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平沢聡太
「平沢くんは剣道をやってるみたいだけど、他に習い事はやってるんですか?」
「高志会に通ってます。ちょっと遠いんですけど。他にも衣笠中の人が多いですね。同じ小学校の人はいないんですけどね。」
「その塾で同じクラスの人とかっています?」
「え、…いや、いません。」
僕はあの日、日向とサッカーをしていた。塾があったから5時ぐらいには終わってたけど。優希が死んだ時間、つまり死亡推定時刻は俺らが別れた後だった。
「はよー。」
日向の挨拶は変わってる。最初の1、2文字を抜く。まぁ、慣れたけど。
「おはよー」
「今日から中学生か早いなー」
「だな。誰か知ってる人が同じクラスだといいなー」
「あ。俺、2組だ。聡太は?」
「5組…」
「知り合いいたか?」
「舞奈と…。いや、舞奈だけだった」
「塾の子とかは?」
「いなかった。」
「ふーん。そうなんだ。じゃあ俺、教室行くわ」
「また、後でな」
「おぅ」
本当はいた。和泉絵里加が。塾が一緒の。