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偽りの王称  作者: 大空界斗
第九部 勝者たち
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第四話 始まり

 それは突然やってきた。悲鳴と共にそこに現れたのは、空襲の跡だった。アメリカとヨーロッパ連合は一時休戦、同盟を組んで改進軍に挑んできた。…正確には、改進軍に潜むテロ組織に。

「ぃよし。罠にはまった。静寂、出兵冷を出せ‼」

「だが、うちに軍はいない‼」

「何いってる?改進”軍”は軍隊だろ?それに、ここの団員は皆非公式だ。元をたどってもお前らの組織にしかたどり着かない仕組みだぜ?こき使ってやれ。」

「お、お前…。」

静寂は拳銃を取り出した。彼の手には、S&W-MPがあった。

「ここで貴様を処刑する。今までの罪を考えれば、死刑に値しても文句ないだろう。」

「いいだろう、殺すがいい。ここの付近の住民は予め避難させていた。ここで俺を殺せば、改進軍は負ける。この軍には俺の息がかかったやつが多い。兵の士気低下はもっとも危うい問題だ。俺が死んだら、俺が作った隊の士気も下がる。…後は解るな?」

俺は静寂を睨みつけた。

「和夜の二の舞はするなよ?」

「…。チッ!」

静寂は舌打ちの後、ゆっくりと手を下ろした。

「お前そんなに度胸無の無覚悟だったのか…。いいだろう、ついてこい。」

「へ?」

歩いて出口へ向かう俺を尻目に、へんな音を上げる静寂。

「静寂、お前に言っているんだ。付いて来い。」

「わ、解った。指示はいいのか?」

「国体制ほどの大きな問題ならさほど時間は気にならない。馬鹿でかい隕石が地球を飲み込む時みたいに、デカい物ほど動きはゆっくり見えるものだ。例えそれが速くともな。」

そして外の様子を二人で観察した。目の前は日の海だった。

「…先にロケット弾を装填しておいて正解だったな。今となっては、連射は不可能の打撃。」

「…地獄か…何だ、コレ。お前のせいでこうなったのか?」

俺は静寂の顔を見た。

「ったく、覚悟の無い奴が戦場にくるといつもコレだ。どいつもこいつも、げじげじを鼻に突っ込まれたような顔して呆然として…。時間が惜しい時でもな。」

「そういうものなのか…?」

「ああ、そうさ。こいつは俺がやったわけじゃない。だが、原因は確かに俺の挑発だ。」

「ちょ、挑発だと⁈」

「ああ、戦時の外交は難を極める。時に挑発は必要だ。これが地獄に見えたか?少なくとも、信事はこの光景を見て、別の感情を口にしたぞ。」

「信事が…?」

「ああ。あの野郎、空襲後を見て、“殺したい”とな。」

「殺したい…。」

「とは言え、当時の日本の軍事力はお前も知っての通り。たまたま信事の家に焼夷弾が的中しただけだ。当時は誰も、明日自分が死ぬなんて考えてない。それは今も変わらないが、昔の信事は違かった。疎開していることを踏まえて、自分たちも危険であることを突き止めたらしい。夜も眠れないほど魘されていたと本人から聞く。死の覚悟もできている最中自らの近しい人間が、自ら愛し、自らを愛してくれた二人の親が死んでしまい、彼は復讐を誓った。この戦争そのものにな。だが結局、彼は殺人鬼に成りきれなかった。彼がこっちに戻ってきた時、俺は初めに彼の何を感じたか、お前に解るか?」

「…解らん。」

「殺気だ。和夜が出していた殺気とかなり似通っていた感覚だった。だからすぐに解った。信事は、コイツは殺人鬼として戻ってきたんだってね。だが彼は、今も殺人鬼である己に恐怖し、己の力を掌握しきれていない。ましてや、己の力に苦しみ、魘されている。」

「何が言いたいんだ、内容が掴めないが…。」

「そういう奴は何人かいる。そいつらに共通していることがある。」

「それは…?」

「己が犯した罪…人殺しを一度受け入れ、その後また否定した奴らだ。そしてもう一つ…。」

俺たちは熱気を感じた。燃えているのはこの基地の周りにある木々…それと、落下している焼夷弾の破片だった。この指令室は屋上に被弾したため内部は無事だった。

「もう一つ…改進軍歴代の先導者は、みんなそれに気付いた者だってことだ。お前はこの光景を見て、地獄と言ったな。お前がここでちんたらして、この作戦も蔑ろにしてしまったら、この戦争、この空襲が何度も繰り返されることになる。いいか、よく考えろ。一人の罪人を殺すか、殺さないで見放し、幾億の命を危険に曝すか…。選べ。」

「選べない‼」

「あぁ、答えなんてない。だが俺たちは戦争や政府が憎い。だから選ばざるを得なかった。」

「どっちを選んだ?」

「一殺多生を…だ。」

静寂は目を大きく見開いた。

「これが人殺しと名付けられ罵られた俺たちの答えだ。」

まだ静寂は唖然としている。

「まだ受け入れられない、と言った感じか?まぁ、無理もない。だが、これが戦場の事実ってことを、よく覚えておけ。」

俺は一足先に、指令室へ戻ろうとした。

「待ってくれ。…どうか、許してほしい。」

「何をだ?」

「何を、とは言わない。答えは無いからな。」

「それじゃ謝罪にならない。」

「なるさ。覚悟を決めるから、許してくれ。」

「ほう。じゃ、今の謝罪、何にするのか。答えをどうぞ。」

「俺がこの地位にいることにだ‼」

「ならば抗ってみろ!指導者として――おっと、先導者として、世界情勢に抗ってみろ‼」

「やってやるさ。世界中のクズ共…。やらないで死ぬよりやって死んでやる。」

そう言って二人、決意の表情で指令室に戻った。

 静寂はすぐに指示を出した。

「平和団超遠距離索敵部隊に次ぐ。目標、ホワイトハウスに五発撃ち込め‼」

「改進軍は今、掠矢が面倒を見ている。掠矢の苦労を朗報で笑わしてやれ‼」

紅葉は全平和団に聞こえるように呟いた。無線機の電源は入ったままだった。

「反撃開始だ。」


「新型ミサイルだって?聞いてないぞ。」

『ああ、悪いな、枯葉。お前に言うのを忘れていた。今、この基地からホワイトハウスに五発撃ち込んだところだ。』

「紅葉、打ち込むならせめて報告を頂戴な。」

『悪い悪い、急ぎだったんでな。』

「んで、そのミサイルとは?」

『特殊な周波数の妨害電波を発していてな、ソナーや探知機で探知出来ないんだ。』

「ほうほう。」

『リニア技術で燃料もいらない。遠距離ミサイルだから探知されにくい。』

「欠点は?」

『一つだけある。リニア技術の縮小化は難しく、馬鹿でかい砲台を操らなければならない。』

「問題外だな。」

『まぁな。あともう一つ。』

「二つかよ。」

『これは例外の話だ。』

「例外…?」

『核にすり替えたら、とんでもねぇ兵器になる。』

「この作戦の後、解体しよう。」

『勿論、いざとなったらいつでも破壊できるよう、すでにC4仕掛け済みだ。』

「流石、仕事が早いぜぇ。」

『まっかしときぃ。冗談でも核が装填されたら、一瞬でレールがドカンだ。』

「その場で爆発するんじゃ…。」

『残念ながら、さっきも言った通り、リニア技術の縮小化に失敗したんで、当然弾頭の壁も分厚い。ってこともあって、レール無の砲台の高さから落ちても、当然。不発弾だ。』

「まぁせいぜい、撃つ弾を間違えんなよ。」

『まぁ、核を撃ったら撃ったで、切り札が使えなくなるからな。心配すんな。』

「じゃ、そっちは任せた。ヨーロッパ諸国は依然動き無。一発かますならアメリカからで問題なさそうだ。」

『了解。んじゃちっと、アメリカボコしてくるよ。』

「ほどほどにな。」

『んじゃ。』

俺は偵察隊に顔を向けた。

「お前ら、くれぐれもふざけて巨大国家を滅するんじゃないぞ。」

「誰がそんなこと出来るものですか⁈」

部下に怒られてしまったぜ。

 信事は沙羅と華林に告げた。

「多分これから、最も恐ろしい戦争が起こる。最悪ここから避難するんだ。いいな?」

「だめよ。」

「はい?何言ってんの沙羅。」

「あんたがここにいる限り私もここにいる。いい?あんたが死ぬなら私も死ぬから‼」

「ヤンデレか‼サラっと怖い事言うなよ。このタイミングで無理心中のお誘いとか、サイコパスかい?君は。」

「誰がサイコパスじゃい。私はそれくらいの覚悟でいるの。信事、私にまで建前と高が知れてる根性無を見せるのは止めなさい。格好悪いよ?」

「生憎と、戦場でお洒落はしないタイプなんだ。どっちかって言うと、全身迷彩タイプ。」

「知ってるわよ、そんな事…。」

拳を震わせて沙羅が言った。

「冗談言ってるとこの可愛い拳の皮をあんたの為に剥がすことになるから。」

「可愛いのは認めるが自分で言うことじゃないぜ。あとそれ、日本語で殴るって言うんだ。」

「いい加減にしろ‼」

「了解。じゃ、ここにいてくれ。死なない事を約束してくれたらの話だけど。」

「あら、それは不要よ?五年前に信事自ら、守ってくれるって言ったじゃない?」

「…おっしゃる通り。…解ったよ、全力でお前の事、守るから。安心してくれ。」

「よろし。頼りにしてるわ!」

「んで、華林は…っと、寝てる。まぁ、紅葉のことだから心配はないんだろうが。」

「いつから華林の相手は紅葉になったの?」

「流れとノリだ。」

「そんなんでいいのか平和団。」

「今更だろ。」

信事は紅葉たちのいる、総司令官の席に向かった。

「戦況は?」

「十分後にミサイルがホワイトハウスに着弾する。」

「案外早いな。」

「ミサイル発射は物理落下に近い原理で作られているから、かなり速いスピードだ。」

「なるほど。そんで紅葉、どう口説いた?」

「は?」

「静寂を味方につけたんだろ?どう口説いた?」

「聞いたんだよ。お前は他人の為に人を殺せるか?とな。」

「死刑執行に似た論理か。」

「そう。」

「お前も気付けたな。」

「時間はかかった。以前、お前が枯葉に言った言葉の意味がようやく解ってきたよ。」

「聞いたのか?」

「まぁな。俺も少しは解っていた。まぁ、枯葉の件で確定したからな。」

「ほう…。お前にも質問したほうがよかったかな?」

「いや、そもそも和夜に同じようなことを教えられた気がする。」

「そうか…。和夜は最後まで仕事をやり遂げたんだな。」

「ああ。もう、三年も前になるのか…。」

「俺はもう、六年は会ってない。…懐かしいな。」

感傷に浸っている暇はない。アメリカ大統領からのメッセージが届いた。

「今すぐ攻撃を中止せよ、さもなくば、我々も反撃。復讐をする!」

紅葉は言った。大統領のメッセージは一方通行の為、紅葉の言葉は大統領の耳には届かない。

「出来るか?俺たちの軍事力を甘く見ているようだな。」

信事が紅葉に合わせてこう言った。

「そうみたいだな。舐めやがって。」

「ヨーロッパが無反応だってことは…。アメリカを先に落として、軍事力を奪うか。」

紅葉はそう言葉を残し、大統領にメッセージを送った。

「これは先ほどの空襲に対する制裁だ。重く受け止めろ。」

十分後、ミサイルはホワイトハウスを粉砕した。そして、紅葉は指示を出す。

「平和団精鋭部隊に告ぐ。枯葉と合流し、共に偵察を続行しろ。」

 ミサイル攻撃から翌日。枯葉は平和団に報告をした。

「攻撃隊だ。ロシアの陸軍が大量の戦車と歩兵を連れて、ロシア国境に迫っている。」

紅葉は答えた。

『…残党。国境を超し次第、攻撃しろ。こちらはヨーロッパ諸国に攻撃中止の警告をする。』

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