……大丈夫? 結絃くん」


 そのあまりの危機感のなさに、ちょっと本気でイラッときてしまった。


「ばか、はっ、なんでここに、はっ……」


 戻らない息がもどかしい。一度言葉を止めて無理やり深呼吸をして、無理をすれば息を切らさなくてもいいくらいにはギリギリ回復する。


「……バカ、なんでここにいる。待ち合わせなら、どっか他のとこでよかっただろ」

「っ、ご、ごめんなさ……」

「いい。それより早く――」


 心配そうな雰囲気が一転、傷ついたようにしゅんとなるレイラの謝罪に、俺が手短に指示を返そうとすると。


「――ねえアンタ、それはないんじゃないの」


 それを低い声で遮って、女子が割って入ってくる。


 ずっとレイラの隣にいた、恐らくレイラと一緒に待っていたと思しき人物。着ている制服も同じだし、見たところ距離感も近い。


 レイラの友人、だろうか。


 しかし。


 ――そんな脳内の分析とは無関係に、俺の背筋に寒気が走った。


「レイラはアンタに早く会いたいからってここに来たんだけど。それをアンタが無碍にするとか、何様よ」

「…………」


 俺は咄嗟に言い返すことができなかった。その理由は、久しく忘れていたこの感覚のせい。


 ――恐怖。


 俺が最も忌み嫌い、そして恐れるタイプの(おんな)が、コレなのだ。


 寒気は消えず、背中全体に電流を流されている気分だ。冷や汗が吹き出し、まともな思考なんてできていない。身体はその女子に向き直るのが精々で、俺はそいつの顔を見ることすらできなかった。


 ――表面上だけでも、態度が柔らかければまだいい。腹の中でなにを考えているかわからない、という恐怖こそあれ、表面上はすんなりやり取りができて距離をおけるからだ。


 けれどこんな風に、俺への敵意を隠さない女は一番怖い。こういう女は好き好んで俺に距離をつめ、喜び勇んで踏みにじりに来る。対処法など、嵐が過ぎ去るのを待つくらい。


「フン。レイラが随分よく言ってるからどんなのかと思えば、最低な奴ね。素直に喜ぶくらいしたらどうかしら」

「……、……」


 なにか言わないといけない、とだけ考えられたけれど、肝心の言葉は浮かんでこなかった。


 だって、この状態の危険物(おんな)になにを返す? 得てしてこういう手合いは人の話を聞かない。まして俺からだなんて、なにを言っても逆効果になるだけだ。


 それならいっそ、こいつの好きにさせて満足するのを待った方が賢くはないだろうか? そうした方が、ずっと手間もかからな――


「――理子ちゃん」

「……レイラ?」


 ――フワリ、と。


 俺の視界に、女と俺との間に割り込むように、白金髪が映り込んだ。


 それは、俺に背中を向けた――つまり、女から俺を庇うように立った、レイラの姿。


「ちょっと、黙ってて」


 レイラの声は、今まで聞いたことがないほどに激情を孕んでいた。誰が聞いたって〝怒っている〟と評価を下す、真っ赤な怒りの声。


 そんなレイラに眉をひそめ、女は口を開く。


「レイラ、あんたは関係な――」


 理子ちゃん、と呼ばれた彼女は、恐らくレイラのためを思って言ったはずだ。それを当の本人から邪魔されたとあって、さぞ面白くないだろう。


 しかし、それを上回る怒りによって、レイラは自分の無理を通した。


「理子ちゃんこそ関係ないでしょ! いいから黙ってて!!」

「っ……」


 ……レイラから、こんな無茶苦茶な言葉が出るとは。


 俺が抱いた驚きは、女も同じだったのだろう。彼女は気圧されたように口を噤んでしまい、それによって勢いを消失した。


 レイラの中で、そんな女の優先順位が低かったのか。女が喋ればまた黙らせればいい、という結論を身体で表すように、女の反応を確認することもなく俺の方へ向き直る。


 ――俺を見るレイラの顔は、くしゃくしゃに歪んでいた。


「……ごめん。ほんとうにごめん」

「い、いや……」


 レイラが悪いわけじゃないと、そう言おうとした俺の声は。


 自分でも驚くくらいか細くて、頼りなかった。


 ……おかしい。


 レイラが、好きな子がいるのに……どうして俺の声は、こんなに震えているんだろう……?


「っ、ごめん。今は一旦、会わないようにしよ? ほんとに、ごめんね」


 ――いくら俺がレイラのことを好きでも、レイラは女。女嫌いの俺からすれば、天敵以外の何物でもない、なんて。


 つまり今の状態の俺には、レイラでさえも逆効果。だからこそ、真に俺のためを思うなら、恋人として傍にいて支えるという選択肢はまず真っ先に排除する。


 最善手は、気持ちを堪えて距離を置くこと――


「……っ」


 レイラの考えたその提案は、見事に俺の現状にピッタリなもので。


 だからこそ反論が思い浮かばず、代わりの妙案なんて以ての外だった。


「じゃあ、またね、結絃くん」


 引き止める猶予さえ残さず、次いつ会うかの話もせずに、レイラは傍らの女の手を掴んで去っていった。足取りは早足で、あっという間に背中は遠ざかっていく。


 ――その遠ざかる背中に、自然と手が伸びた。


「………くそ」


 小声で悪態を吐き、手を引っこめる。冬の冷たい空気が肌を刺し、冷や汗を攫っていった。


 ――レイラの提案に、俺が咄嗟に反論することを考えたのは。


 レイラに傍にいてほしいと、そう思ったから。


 レイラが女だとか、そんなことは関係なくて、辛い時こそレイラの傍にいたかったから。


 ……それを素直に言えばよかったのだと、気づいたとしてももう遅い。


「…………」


 俺は踵を返す。周囲の視線は、不思議と気にならなかった。


 そして、またそれに気づく。


 ――今しがたの俺は、開口一番レイラに対して怒ってしまったし。


 レイラの連れに俺があんな反応をして、女性恐怖症を知るレイラからしてみれば「やってしまった」と思っただろう。


 ……あんなにも「ごめん」と重ねるのは、つまりそういうことだ。


 けれど、レイラは悪くなかった。


 あの女の言う通り、俺が素直に喜んでやればよかった。そうすればあの女がああして怒ることはなかったし、そもそも女性恐怖症のことだってレイラに非はない。俺が勝手に怖がっているだけなのだ。


「……くそ」


 もう一度、不甲斐ない自分に悪態を吐いた。


 そして、きちんと謝らないといけないと、頭の中で今後の予定を組み立てる。


 ……たぶん、レイラも冷静じゃないだろうから、少し時間をあけて。それからトークアプリで連絡をとって、明日の予定を聞こう。


 明日は休日、レイラも俺も部活には入っていない。特別な予定がなければ、丸一日デートに費やすことも可能なのだ。


 そこで、ちゃんと謝る。レイラからも謝られると思うから、それはやんわり否定する。レイラは大層凹んでいるだろうし、なにか埋め合わせも考えよう。


 ――いつしか、俺の足取りはいつもより早くなっていた。


 やることがいっぱいで、ちんたら歩いているのがもどかしくなったのだ。


「――待て、結絃!」


 そこに背後から、友人である栄二の声が――






 ◆喜多川レイラ視点◆


 ……私の内心は、めちゃくちゃだった。


 結絃くんを怒らせてしまったことへの申し訳なさ、結絃くんが傷つく様を間近で見たことへの悲しみ、結絃くんを傷つけた理子ちゃんへの怒り、傷ついた結絃くんから距離を置くことしかできない自分への不甲斐なさと寂しさ……。


 それはもう本当に、めちゃくちゃで。


「…………」

「……レイラ」

「うるさい」

「…………」


 喋る余裕なんてなかったから、話しかけてくる理子ちゃんにもそんな対応しかできなかった。


 ――ああ、理子ちゃんへの対応には間違いなく怒りがこもっている。それは当たり前だ。


 ……なら、我慢しないと。そうしないと話が進まないし、理子ちゃんも怒り始めたら喧嘩になって収拾がつかなくなる。


「……ちがう、ごめん。なに?」


 自然と声は低くなって、堪えきれない怒りがこもってしまうが。それでもなんとか理子ちゃんと話せる状態になったので、視線は向けずとも意識は彼女の声に集中する。


「……私もごめん。冷静じゃなかった」

「私も結絃くんもそうだったから、別にいい」

「でも……」


 理子ちゃんはそこで言葉を途切れさせた。言いづらそうに間をあけて、捻り出すようにそれを口にする。


「………あんたの彼氏に、悪いことしたわね」


 その口振りで、理子ちゃんが結絃くんの女性恐怖症を知っているのだとわかった。


 理子ちゃんの彼氏さんはそれを知っていた、ということだろう。理子ちゃんがこうして勘づいたように、結絃くんのあれはわかりやすいからだ。


 ――そしてそのことについては、私は冷静なことが言えそうにない。


「うん。私怒ってるから」

「……ごめん」

「私に謝らないで。……結絃くんに会って謝れって意味じゃないからね」


 「むしろもう絶対に会うな」という意味を込めて私が言うと、それは理子ちゃんにも伝わったのか。彼女は押し黙った。


 ……それから、ただの八つ当たりであるということはわかっていながらも、私はそれを言ってしまう。


「……結絃くんに、悪いことしちゃったじゃん」

「……ごめん」

「会うの、結絃くんだって楽しみにしててくれたのに」

「…………」

「……ほんと、さいあく」


 最後の言葉はごく小さく。けれど理子ちゃんには届いていたようで、彼女は更に声のテンションを落とした。


「………ごめん」


 その謝罪に関しては許せなかったので、直接糾弾してしまうのを避けるために私は口を噤む。けれどもたぶん、私のこの態度だけでも理子ちゃんには充分伝わっただろう。


 ……そういえば、理子ちゃんに対して私がここまで激しく怒ったのは、これが初めてだ。


「……また来週ね。バイバイ」

「……ええ」


 その会話を最後に、私たちは各々の家へ向かう交差点で別れた。


 ◇


 時間が経てば怒りは冷め、抱いたしっちゃかめっちゃかはそれら全てが悲しみへと変換されていた。


 ……結絃くん、絶対傷ついてるし怒ってる。付き合い始めて二日目にこれだ、あんまりなんじゃないかと私でも思う。


 嫌われたらどうしよう。……いいや、もうとっくに嫌われている。関係修復の糸口は、私自身が切り捨てたのだし。


「………どうしよう」


 謝りたい、とは思っている。でも、果たしてそれを結絃くんが望むかどうか。


 嫌いで嫌いで堪らないものとは、誰だって距離を置きたい。だから結絃くんは男子校を選んだのだし、彼は私のことも怖がっている。


 なら、私が抱く罪悪感を消化するために、結絃くんに会って彼への贖罪をしようなんて……そんなもの、逆効果以外のなんだというのだろう。


「…………」


 顔を合わせて頭を下げる、なんて、誠意という点ではいいが論外だ。メッセージかなにかで謝るというのも、誠実さに欠ける上にこれも逆効果になるかも。


 ……女である私が、どんな形であれ、ただ〝関わる〟ことがNGかもしれないのだ。迂闊な行動をとって、結絃くんに愛想を尽かされてしまうのは本当に嫌だ。


 ……。


「……はぁ」


 失って始めて気がつくとかいうのは、つまりこういうことなのだろうか。


 ――結絃くんが好き。結絃くんに嫌われたくなくて、結絃くんに会えないのは悲しい。


 結絃くんを求めてやまないのに、会うのも関わるのもいけないなんて。なんて、酷い話なんだろう。


 結絃くんが、女性恐怖症でさえなければ――


「………ちがう。結絃くんは悪くない」


 思考が、行き着いてはいけないところへ行きそうだった。それを寸前で堪えても、一度頭に浮かんだそれは消えてくれない。


 ……私は、結絃くんだから好きなのに。


 結絃くんが女性恐怖症かどうかなど関係なく――否。そんなものは関係ないと自ら断じて、結絃くんを好きでい続けたのに。


 ――結絃くんが女性恐怖症になったのは、彼が悪いわけじゃないし。彼が〝そう〟なら、私が配慮するのは当たり前。


 彼氏に料理を作ってあげたりする時に、彼のアレルギーや苦手なものを気をつけてあげるのと同じことだ。


 でも。


 ……でも。


「…………」


 ……やっぱり、私は結絃くんの彼女失格だ。


 私が結絃くんと触れ合えないことを彼のせいにして、苛立ちと寂しさをぶつけようとしている。


 なんて、なんて自分勝手。彼が女性恐怖症でさえなければよかったなんて、一番言ってはいけない言葉なのに。


 ――ピコン


「……?」


 トークアプリに着信が。制服から着替えることもせずにベッドに突っ伏していた私は、ノロノロと顔を起こして携帯を見る。


「………?」


 目のピントが合わない。頑張って目を凝らし、携帯の位置を見定めて手を伸ばす。


「……!?」


 私は画面を見て驚いた。


 ――結絃くんからだ。


「っ、……!」


 私は慌ててそれを開く。単刀直入に用件を告げ、絵文字や顔文字もないそれは、結絃くんらしい実直さだった。


『会いたい。明日とか、時間作れるか?』


 ……顔を見ることができず、声色も伺えない文字だけでは、結絃くんがなにを思っているのかがわからなくて怖い。


 でも、「会いたい」と言ってもらえた。結絃くんはいい意味でも悪い意味でも内心を隠さない。会いたくないなら、やんわりとであってもそれを伝えてくるはず。というか、連絡をしてくれたのが充分にすごいことだ――


『もちろん』


 ――私は舞い上がるテンションのまま、ベッドの上に正座して光の速さで指を動かす。


『むしろ今日でもいいよ。私もすぐ会いたい』


 即座に送信ボタンをタップして、今しがた打った文章がふきだしに囲まれてそこに現れた。既読はもちろんすぐにつく。


「…………」


 そして冷や汗をかいた。


 ……なにをやっているんだろう、私。文面からも食い気味なのがわかりやすくて、結絃くんに引かれてしまう。私なら引く。気圧されるぐらいはするし、気を使う。


「……、……!」


 冷や汗をかきながら、なんとか訂正とごまかしの文章を考え……それはもちろん難航して、その間に結絃くんから返信が返ってきた。


『じゃあ今晩、もらっていいか?』


 今晩。


 曰く、今日の夜。


 「もらう」とは、私の時間を頂戴したいとか、たぶんそういう意味。


 ただしかなり積極的かつ色気のある言葉なので、ちょっと勘ぐりたくなる。たとえば、「レイラをもらっていいか?」的な表現だったり……。


 ――ちなみに、未成年がホテルを利用する場合は保護者の承認が必要だそうで。ラブな方を使うのはもちろんご法度なので論外。ないとは思うが、ネットカフェ系も未成年の場合は補導されてしまう。


「……。……えっ」


 ぐるぐると、いろんな思考が頭を駆け巡った。その結果、「どういうことだ」という混乱が弾き出される。


 私の今晩を結絃くんがもらう……一番ありえるのは、結絃くんの家へのお泊まり。しかしそれなら準備も必要だし、結絃くんならズバッと「今日泊まれるけど来るか?」とか言いそう……。


「………えっ」


 もしかして単なる勘違いなのか、とまで考えて、いやしかし恋人だし……、とも思ってもう一度考え直す。


 な、なんだろう。付き合って二日目でこんな展開はあるのだろうか。いやいやけれども、結絃くんと私の間には一ヶ月半の同居という下積みが……で、でも結絃くんってイケメンだしモテるし、経験があっても不思議じゃない、イケてる族はこういう時グイグイ来るのかも……い、いやそれこそありえない、結絃くんは女の子が苦手で……。


「…………」


 ……とりあえず。


 OK、しとこう。


 お母さんとお父さんには、夕飯がいらないことと、帰りが遅くなるかもしれないことを伝えて……い、今から超特急でシャワーを浴びて、準備しよう。鞄の容積的に着替えは無理だが、下着の替えくらいは入れておこう。


「…………」


 了解を表すスタンプで、私は結絃くんに返事をした。既読はまたしてもすぐにつく。彼からも似たような用途のスタンプが返ってきて、会話はひと段落。


「……よし」


 ――さてそれじゃあ、まずはシャワーだ。


 私はクローゼットに突撃して、諸々の準備を開始したのだった。

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