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6/11

星空の下で

結局あの後は長老に挨拶をさせられて、チャンスも掴めずに村へと滞在する事になった。

年も近いということで私はモモゼの家に泊まる事になった。

モモゼの家は女性らしい小さな小物が飾られている可愛らしいものだった。

私の家の部屋は無駄な物を置かないのでこざっぱりしているから彼女とはまるで性質ご異なるのだなと思う。


ところで私達人間が魔法を使う場合には媒介となる宝石のような光り輝く石、魔玉まぎが必要になる。それは魔法の性質によって使い分けが必要だ。

私が使えるのは炎魔法なので私の剣には赤い魔玉が嵌められているが、水魔法を使っていたモモゼはまだ現物は見ていないが青の魔玉なのだろう。だから盗ろうとしても徒労に終わるだろう。

私の剣は今シロナの家にあるため、ここではどうしようもない。


「なんでお前は庶民の癖に魔法が使えるんだ。そもそも魔玉は庶民にはほとんど流通しない高価な物だ。お前

がどうやって手に入れた」


私はモモゼの家のテーブルに腰掛け、良い匂いが立ち込める料理をするモモゼに話しかける。

するとモモゼは何かを思い出すように優しく言った。


「魔玉はとある人から昔、頂きました。下さった人は身分の高い人で、それをその人はもう覚えていないみたいですが。魔法はその時に魔玉を下さった人が使っているのを見て独学で覚えました」

「独学で?」

「はい。けどシロナさんがこの村に来てからは少しずつ教えて貰っていますが」


私だって沢山勉強してここまで使えるようになったのにそれなのにほとんど独学でだと。

驚く私の前にモモゼは夕食であるシチューとパンをテーブルへ置いた。

白く綺麗なスープに色とりどりの野菜が浮かび、敵地だというのに食欲が湧いてしまう。


「お口に合えば良いのですが」

「仕方が無いから食べてやる」


事を起こすにしてもお腹が空いていては動けないからな。

私はスプーンでシチューを掬い口にいれる。

シチューはトロトロのミルクの円やかさが野菜と合っていて優しい味がする。

とても


「美味しい」


思わず口に出してしまった言葉に自分自身も驚いてしまう。

聞かれたかと思わず目の前に座るモモゼを見るとまるで鏡のようにモモゼも驚いた顔をしていたので私は視線を逸らした。


「勘違いするなよ。一般庶民の割には上手いだけだ。別に本当に美味しかったとかそういう訳ではないからな」

「はい。ありがとうございます」


私の言葉にモモゼはクスクスと笑いお礼を言った。




夕食が終わってから、モモゼは外に出ると星が輝く夜空の下で魔法の練習を始めた。

それを私は見つめる。


彼女が行っているのは瞑想だった。

目を瞑り、魔法を想像する。

私もよくする訓練方法だ。基礎中の基礎であるがだからこそ馬鹿にできない。

モモゼの周りには水が現れ、それがキラキラと月明かりに照らされ幻想的に踊る。


これだけでもできる者は貴族の中にだってほとんどいない。





どれだけ時間が過ぎただろうか。

水が踊りを止めるとモモゼは目を開いた。


「ハイリさん?ずっと見ていたのですか?」

「ああ」


見ていたというより、目を奪われていたという方が近いと思うがもちろんそんなことは口にしない。


「水魔法を使えるということは回復魔法も使えるのか」


水魔法は攻撃特化の炎魔法と正反対に癒しと縁が深い。

なので水魔法を使うもののほとんどは回復魔法を覚える。


「少しだけでしたら」


モモゼは自身なさげにだが頷いた。


「ふん。まあ癒し魔法は技術よりも意思の方が作用するからな。お優しそうなお前にはぴったりの魔法だな」

「技術よりも意思、ですか」

「回復魔法は治したいという思いが強いほど回復力が上がる。そんなことも知らなかったのか」

「はっ、はい」


モモゼは頷いた。


「回復魔法も私は使えることをひと月前までは知りませんでした。ただ、シロナさんが川端で危険な状態でしたので助けたいと思いましたら魔法が使えたのが初めてでした」


なるほど、つまりシロナはモモゼの魔法のおかげで助かったということか。


「全部お前のせいか!」

「え、あ、え?ごめんなさい」


私は地団駄を踏み怒ると、モモゼは意味が分かっていないくせ謝罪した。

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