変な夢を見ているようだ
閲覧ありがとうございます。
さて、また聖女ものでございます。
どのくらいの長さになるか全く予想がついておりませんがどうぞよろしくおねがいいいたします。
「ああー!!あンのクソ上司!!」
ボフン、と黒髪の長い一人の女がベッドに倒れ込む。
今日も一日仕事が終わり一人さびしく家に帰ってきて早々着替えもせず力尽きる。
あのくそハゲ上司、最近は言ってきたカワイイ若い子にいい顔したいからってお局みたいに扱われている私に仕事を押し付けられ、もう日は変わり、外はどっぷりと暗闇につかり静かだ。
ああ、眠い。まだお風呂も化粧も夕飯も何もまだなのに……。
瞼がが重い、体が鉛のようだ、朝早く起きてお風呂とご飯を食べればいいか……。
深い深い眠りに吸い込まれるように落ちていった。
「んんんっ」
なんかまぶしい。おかしいな、カーテン閉めたはずなのに。というかどうしてこんなにまぶしいの。少し暖かい陽気になってきたとはいえ、まだ暗い時間のはずだ。
というか、目覚ましなった_
ゆっくりと目を開けると、知らない天井がある。というか、岩だ。
「!?」
体を起こし、周りを見渡す。知らない風景、家ではない。これは洞窟のような場所だ。
ふかふかの毛皮のようなものが下に敷いてある。
洞窟の入り口からはまぶしいほどの光が差し込んできている。
自分の着ている服は不思議な肌触り、そして自分にはもう失われたはずのピチピチとした腕がある。
私は今年で42歳、おかしい。もっと皴が多かったはずだ。仕事がいそがしいと理由をつけろくに手入れもせず、年齢イコール彼氏なし、さびしい女だった。
そして、頭から流れるように艶やかな髪がとても長い。腰ぐらいの長さだったはずが、立っても地面についてしまいそうな長さだ。
ゆっくりと体を起こし、出口に向かって歩く。
自分の部屋ではないのならば、誘拐、とも思えたが40過ぎたおばさんをさらうようなもの好きもいるようには思えない。
髪の長さも、10代のようにピチピチの肌、自分の体の変化が大きすぎて、これは夢ではないか、と思い夢ならば好きにしても大丈夫だろうと思い切って外に出る。
外は美しい木々や花が咲いている。
「わあ、きれい」
ここは日本なのだろうか。もしかして外国の風景なのだろうか。
少し散策すると数件の木造の家がある。
バンガローのようなキャンプ場であるようなこじんまりとした家がある。
誰かいるのだろうか。夢の世界だから、自分の好みのイケメンでも出てくるかな?と笑いながらドアをノックする。
中は静かだが、手入れされているのかどの家もきれいだ。
少したち中から剣を構えて持った金色の髪、エメラルドのような美しい瞳、耳がとがった美しい青年が出てきた。
少年は目がこれでもか!というほど見開いている。
「サキ様?」
手に持っている剣をぼとりと落としている。何をそんなにびっくりしているのだろう。
というか、私の名前知ってるんだね。まあ、自分の夢の中だから知らないわけないか。
その場でひざまずき右手をそっと握り口づけをする。
ひょええええええ!!!
イケメンが!イケメンが私の手の平にキスしてるうううううう!!!
顔が一瞬にして真っ赤になる。と言うか熱い。
あれ、夢なのに熱いとかわかるもんだっけ?
「サキ様?」
心配そうに下から顔を覗き込む。なぜだろう。とても懐かしい気持ちになる。けれど目の前にいるイケメンが一体だれなのかわからない。
「あ……あの、貴女は誰?」
そういうとイケメンは目を見開き、驚いた顔をしている。
「サキ様……私めをお忘れになられて……」
とても悲しそうに、今にも泣きそうな顔をしている。
「ご、ごめんなさい。本当にわからないの。」
しょんぼりと俯き、目をごしごしと強くこする。ああ、そんなにこすったらきれいな顔があかくなっちゃう。そんな心配をしながら彼を見る。
「少々、この家の中でおまちください。何もないですが、お好きなところで待っててください。」
手をとり中に入るように促され、イケメン君は外に出て行ってしまった。
家の中はとても質素で、さっきみたいにふかふかな毛皮ではないが下に敷いてある。
一か所だけ、少しだけモフッとしている場所があるのでそこにちょこんと座る。
ふかふかな感触も、イケメン君の香りのようなものすら感じてしまう、これは本当に夢なのだろうか。
古典的だが、顔をつねってみる?そろーと顔に手を近づけようとしたら家のドアが開く。
そこには数名のイケメン達と美女達と老人がいた。
私の顔を見るなり、皆おお、と声を出したり、目頭を押さえたりしている。
私の顔に何かついてるのかな?
先ほどのイケメンが私が座っている場所を見て少しだけ顔を赤らめる。え、ここだめだったのかな??
こてん、と首をかしげているとさらに顔が赤くなっていく。
部屋にぞろぞろと入ってくる人たちは、なぜか人ではないようにも感じる。
頭の上にコスプレのようなもふもふの耳のある人、体の一部が鱗っぽいものでおおわれている人、背中から鳥の羽のようなものが生えている人、個性が半端ない。もしかして今日ここでコスプレイヤーが集まる催しでもあったんでしょうか?
彼らはその場に跪き、顔が床につかんばかりに平伏している。
「あ……あの……??」
老人が口を開く
「サキ様、長きに渡る眠りから覚めたこと、心からお喜び申し上げます。記憶を失われているとはいえ我らは貴女様の忠実な僕、なんなりとお申し付けください。」
えと、この状況は何?僕?記憶?私の記憶と言うか頭はしっかりしているよ?
これは夢だよね?
先ほど中断した頬をつねる、という事をそっとやってみる
!!!!
痛い。痛みがある。おかしい
「サキ様!?」
イケメン君が驚いた顔をしてこちらを見ている。
「わ、私がサキなのは間違いないのですが、違う方と勘違いされているのでは……」
老人、イケメンと美女集団は顔を見合わせ頭を振る。
「記憶が失われていても、体からあふれ出ている魔力は我らの知っているサキ様のものでございます。」
私は知らない。誰一人、知らない。私は偉い人でもない。最近お局は口うるさくていやだわって最近入ってきた若い子たちに言われているが、別にお局でもないし、偉い地位にいるわけでもない私がいきなりこんな扱いっされても正直困惑してしまう。
「サキ様、我らのことは追々説明いたします。ただ言えるのは、我らは人ではありません。我らはサキ様に救われ、貴方様の力で今も守られているのです。なので本当に些細なことでもいいのです。貴方様のお役に立てることが幸せなのです。」
幸せ、と言われてもあれこれしろとか、言えるタイプでもない。
「で、では……服が欲しいです。ひらひらしすぎて動きにくいので……」
「それならば、以前着ていた服が残っております。それを持ってこさせましょう。……ですが、困ったことがあるのですが……」
困ったこと?
「サキ様が寝ていらした場所は魔力だまりと呼ばれるスポットで怪我をした時や意識がなく眠っている間はあの場所が最適なのですが、普通に生活するとなると……」
え、もしかして……
「……家がないのです」
うわあお!野宿パターンですか!まだ自分の状況がうまくつかめていないけれど、まさかの野宿パターンですかね!?
「サキ様のご自宅も早急に作らせますが、1か月ほどかかってしまいます。我らは自分たちの家は自分で作るのですが、数家族が共に一つの家に暮らしているためとても狭く、サキ様がそのような場所で過ごすのもためらわれるのですが……」
ですが!?その後は!?野宿してね!ってことでOKですか!?
「一軒だけ、一人で暮らしている者がいるのです。」
ほうほう、そこなら雨風しのぐことはできそうなんでしょうか?まあ、あの洞窟でもかまいませんが……
「それはどなたでしょう?私が住んでも問題ないのでしょうか?」
イケメン君が顔が真っ赤になり俯く。
あれ?この家他の家より小さいし物も少ない。もしかして……
「この家のケイトの家が最適かと……」
イケメン君、ケイトっていうんだ。じっと顔を見ている目が泳いでいる
「サキ様、貴方様が深い眠りにつく前とてもなついていた者です。眠っている間も時折様子を見に行ったりしていたのです。どうかケイトのことを信用しこの家で貴方様の住処が出来上がるまでお待ちしていただけませんか?ケイトと一緒が無理ならケイトに外で……」
「いえ、ケイトさん?何も覚えていなくてこの世界のことを教えていただけますか?お邪魔にならないようなことはしませんのでよろしくお願いします。」
ぺこり、と頭を下げる。
おじいさん、ケイトさんを外に帆織り出すようなことは言わないであげて。この体の主が私、なのかすらわからないけれど、彼を外で寝泊まりさせるのは申し訳ない。
「せ、誠心誠意お仕えさせていただきます」深々と頭をさげる。だからそんなにかしこまらないでよおおお
一人一人自己紹介をされしばらくして家からぞろぞろと外に出ていく。老人はクリフ、というらしい。クリフさんはケイトさんの肩をぽんぽんと叩いていた。うん、半分くらいしか名前と顔覚えられなかった!!!
二人きりになり、俯いたままのケイトさん。
「あ、あのケイトさん?改めまして、しばらくの間よろしくお願いします。」
「ケイト、とお呼びください。」
「ケイ……ト?」
ばっと顔を上げ満面の笑みでこちらを見る。うっ、そんなキラキラした目で見ないで!おばちゃんにはつらい!
「サキ様、あの、その場所は私の寝床でありまして、その……」
「あっ!ごめんなさい!」
この世界では人の寝床に入るのはご法度なのだろうか?さっそく駄目なことをしてしまったようだ急いで立ち上がる
「いえ!謝られるようなことはないのですが、この世界では家族や病気などでない限り異性の寝床に座ったり寝転ぶことは誘っていると思われてしまうので今後気を付けていただければ……!!!」
おぅ、だから顔が赤かったので。ごめんね。ここが一番おしりに優しそうなやわらかさだったから。
「以後気を付けますね、ケイト……」
はい……と小さな声で答えるケイトの顔はまだ、真っ赤だった。