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序章/絶望の果て

氏名 夏宮なつみや 道隆みちたか

性別 男


死亡したところ 自宅


死亡の原因

(ア)栄養失調、及び脱水症状

(イ)一切の食事・水分補給を行わなかったため

(ウ)母親が死亡したことによる精神的憔悴

(エ)母親は乗用車との多重交通事故により、出血多量・臓器破裂等で即死


死因の種類 自殺


以上の通り診察する。



ある男がこの世を去った。

その男は周辺住民から結構なマザコンと知られており、それなりの頻度で母親とお出かけ、または食事に行ってる姿が見られた。

だが、その母親が交通事故により死んでしまった後は、一切外に出ることなく…そして、餓死してしまった。

母親が死んだ直後はその母親を悼んで結構な人が来たものの、男が死んだときには誰も、何もやってくれなかった。

警察を始めとした行政も必要最低限しか行わず、亡骸も縁者が全くいないことから、無縁仏として埋葬された。




男は、この世界から忘れ去られたのだ。





男が気づいた時、周りは闇そのものであった。

夜闇なんて生ぬるいものでなく、もはや自分という存在すらあやふやになりかねない闇。

手足の感触もない。これは死ぬ前々日ぐらいからそうだったのだが…


「目覚めましたか、哀れな魂よ」


唐突に響く女性の声…だが、男は反応しない。


「哀れな魂よ、目覚めたことは分かってるのですよ」


女性がもう一度声をかけるも、やはり反応しない。


「…ふんっ!」


突如周囲が白く染まる。だが光と言うにはあまりにも眩しすぎ、先ほどが「一面の黒」ならば今度は「一面の白」である。


「うっ…」

「話をする気になりましたか、哀れな魂よ」


三度目である。ここでようやく、男は声の方向に意識を向けた。


「哀れな魂よ、あなたは絶望の果てに死にました。その絶望が、愛した母親の命を奪われたことに端を発したことも知ってます」

「なら…ほっといて、くれ…もう、用は、無い…」

「…本当に、全てを諦めたのですね」

「ああ…」


男にとって、母親は全てであった。母親がいて、母親と平穏な暮らしが出来るからこそ、日々の活力が生まれる。そんな男なのだ。

つまり、母親亡き世界は彼にとって無であった。「母親のため」が通用しなくなった世界は、彼にとって無味乾燥だった。

それを知ってか知らずか、女性の声が語りかける。


「…あなたの母親も、あなたを遺して死んでしまったことを悔やんでいました」

「………」

「そして…私に、あなたの話を色々してくれましたよ」

「…!!」


男の意識が強まる。


「お前は…俺の、母ちゃんを…!」

「ええ。そして話の最後に、あなたが早々に死に、ここに来てしまった時にやって欲しい、ということを頼まれました」

「何を…!」

「…あなたは、「異世界転生」という言葉を知ってますか?」


異世界転生。

男はいわゆるオタクであったが、異世界転生というものはほとんど知らず、巷の評判でのみ知るに留まっていた。


「…よく、分からん…」

「簡単に説明すると、あなたが生きてた世界とはまた別の世界で、文字通り第二の人生を送ることです」

「………」


男の意識が明らかに弱まっていく。


「…あなたの母親も、その異世界転生を行いました」

「えっ!?」

「そして、あなたの母親に頼まれたことは…」


驚愕で固まった意識が、何かの力で弾け飛ぶ。

男は自分の正体を失い、そして、次に目覚めた時は


「…母ちゃん!…な、なんだここ…」


町の近くの草原であった。しかも男の身体には重大な異変が起きていた。


「声が高く…うわ…うわっ、無い、無い…!これじゃ俺は…!」


―――女じゃないか!!

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