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誰もいないこの世界で  作者: 如月月 月
番外編『A sequel to the story』
14/24

後日談その三『未来へ向かう第一歩』

 ◆喜多川レイラ視点◆


「――レイラ先生、ユズル先生となにかあったんですか?」


 アクシデントのあった日から一日通り過ぎた、二日後の今日。


 朝ごはんの後、後片付けと礼拝の準備とを当番でわけたみんなが、それぞれの仕事に向かう直前。


 ちょうど、結絃くんと私が別々の当番になっている日だったから、それはたぶん狙ってやったのだろう。


 ――ジルダちゃんが、ズバリとそれを聞いてきた。


「あぁ……えっと……」


 なにかあったのかと言われれば、それはもうすごいのが一つ。いい意味ではなく、悪い意味ですさまじい一件が思い当たる。


 開かずの間であった二階の掃除の際に起きた、あの一件だ。


「……あったよ。結絃先生、なにか言ってた?」

「言ってたっていうか……」


 観念して認め、足がかりにして情報を引き出そうとする私だが、今度はジルダちゃんの歯切れが悪くなる番だった。


 なんだろう。結絃くんが悪口や愚痴を言うとも思えないし、けれど私との間でなにかが起きたのだと察せられるような彼の行動というと……。


 ……わからない。情報が少なすぎる。


「……ケンカしてるんですか?」


 ジルダちゃんがそう聞いてきた。ケンカではないのだけれど、そう思われるような行動を結絃くんがとったということだ。


「うぅん、ケンカはしてないよ。……私が一方的に、結絃先生を怒らせた、のかな」


 まあ、いわばこういうことになるだろうか。あの日の一件を、言い表そうとするならば。


「……? ユズル先生、怒ってないですよ?」

「あはは、うん、そうだろうね。結絃先生はたぶん、別のことを気にしてるの」


 ジルダちゃんの疑問には、苦笑いでごまかしを放つ。


 結絃くんの考えそうなことならだいたいわかるのだ。彼はたぶん自分の方が悪いと思って、私のことを気にしているのだろう。


 ――悪いのは、いつだって私なのに。


 結絃くんの傷に不用意に触れてしまった、私だけが悪いのに。


「ほら、ジルダちゃん。礼拝の準備始めよ」

「あ、はーい」


 ――ちょうどよく、礼拝堂についた。先に着いて準備を始めていた子たちに加わって、私たちは朝の礼拝の準備をする。


 ……結絃くんが、なにかをしている……の、かな?


 例えば、子供たちから見て「先生たちがケンカをしていて、ユズル先生が仲直りのためになにかをしている」と、そう見えるようななにかを。


 ……。


 ……それは、違うよ、結絃くん。


 私が、悪いんだから――


 ◇


 ――その日の夜のことだった。


 結絃くんの行動をさり気なく気にしてみて、彼の変な行動を見つけようと努力したはいいものの、結絃くんと別行動になることが多くて失敗した今日。


 明日こそはと私がそれを脳裏に刻んで、あとは寝るだけなので、自室で灯りを落とそうとしたところ。


 ――コンコンコン


 ノックの音。音の位置が高い――ちょうど結絃くんぐらいの背丈でノックをしたような、そんな代物。


「――――」


 私はすぐに、そこにいるのが結絃くんだと直感した。


「……。……ど、どうぞ」


 躊躇いながら、それをなんとか踏み倒して。私は来客に返事をする。


 ここで私が出迎えに行くのは一番やってはいけない。なので、扉から離れたところに立って待ちながら……。


 ガチャ――


「レイラ、今、大丈夫か?」

「う……うん。大丈夫」


 扉が控えめに開かれて、結絃くんが顔を覗かせた。


 子供たちの前だと、私もいつも通りにすごせていたはずだが……なんだか、結絃くんと二人きりだと、変に緊張してしまう。


 もちろん、想い人との逢瀬でドギマギするような、甘酸っぱいものなんかじゃない。


 ――想い人からの想いを壊してしまわないか、その恐怖と戦う緊張だ。


「今日はレイラに、ちょっと渡したいものがあってな。……それから、大事な話も」


 「大事な話」――


 ……悪い方向へ突っ走る妄想は逞しく、私は泣きそうな気持ちを堪えるのに必死になってしまった。


「う、ん……いいよ、はいって」


 なんとか私が結絃くんにそう言えば、彼はおずおずと部屋に入ってくる。


 彼の手には麻袋が。先ほどまでは扉に隠れて見えなかったもので、それが私に渡したいものなのだろうか。


「こ、こっち……座って」

「ああ」


 結絃くんには椅子を勧め、私はベッドに座る。彼我の距離は、普段結絃くんが自分からとる距離と同じくらいだ。


 これなら、彼も気が楽なはず。……たぶん。


 ……いや、待て。私の部屋で二人きりなんて、彼だっていらぬ緊張をしていそうだ。普段の距離がどれだけアテになるか。


 ………はやく話を終わらせて、結絃くんの落ち着くところまで離れていってほしい。


 そうすれば、現状維持くらいはできるから。これ以上、関係が壊れてしまうこともなくなるから。


 ――あぁ、でも。


 離れてほしく、ないよ……。


「まずは、これな」


 結絃くんが口を開いた。手に持った麻袋を差し出してきていて、私はハッと我に返って応対する。


 やや大きめな袋だ。布のような感触のものが入っている。服かなにかだろうか?


「こ、これは?」


 私は結絃くんへ問いかける。目の前で開けるのも失礼かと思って、麻袋は受け取るだけに留めた。


 結絃くんが答える。


「前、普段着が欲しいって言ってたろ? 一着だけだけど、作ってもらったんだ」

「え、作っ――え?」


 言われた内容があまりにあまりで、私は思わず聞き返してしまった。


 ――この世界の服というのは、機械なんてものがないのだし、当たり前のように全てが手作りだ。


 既製品などという概念もなく、店に並ぶのは基本的に古着になる。そも布というのがそこそこ貴重なので、上流階級ならばともかく、平民は古着が基本である。


 それでも一応オーダーメイドというのもできて、普段子供たちの服などでお世話になっている馴染みの服屋さんも、きちんと採寸などをすれば服を作ってもらえる。


 ――結絃くんは今、「作ってもらった」と言ったのだ。


 つまりオーダーメイドの代物ということで、当然それなりに値が張る。


 そして、なんとかこれからやりくりをして結絃くんと私の普段着を買おう、という話が決まってから数日しか経っておらず、オーダーメイドができるほどの資金なんてできていない。


「あー……普段、子供服しか買わないだろ? だから、俺たちに合うサイズの古着の相場が知りたくて、馴染みのとこに行ったんだが」


 結絃くんが事情の説明を始めた。私が思ったことを察したのだろう。


「女性服とかを見てたら、店主さんに勘づかれてだな……」

「…………」


 ――そこまで結絃くんが言って、私はなんとなく事情を察した。


 馴染みの服屋さん。あそこの店主さんは噂好きで恋バナ好きのマダムで、私と結絃くんもよくからかわれる。


 下衆の勘ぐりなんてもう何回されたかわからないくらいで、そんな彼女の目の前で、結絃くんが一人で、それも女性服を眺めているなんて……もはや〝いい餌〟でしかない。


「なんか……ちょうど今、大口の注文が終わって余裕があって、素材もあるからって、店主さんがレイラの服だけなら無料でいいって言い出してな」

「そ、そうなんだ……」


 ありありと目に浮かぶ。ニヤニヤと笑いながら、「好きな子にあげるなら張り切らないとねっ!」なんて言って、本当に代金をとらずに結絃くんに服を押し付ける、あの店主さんの姿が。


 ……そういえば、一度店主さんに無理やり採寸をされたことがあった。子供たちの服を買いに行った時に、カティアさんまで一緒になって勧めてくるから、それで断りきれずに。


 結絃くんの採寸もしたので、たぶん彼用の服も作ろうと思えば作れるはずだ。


 ……なんというか、準備のいいお節介である。


「レイラも申し訳なく思うだろうからって、断ろうとしたんだが……すまん。今日、完成したからって押し付けられた」


 これは仕方がない話だ。結絃くんは押しに弱いところがあるし、あの店主さんの押しの強さは異常なのである。私でもきっと押し切られる。


「そ、そっか……な、なんかごめんね?」

「いや、気にするな。せっかくだからもらってくれ。俺も中は見てないから、着てる姿が見てみたいし」

「っ……」


 結絃くんの不意打ちに、私は固まった。


 さも、思ったことをそのまま言っただけのような態度で、結絃くんは照れもなくそんなことを言う。


 私がこれを着ている姿が見たいなんて、ただの殺し文句だ。結絃くんは時々口が上手い。心臓に悪いので勘弁してほしい。


「う、うん……そ、その内ね」

「ああ」


 それなら袋はここでは開けない方がいい、と結論し、私は傍らにそれを置いて話を締めくくる。結絃くんが頷いて、話はいよいよ〝大事な話〟へ。


 ――結絃くんは、真剣な表情で切り出した。


「……それで、大事な話、ってやつなんだけどな」

「っ、うん」


 ……ああ、なにを話されるんだろう。


 同居していく上でああいうアクシデントは珍しくないから、いっそ起こりえないようにどちらかが離れて暮らそう、とか?


 それとも、これまでよりも輪をかけて気をつけて、私が結絃くんへ近づかないようにすることを提案されるだろうか?


 現状維持……なんて、そんな甘い話はない。その現状で、ああして問題が起きたのだ。なにかしらの改善は必要で、それはきっと……。


「結論から言うぞ」


 ズバリと、結絃くんは語気を強めた。凄むようなものでなく、ただキッパリと断言するかのように。


 私にその言葉を、誤解なく届けたいと願うように。


 聞き間違いなど許さないと、きちんと伝えられるようにと。


 結絃くんは、満を持して口を開いて――


「――喜多川レイラさん、あなたのことが好きです。俺と、結婚を前提に、お付き合いしてください」


 ――私の心に溢れた言葉は、ただひたすら、「なんで」だった。


「………な、んで……」

「…………」

「なん、で……?」


 口からも言葉が溢れて、私の顔はクシャクシャに歪められた。視界も同じように歪んで、私は自身の瞳に涙が溜まっていることに気がつく。


「っ、なんで……なんで、そんなこと言うの……? ダメだよ……そんなことしたら、結絃くんが……」


 勝手に口が動いて、なにかを喋った。告げた言葉は、ただただ溢れたもの。


 たぶん、偽りのない私の本心。


 ――結絃くんは、静かにその言葉を受け止める。


「……うん」

「結絃、くん、私のこと、怖いでしょ……? なら、そういうこと、言ったらダメだよ……っ! わたし……わたし、また、ゆづるくんに……ひどい、ことっ……」

「………うん、そうかもな」

「ひっ……」


 結絃くんにそれを認められて、私は引きつったような悲鳴を漏らした。お前のしていることは酷いことなんだと、そう糾弾された気分だった。


 涙で霞む視界で、結絃くんの表情はわからない。


 ……結絃くんの声は、とても落ち着いている、静かで透明なものだった。


「……まずは、ごめん。俺はまだ、レイラのことが怖い。今も正直、ちょっと辛い」

「っ、う……な、ならっ……!」


 自棄になって、私は言葉を繰り返そうとした。


 それなら、やっぱり私を突き放すべきなんじゃないのかと。「好き」だなんて、そんなことを言ってはいけないと。


「でも、それでも好きなんだ」

「……、え――?」


 なのに、結絃くんは言う。語気を強めた、先ほどの声と同じように。


 ――凄むようなものでなく、ただキッパリと断言するかのように。


 私にその言葉を、誤解なく届けたいと願うように。


 聞き間違いなど許さないと、きちんと伝えられるようにと。


「それでも好きだ、レイラ。……好きなんだ」


 理屈なんてない、愚直に愛を口にするだけの、ともすれば無様にも見える結絃くんの言葉。


 ――だからこそ、本気なのだというのが伝わってきた。


 本気で、彼は私を好きなんだと言う。怖いと感じているのに、辛いと言っているのに、それでも好きだと。


 ――怖かった。


 結絃くんに「好きだ」と言われることが――否。それを信じて私が近づけば、また結絃くんを傷つけてしまうかもしれないということが、なによりも怖い。


 ……もう、嫌なのだ。


 結絃くんのあんな顔なんて見たくない、結絃くんのあんな声なんて聞きたくない。


 結絃くんの怯えきった表情が、声が、態度が、仕草が――私に向けられるのが、死よりもなお恐ろしい。


「……っ、ぁ……ぅ」


 ――けれど、「嫌だ」と言うことさえ、私は怖かった。


 結絃くんを傷つけてしまうことが怖い。嫌われてしまうことが怖い。


 結絃くんにあんな反応をされることが一番怖いのだから、当然私の選ぶ行動は全て逆効果だ。


 ――でも、私だって。


 それでも、結絃くんのことが好きだから。


「…………」


 ――私も好きだと返すことも、嫌だと内心を明かすことも、結絃くんのためを思って突っぱねることも。


 なにもかも、私は選べない。


「……レイラ、ごめん」


 急に、結絃くんが謝ってきた。


 なんのことかわからずに、思わず顔を上げて結絃くんを見てしまう。俯いたことで涙が零れきって、視界は多少マシになっていた。


 ……結絃くんは、悲痛な顔をしていた。


「いろいろ、ごめんな。レイラをまだ怖がってることとか、間違えたこととか」

「え……? まち、がえた?」

「ああ」


 純粋に、結絃くんの言葉の意味がわからなくて、私は問い返した。結絃くんは頷いて、言葉の真意を話す。


「ジルダたちに街を歩いてこいって言われて、噴水広場に行った日があっただろ?」


 コクンと頷いて相槌を打つ。


「あの日、俺が手を繋がせてほしいって言ったのは、俺の女嫌いの克服のつもりだった。本気でレイラが好きだから、レイラなら大丈夫だと思ったんだ」


 ……コクン。私はまた頷く。


「あれは俺が間違ってた。ごめん」


 それこそが謝りたいことなのだと、結絃くんは今一度謝罪を繰り返す。


「たぶん、慌ててたんだ。俺がレイラを怖がってるから、レイラも遠慮してるんだろ? それを早くどうにかしたくて、急いでた。……だから、無理な手段を選んだ。レイラも嫌だったよな」

「そ、そんなっ、私は嫌なんかじゃ……!」


 決して嫌だったんじゃないと、私は否定しようとした。結絃くんは苦笑して、「ありがとう」と言う。


「でも、傷ついただろ? だからごめん。俺の選んだ方法が悪かったせいで、レイラを傷つけた」

「ぁ……」


 ――謝りたいことは、そういうこと。


 そりゃそうだ。結絃くんだって、人の顔色を伺うことができる。手を繋がせてほしいという提案の一件で私がなにを思ったかを、結絃くんだってある程度察せられるのだ。


 ――あの時私が傷ついたことを、彼は自分のせいだと言うのだ。


「…………」


 否定材料が見つからず、私は沈黙を選ぶ。


 ……なら、どうしようと言うのだろう。


 あの時は結絃くんが悪かったとして、結絃くんのとった手段が間違っていたとして。


 じゃあどうしようと言うんだろう。問題はなにも解決していない。


 結絃くんが女性恐怖症なことも、私がその対象になっていることも、私がまたいつやらかしてしまうかがわからないことも――


「だから、やり方を変えたい」


 ……やり方を、変える?


「レイラと触れ合えるようになるのは……ごめん、まだ先だ。けど諦めない。だからやり方を変える。まずは、一緒にいる時間を増やしてみたい」


 「一緒にいればいるほど、レイラに慣れていくから」と、結絃くんは補足した。


 ……なるほど、確かにその方法ならいいかもしれない。いきなり触れ合うことから始めるのではなく、段階を戻して、まずは一緒にいる時間を増やすことから、と。


 方法そのものは一理ある。


 ――でもそれは、


 私が結絃くんに対してなにも失敗しないという前提があって、初めて成り立つ話だ。


 そんなもの、到底認められない。


「…………」


 私は首を振る。結絃くんは、静かに「……どうしてだ?」と問いかけてきた。


「……私が、また、失敗するから」

「…………」

「……きっと、またやっちゃうから。また、結絃くんを傷つけるから。……だから、ダメ」


 ――それは、まるで自傷だった。


 トラウマにさえなるほどの、結絃くんからの拒絶。それがまた起こり得るからと、そんなことをこの口から言うのは、私に耐え難い痛みをもたらした。


 まるで、心を自ら引き裂くみたいだ。柔らかい肉の裂け目に指を突っ込んで、力任せに傷を広げるように。


 痛くて痛くて、堪らない。


「――それでもいい」


 ――その時結絃くんから告げられた言葉に、私はなにを思ったのだろうか。


 一瞬、自分でもわからなかった。


 ――でも、痛みが楽になったような気がした。


「……え……ゆづる、くん……?」

「それでもいいんだ、レイラ。俺は傷ついてもいい。その時は怖がっても、絶対引きずらない。怒ったりもしない。――嫌いにもならない」

「え……」


 それは間違いなく、救いの言葉だった。


 こうなってしまうからという恐れに、それでもいいと肯定してもらえるのは、こんなにも救われる。


 こんなにも、気が楽になる――


 ………でも、まだ足りない。


 まだ、わからないことがある。


「なんで、なの……?」


 ――なぜ、彼はそんなことが言えるんだろうか?


 だって怖いはずだ。今の私みたいに、彼だって痛いはずだ。


 自らの傷を己の手で引き裂く、この耐え難い痛みを。結絃くんだって、今もなお感じているはずだ。


 ……今でも思い出せる、結絃くんのあの怯えた顔。あんな表情を見せるくらい、追い詰められるくせに。


 どうして、君はそんな――


「好きだからだ」


 ――脳内に差し込まれる、その声。


 有無を言わさず、思考の中心に放り込まれるそれは、なんだか、


 太陽の、光のような――


「好きなんだ、レイラのことが。だから、君にならされてもいい。レイラにだったら、傷つけられてもいい。全部、好きだから許せる」


 ……あぁ、私の負けだ。


 完璧だ。その口説き文句は、今の私には効きすぎる。


 好きな人になら、傷つけられてもいい。好きだから、全部許せる。


 ――理屈なんてない、愚直に愛を口にするだけ。


 でもだからこそ、それは全てに通じる魔法の言葉たりえる。


 ――私だって、結絃くんになら傷つけられてもいい。


 そういうことなら、お互い様だ。


 お互いに傷つけあって、それでも好きだと思い続けて、いつかは傷つかなくなるだけの信頼を積み重ねて。


 そうすれば、万事解決だ。


 ――ああ。本当に、私の負けだ。


「……うん」


 最後に、もう一度言葉で欲しかった。


 魔法の言葉ならもらったから、そこから導き出された輝く答えが、もう一度。


 ――それを、結絃くんは汲み取ってくれる。


「レイラ、君のことが好きだ。俺と恋人になるっていうの、考えてみてくれないか?」


 ……もうとっくに運命共同体で、同居もしているのに。


 控えめな物言いになるのは、怖気付いたみたいに見えちゃう。


 問答無用で「俺の嫁になれ」とか、今なら許してあげたのだけれど。


 ――まあでも、結絃くんらしい。そういう君が、堪らなく大好きだよ。


「――はい。私も、結絃くんのことが好きです。こんな私だけど、末永く、よろしくお願いします」

これにて一応のひと段落です。後日談に関しては、ここからゆっくり仲良くなっていくところを書けたらいいなと思っています。

次回からはifルートとなります。こちらは予想以上にネタが湧きまくったので、ものすごく長いです。もしよろしければ読んでみてください。

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