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第2話/「女の子」の辛さと、分かち合う?仲間

「モスウッド」の町外れに拠点を構えたミツルは、酒場で狩りの仕事を引き受けながら身の回りを固めていった。


まずは着替えと、後衛向けの軽めな戦闘衣服を購入。マザコンは前世でおしゃれなど一切気にしなかったため、今着てるものに似てる物をいくつか購入。

続いて住民登録と、冒険者ギルドへの登録。これにより、難し目だが高額な依頼にも挑める…と酒場のマスターに言われた。とは言え、難しい依頼にはまだ挑んでない。

そしてあばら家である拠点を少しずつ改装。外装を小奇麗にして、調理器具を導入した。ファンタジー世界なのに冷蔵庫があるのには驚いたし、お風呂が家庭に作るものなのもちょっと驚いた。


こうして整え終わったのは、この世界に来てから一ヶ月ちょっと。

週4~5日は酒場に仕事を受けに行くため、自然と仕事探し仲間が出来る。

前の世界ではあまりいい響きじゃなかったが、この世界では結構いい意味なのだ、「仕事探し仲間」って。



「マスター、今日はどんなお仕事がありますか?」

「あいよ…あー、今日はあいにく一人でやる仕事はないな」

「そうですか…」

「あ、ミッツルー!」

「あれ…トゥロさん?」


トゥロと呼ばれた女性は、そんな「仕事探し仲間」の一人。

女性ではあるが筋肉バキバキであり、木こりや建設、犯罪者取り締まりなどの力仕事を主に請け負っている。

ちなみに彼女はミノタウロスと人間のハーフらしく、頭には角が生えている。ついでに胸も…なんというか、牛。


「マースター、今日のお仕事は?」

「…やっぱり一人でやる仕事はないね」

「そーなのかー…」


ちなみに喋り方に少しクセがあり、人の名前に一文字挟んだり、感情が出る時に間延びした感じになる。


「今ある仕事は、最低でも三人で請け負うものばかりだ。あと一人来たら考えよう」

「三人、ですか…」

「アッタシと、ミッツルーと…あの子が来たらなー」

「あの子?」

「アッタシみたいなガサツじゃない…あっ、きたー!」


トゥロが入り口を見ると、急いできたのか衣服が一部よれよれになってる僧侶の姿が。

そんな彼女が急いでカウンター…つまり二人のところまで駆け寄ってきた。


「あ、あの、今日はお仕事ありまふっ…!」

「だ、大丈夫ですか?」

「大丈夫れふ…」

「リーブラー!これで三人だー!」


リーブラー…ではなく、リブラと呼ばれた僧侶の女性はそそっかしいことで仕事探し仲間では有名だった。

頼まれた仕事こそちゃんとこなすのだが、依頼をやってる時に頻繁に噛んだり、あるいは予定よりかなり早い時間に来たり。酷いときには日没と夜明けを間違えたこともあった。

呪文詠唱は一応噛まずに言えるが、トゥロが言うには「舌が切れたー、ってならないよーにー!」らしい。


「一人でやる仕事はないが、三人でやる仕事ならあるよ」

「じゃあ、アッタシ、ミッツルー、リーブラーの3人でやるー!」

「ふぇ?」

「ちなみに、どんなお仕事ですか?」

「この街の南にある洞窟の保全作業だね。洞窟近くにあるラミーヤ村と共同で、洞窟の探索を行ってもらう」

「ダンジョン探索…!?」

「わーくわくー!」

「パ、パーティ結成ですか!?」

「この仕事を受けるならそうなるね」


つまりこの三人と、ラミーヤ村から来る人で南の洞窟に冒険してこいということである。

請け負えば、ミツルにとってはこの世界に来て初のダンジョン探索となる。


「アッタシはさんせー!」

「あの、私も、入っていいですか!?」


トゥロとリブラはノリノリだが…肝心のミツルはと言うと、正直決心できないでいた。

というのもRPGではよくある脱出アイテム、この世界では「脱出の光玉」と呼ばれるものがやたら高いのだ。少なくとも現在の拠点を買った値段より高く、1個買うだけでも依頼3件分ぐらいの報酬が消える。

また、これまで請け負った仕事では、完了しても自分の足で帰らねばならなかった。もし洞窟探索の途中で大ダメージを負ったりしてしまったら…と考えてしまう。


「…ん、どうしたんだい?ミツル嬢」

「あ、えーっと…この仕事を受けたとして、安全に帰れるのかな、って」

「それは私がやりまふっ!?」

「リーブラーが転移魔法リターナーを使えるから大丈夫!」

「そういうことだけど、どうだい?」


転移魔法リターナーというのは、要するに行ったことのある範囲で好きな街に瞬間移動できる魔法である。たとえダンジョンの中だろうと、好きなように戻れる。

つまりその魔法自体が「脱出の光玉」の役目を果たすのだ。魔力が残っていれば、だが。


「…分かりました、やります」

「やったー!!」

「では、依頼書を書こう…少し待ってくれ」

「あの、オレンジジュースをお願いします!」

「アッタシは麦酒!」

「私は…私もオレンジジュースで」

「あいよ」



拠点に帰ってから、ミツルは依頼書を読み直す…のだが、下腹部に謎の痛みが広がりだした。

その痛みはどんどん強くなる。正体不明の痛みが、ミツルを襲う。


「くっ…痛い、痛い…痛い…!!」


新調した簡素なベッドの上で痛みに悶えるミツル。胸が邪魔でうつ伏せに慣れず、仰向けの状態から左右に転がる。


「なんだよ…なんで、なんで…ぐっ…」


前世ですら感じたことのない、絶望的な痛み。その正体が掴めず、不安に押しつぶされる。


「あぐっ…はぁっ…はぁっ…!」


必死に身体を丸めて抑え込む。わずかに楽になったが、それでも事態は根本的には解決しない。そんな時、彼に救いの手が現れた。


「失礼しま…ミツルさん!?」

「だっ…だれ…っ!?」

「リブラです!何がありまひっ…!」

「お腹が…お腹が、痛い…!」

「お腹…失礼します!」


突然訪問してきたリブラが毛布をめくり上げる。

すると、ベッドのシーツの一部が赤く染まっていた。


「これは…睡眠魔法スリーピング!」

「えっ、なん…で………」

「…結構、重たい方なんでs」


そこでミツルの意識が途切れた。



次に目が覚めたのは日が昇り出し始めたころ。

眠りに落ちる前から嘘のようにスッキリしていた。


「う…んー…朝、か…」


ミツルは不安そうに下腹部に触れるが、痛みはほとんど感じない。


「なんだったんだあれ…それにリブラさんは、何をしに…」


分からないことだらけのミツルが朝食のために台所に行くと、そこには料理中のリブラとトゥロの姿が。


「あれ、リブラさん…それにトゥロさんも…」

「あぁ、無理せず横になっててください!料理はお持ちします!」

「そーそー!ほら、よっと!」


ミツルはトゥロに抱きかかえられ、ベッドに逆戻り。

いくら女になったとは言え、目の前にデカイ胸があると流石にちょっと興奮してしまうマザコンであった。


逆戻りにされて間もなく、リブラがおかゆっぽい食べ物を持ってやってきた。

おかゆ「っぽい」というのは、まだこの世界でお米を確認できてないから。ただし麦は確認されており、このおかゆっぽい食べ物も麦で作られたようだ。


「身体は大丈夫ですか?」

「はい…昨日が嘘のように、楽になりました」

「よかったー!!」

「でも、あの痛みの正体が、分からなくて…」

「あの痛みは、いわゆる「女の子の痛み」ですよ!」

「女の子の…痛み…?」


女の子の痛み…その言葉を聞いてもまだ意味がわからないミツル。

その横で、トゥロがウンウンとうなずいていた。


「ミツルさんの痛みは…その、かなり重い方になります」

「毎月来るから、辛いなー…」

「毎月…あれが、毎月…」


ミツルは絶望した。こんな痛みが毎月来るとか拷問もいいところである。

同時に、母ちゃんもこんな辛い痛みと戦ってたのかな…と探し求める母ちゃんを思い浮かべるのであった。


「それで、これ…薬草から作った、痛み止めです」

「ありがとう…あ、粉薬だ…」

「包み紙も、そのまま飲んで大丈夫ですから!」

「えっ、そんなのあるんだ…じゃない、ですか」

「おかげで飲みやすいんだー」

「でも、本当に痛くなったときにだけ、飲んでください…今は、大丈夫ですよね?」

「今は…はい、大丈夫です」


痛み止めをサイドテーブルに置き、麦のおかゆ風をひとすすり。

牛乳で煮込まれたそれは、なんだか優しい味がした。


「お仕事は、何時からだっけ…」

「お昼過ぎだから、もう少しあんせーにねー!」

今作品ですが、スレ第1部である本編に加えて、未完のスレ第2部の内容も内包してます。

第2部の内容に関しては、作品中でやんわり説明できればな、と。第2部そのものを書き直すにしても、ちょっとアレな要素・描写が多すぎるのでノクターン行きです。

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