嵐の後の静けさ
何匹も魔物を葬っていると、魔物達は相手にならないことを悟ったのか急に穿けていった。
残された村は昨日までの平和が嘘のように荒れ果てていた。
私は少し疲れて建物に背を預ける。
母親の子供を呼ぶ声が、響き渡る。
どうやら魔物に拐われてしまった子供もいるらしい。
それでもこのくらいの被害で済んだこと自体良かったとは思うが。確かに村人やモモゼも頑張っていたことは認めるが。もし、私とシロナがいなければ壊滅していてもおかしくは無かっただろう。
私は静かに村人の様子を見ていた、シロナは村人へ声をかけたり助けたりして、モモゼは回復魔法で怪我をした人の応急手当をしている。
しばらくするとシロナが長老が読んでいると言い私を引っ張って行った。私は行くとは言っていない。
荒れ果てた家にはすでにモモゼがおり、部屋にいた小さな長老が言うには、要約すると拐われた子供を助けて欲しいと言うことらしい。
魔物はこの村の東にある竜の住むと言われる竜山"ダグトーリア"へ蜘蛛が子供を拐って行ったらしい。あの種類の魔物は子供を拐ってもすぐに補食せずに繭で繰るんで保存する。そして少しずつ生命力を食らうのでまだ生きている可能性が高いだろう。
心優しい二人は竜山へ行き子供を助けに行くと言うが、私はもちろんそこまでする義理なんてないので黙っておく。
「じゃあ、俺とハイリとモモゼで子供達を救いに行こう!」
シロナはそう言った。
……だから、私は何も言っていない。
「私を勝手に加えるな。なんの義理があって行かなければならない。私は行かないからな」
「けど、一宿一飯の恩義があるだろ」
「貴様が勝手に私を拘束してこの村に置いただけだろう。恩なんてあるか。大体、拐われるのが悪い」
弱いのが悪い。傷つけられたくないのなら守れるように強くあらなければならなかった。
そう考え私は当たり前の事を言ったのに長老はそれに眉を寄せた。
「シロナの知り合いだというからこの村におく許可をしたが、なんという人でなしじゃ」
「こんなところであぐらかいて座っている爺には言われたくない」
「わしだって若く、体が動くのなら誰よりも先頭に立って子供の救出に向かっていた!」
「仮定の話になんの意味がある」
私は長老を睨み付けると、横にいたシロナが私の頭にポンと手を置いた。それにシロナを睨み上げるがシロナはまっすぐと長老を見る。
「俺の婚約者がすいません。いかんせん彼女は外界を知らないので」
「はあ?私はきちんと理解している」
「理解していると思うこと自体が理解していないんだよ」
シロナはまるで私が間違っているというようにそう言う。
「けれど、竜山は魔物の山を目指す動きから見ても分かるように現在魔物の巣になっている可能性が高い。命の危険もあるダグトーリアへまだ15のハイリが行きたがらない気持ちも汲んであげて欲しい」
「……そうじゃな。確かに昨日今日会った娘子に頼むのは酷すぎたか。しかたあるまい。すまなかったなハイリよ」
……黙って聞いていれば勝手に私を解釈をしている。怖がっているなどといつ言った。
「ふざけるな!私は優秀な剣士でいて魔道士だ。あんな魔物が怖いわけがないだろう」
「いや、無理をしなくていい。ハイリ」
「無理なものか。むしろ私一人でも構わないくらいだ。このお荷物が」
「なら、一緒に言ってくれるか」
「もちろ……あっ」
危なくついて行く流れになりそうだったが、私は誤魔化されるか。もう少しで誤魔化されそうになったとかそんなことはない。
誰が行くかと言い掛けようとした時、それを言う前にこそりと私の耳もとでシロナは言った。
「それに俺だけで行った場合、子供を救った英雄は俺になるからな。その噂が外に行った場合、クロムよりも俺を押す声が高まるだろ。現クロムの側近なハイリが行けば中和されるけど」
シロナの言葉に私は言葉を飲んだ。
確かにシロナの言う通り私が善行をしてクロム様の支持を上げる方が、クロム様のため、かもしれない。
「村の子供のためにこのハイリ・ラシフルーフ、力を貸そう」
私は高らかと宣言した。