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偽りの王称  作者: 大空界斗
第九部 勝者たち
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第一話 世界大戦

 沙羅、華林を救い、テロ組織を無力化してから早一年が経ち、気温が高く夏を感じさせる七月に、それは完成した。信事の計画は、枯葉によって実行され、旧ロシア領の西武の都市、モスクワに設置された軍事基地は、世界中に混乱の嵐を発生させた。信事は世界にこう訴えかけるためにこの装置を作ったのだ。改進軍は、新たな軍備施設を設置できる財力ともう一つ、”核”を持っていると。信事の思惑通り、混乱の最中核の放棄を世界に訴えかけた。信事の代役として、紅葉はインターネットを通じて世界中にこう訴えた。

「全ての国が核を解体しないのならば、最悪、核を行使して強制させる。」

世界中は核戦争を危惧した。信事が本当に核を使うと思い込み、どの国も改進軍を重要敵対国と見なす風潮が広がった。

 改進軍本部、つまり日本の首都、東京、上野にあるベッドタウンの一角、ここ数年で建てられた団地を拝借した兵舎の最上階、信事は自分の部屋に紅葉を招き、相談をしていた。

「全てはお前の思惑通りか。」

「そうだ。だがまだ来ない。」

「宣戦布告が?」

「ああ。」

「来たらどうする?」

「改進軍は戦わない意志を表し、平和団がテロ組織を名乗って宣戦布告する。」

「全面戦争になるぞ⁈」

「…お前、平和団の強さに自覚しているのか。」

「そりゃお前、誰が育てた部隊だと思ってるんだ。」

「悪かった。お前は戦闘に特別だった。だが、それが狙いだ。」

「狙い?」

「ヨーロッパ連合とアメリカを落とす。平和団が例の軍事基地を占拠する。」

「その動きで平和団が改進軍と関係のないように見せるってか。」

「その通りだ。」

「その後はどうする。」

「アメリカとヨーロッパの軍事力を後ろ盾にして、その他の諸国を抑える。」

「どれだけの国を植民地化するんだ?」

「植民地じゃない。“自国領地化”だ。」

「我が物にしようってか。」

「そうだ。百九十カ国は手に入れたい。」

「地球全土じゃねぇか。まぁアメリカとヨーロッパを押さえたら勝手に介入してくるだろうがな。」

「そう願いたい。」

紅葉は一口、缶に入ったエナジードリンクを飲んだ。

「お前も飲め。」

そう言って、同じエナジードリンクの新品もう一本を信事に差し出す。

「ありがとな。」

そう言って信事はエナジードリンクを一口飲んだ。

「そういやお前、また銃をそろえたのか。」

「部屋のか?」

「ああ。てっきり、朝鮮支部が焼かれてそれきりかと…。」

「あの部屋は特別性、防弾防水防火防熱防音耐震対策がなされている。」

「んな⁈」

「そう簡単に壊れねぇよ。俺は焼け跡となったその部屋からコレクションを運んだだけ。」

「お前も銃マニアだったのか…。」

「サバゲ経験は浅いがな。」

「俺は基本、ヴェクターで勝負してたな。」

そして信事はもう一口、エナジードリンクを口にした。

「そういやお前、どうして二丁拳銃なんだ?」

「どうしてって?」

「だって、二丁拳銃って、照準ブレるし、役立たずって言われることが多い。だから最初からその装備にすることはないと思うんだ。」

「ああ、俺は当初、L96-A1を使ったスナイパーとしての訓練を受けた。」

「ってことは、元は狙撃手だったのか。」

「まぁな。だがある日、俺の拳銃における才能を見出してくれた奴がいるんだ。そいつは、ある銃器店の店長をやっていてね。実銃を扱っていて、試射場もあった。俺は狙撃だけは左利きだったから、狙撃銃を左に構えていた。だが、拳銃は右だった。そこで、そいつは俺にあるハンドガンを渡してこう言った。“左で撃ってみろ“ってね。その銃の名前こそが…。」

紅葉はCz-75ファーストモデルを机の上に置いた。

「Cz-75。知っているか?世界最高のコンバットセミオートピストルとも言われた、高貴な銃だ。それを手渡してきた。そしてその後、こいつを出してこう言った。“次は右だ。”って。」

そう言って紅葉はHK-USPを取り出した。

「俺は昔、ガンプレイにハマっていた時期がある。その時に一番技を覚えたのが、彼がくれたこのHK-USP。ユニバーサルセルフローディングピストル。彼はその射撃を見てこう言った。“両方を出来るだけ早く、交互に、狙って撃ってみろ。”そこから俺は二丁拳銃を完璧に使いこなせるようになるため、彼の店に行っては射撃練習を繰り返し、完成した。改進軍が出来てから二年目くらいだったか、そこからずっと通い続けている。」

「ほぅ。そいつの名前は?」

「知らない。あいつは名前を口にしない。基本偽名だからな。」

「偽名でもいい。」

「…コルトって言うんだ。」

「へへ。」

そう言って信事はColt_M1911-A1ガバメントを取り出した。

「こういう事だろ?」

「そうだよ。あいつは変わっている。八年付き合って解った事は、銃好きで熱烈で変人ってことくらいだ。謎に満ちた男だよ。…だが信頼している。」

「そうか…。」

「作戦は枯葉の指示で事足りる。俺は部屋に戻って銃器のメンテナンスでもしとくよ。」

「んー。了解。」

そう言って紅葉は信事の部屋を後にした。

 今、枯葉は改進軍を引退し、平和団の幹部を務めている。彼が中心となって現在行われている計画は、計画の通り世界大戦を始めるための計画なのだ。数日後、静寂からの連絡だった。信事、沙羅、紅葉、華林、枯葉は紅葉の部屋に集まってその連絡を聞いた。連絡の内容は、例の計画についてだった。

『宣戦布告が来ました。ヨーロッパ諸国連合からです。』

「アメリカは何と言っている?」

枯葉が問う。

『アメリカは今すぐ核を解体しろと。』

「上等だ。静寂、改進軍は沈黙していろ。」

「信事?どうするの?」

「案ずるな、沙羅。紅葉、平和団の皆は?」

「朝鮮支部で皆待機している。」

「…予定通りだな。さぁさぁ、戦士諸君よ。戦争の始まりだ。紅葉、頼む。」

紅葉はコクリと頷いた。紅葉の右耳にはめられていた無線機の電源を入れた。

「これより、全平和団攻撃部隊に次ぐ。戦争を開始する。我々が朝鮮支部に到着次第、攻撃進軍を開始する。総員、戦闘用意。」

「さてと。」

信事はその場で立ち上がる。

「これからどうすんの?」

「ここにいる平和団に次ぐ。朝鮮支部へ移動しよう。」

「私正式な平和団じゃない。」

華林は自分のことを指さして信事に抗議した。

「来たいか?また死体を見たいか?」

「紅葉、その言い方は無いでしょ。」

「まぁ聞け沙羅。確かに言い方は言い方だがな、現実は言い方どうこうとは違う。」

紅葉は沙羅に目を移す。

「生きるか死ぬかの二択だ。どれだけ皮肉を言おうが、現実を知ってもらう必要がある。」

そして再び華林に目線を戻した。

「華林、もう一度問う。来るか来ないか、どっちだ?」

「…行く!」

「信事、さっさと行くぞ。時間がない。俺の部下に暇させたらただじゃおかねぇからな。」

「承知の上さ。枯葉、プライベートシップを出せ。航空機でさっさと飛ぶぞ。」

「了解。」

数十分後、空港にジェット機の音が鳴り響いた。

 数時間後、平和団と紅葉たちは合流した。

「さーて、俺の可愛い部下ども、命令だ。従わなければ火炙りな。」

「怖っ⁈」

華林が突っ込む。紅葉はスルーする。

「陣形は組まなくていい。野戦具と市街戦装備でモスクワの軍事基地を襲撃する。」

「み、味方の…ですか。」

「まぁな。だが形だけだ。追い出したっていう程でいい。それで十分だ。」

紅葉は無線機を通して命令を下す。

「繰り返す。野戦具と市街戦装備でモスクワ軍事基地へ向かう‼急げ、時間の勝負だ‼」

「…お前らチームワークいいな。」

「だろ?枯葉。紅葉は才能だけじゃなくて仲間からの信頼も厚いんだ。」

「信事、俺たち置いて行かれそうだからさっさと四駆に乗ろうぜ。」

「…そうだな。沙羅、華林。四駆に乗るぞ。」

「「はーい。」」

「対戦車兵器はどうします?」

「…いや、止めておけ。変わりに、M61バルカンを積んでけ。」

「待て、ここにもあったのか?バルカン。」

「驚くことじゃないだろ、信事。先日の件でガトリングの無力さを証明したが、使い手も使い手だったんで、うちの部下で試してみた。各段に実力が上がっていた。…採用した。」

「お前も悉く男子だな。」

「ロマンなんざ関係ねぇ、必要なのは戦力だ。戦力と人材、そして需要だ。」

「…ブラック企業かよ。」

「うっせぇ、さっさと車に乗れ‼」

「へいへい。」

全員が車に乗り込む。

「全員乗ったな?朝鮮支部下層駅まで走らせて、リニアに貨物を積んでから客車に乗れ‼」

了解の返答が各部隊長から届いた。しばらくして駅についたので、貨物に兵器やら武器やら野戦具等を入れ、客車に乗り込んだ。

「今夕方だから、朝にはたどり着くだろう。」

「ふーん。」

「すんごい興味なさそうだね、沙羅。」

「事実興味ないからね。」

「そんなんでいいのか平和団。」

「今更だろ、信事。」

「紅葉…いつから解っていた…?」

「創設時。」

「遥か遠く平和な時代だこと…⁈」

「華林、あの時代もさほど平和じゃなかったぞ。」

「感じ方十人十色故。」

紅葉は苦笑いをした。

「あーあとこの部屋にもう一人来るからよろしく~。」

「「聞いてねぇ~ぞ信事‼」」

紅葉と沙羅という怖いお二人が信事を睨みつける。

「ま、待て待て。殺す気か。」

「お前がその気なら殺ってやってもいいんだぜ?」

そう言って紅葉はコンバットナイフを手の平で回して見せた。

「ひっ‼」

「紅葉?その時はご一緒していい?」

そう言って沙羅はM24E1-ESRを背中から腹の前に回転させながら移動させ、構えて銃口を信事に向けて見せた。

「ああ、構わないぜ。コイツの肉をたんまりくれてやる。」

「あら、ありがとね。たんまりと堪能しないとねぇ。」

沙羅と紅葉が狂ったような目で信事を見下した。

「た、助けてくれ、枯葉‼」

「知らね。」

「枯葉ぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」

「ふふふっ。」

「はははっ冗談冗談、落ち着けって。」

「悪かったわ。…でも次からちゃんと報告してね。」

「りょ、了解。」

信事は苦笑いしながら返答した。紅葉と沙羅はそれぞれ、武器を戻した。その間、華林は窓から外の景色を堪能していた。

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