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平和ってなんかむしゃくしゃする

ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな。


私は剣を取られ、シロナに俵担ぎをされると「とりあえず村へ行こうか」というシロナに連れて行かれた。もちろん私は暴れたが、シロナは私の抵抗なんてどこ吹く風といったように私を落とさない。


それに村娘は心配そうに私を見上げてくるが、貴様に心配される謂われはない。

シロナ諸共始末して良いんだぞという意思を持って睨みつける。


「あっ、あのシロナさん。彼女すごく怒っていますけどどなたですか?」

「そういえば説明していなかったな。ハイリは俺の婚約者だ。ハイリ、彼女は俺を助けてくれたモモゼだよ」

「婚約者っですか!そ、それなのに水をかけてしまいすいませんでした。私はモモゼです。この先の村に住んでいるえっと、子供達の教師をしています。宜しくお願い致します」

「宜しくなどするわけがないだろう。庶民が。少し魔法が使えるかといい気になるなよ。お前がいることを知っていたらお、私は無様に負け、てはいないが拘束されるはずもなかった」


思わず慣れている俺と言いそうになったが一応今は女の格好をしているので私に言い返す。

あと、負けたと言うのも嫌なので訂正する。

私は他の者と比べて強いのだ。負けなんてあり得ない。


「す、すいませんでした」

「大丈夫だ、モモゼ。ハイリのこれはただの照れ隠しで宜しくってことだよ。なあハイリ」

「なにをどこをどう取ればそうなる、私が貴様なんかに宜しくなんてする訳がないだろ」


シロナのあり得ない翻訳を強く訂正すれば、モモゼは戸惑いを浮かべて私とシロナを見てくる。

私はそれに変な勘違いするなよと言う意味を込めて睨みつけた。


少し歩いて、いや私は歩いてはいないが担がれてやってきたモモゼの村はどこにでもあるような面白味のない村だった。畑があり、水車があり、質素な家のあるただの普通の村だ。


「モモゼ先生!」


モモゼの教え子だろうか、帰って来たモモゼの元に子供がわらわらと群がって来た。

そしてシロナに担がれた私に気がついて不思議な物を見るように見上げてきた。


「モモゼ先生お帰り」

「モモゼ先生、また変なの連れてきたのか」

「綺麗な人……」

「誰だこいつ」

「彼女、ハイリは俺の婚約者だ」


子供達の声にシロナは胸を張り得意げに返すと、子供達から「えーー」という驚きの言葉が出た。


「嘘だあ」

「自分が王子とかあり得ないこと言ってるし、シロナは嘘吐きだよな」

「嘘じゃない、俺は王子で彼女は俺の婚約者!なあハイリ」


そう同意を求めて来るシロナを私は睨みつける。

どうやらシロナは王子だと信じられていないようだ。

私としては始末するのに人に彼が王子だと知られていない方が好都合だからそれはちょうどいい。


「お前が王子な訳がないだろう。それに私は婚約者でも何でも無い」

「えっ、ひど」


そう告げればショックを受けたようにシロナは言葉を溢す。


「ほらやっぱり、シロナは嘘吐きじゃん」

「嘘吐きシロナ」

「嘘じゃない!」


シロナは信じて貰おうと本当に王子だと言うが、子供達は面白がって嘘だ嘘だとぎゃあぎゃあと言う。

王族の癖になんて情けない姿だろう。


確かにシロナは良い意味で親しみ安い雰囲気を持っているので弟のクロム様と違い庶民に紛れても違和感があまりないが。

それは顔つきというより表情のせいだろうか。


とにかく。


「そんな下らないことはどうでもいいからさっさと私を降ろせ」


子供と戯れるのに不規則な動作をするせいでいい加減に具合が悪くなる。


「あっ、ごめん」


シロナは私を担いでいたのを忘れていたかのように謝ると、あっさりと私を降ろした。

剣もシロナが自分の私より一回りも大きい剣と共に一緒に持っているからもう降ろしても私が逃げることはないと察したのだろうか。

実際、王子のりもの酔いのせいで動けない。それがとても悔しい。「大丈夫ですか」と背中を撫でるモモゼを睨みつける気力も無かった。

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