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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

奇妙な冒険者  その2

作者: 大介丸

 


 丸木造りのその酒場の名は、冒険者専用酒場『カーリルド』

  健康的な肌色で、背筋がよくややつり目の翡翠の瞳に眼やうなじにかからない程度に切られた金髪の中年男性が経営していた。

 この男性は元冒険者だ。

  店内は広く長テーブルがいくつか並べられ、カウンター席もある。

 また、左側には冒険者達が遊戯出来る様にか、ビリヤード台などが設置されて

  いる。

  旅芸人の芸や吟遊詩人が歌を披露出来るようにしているのか、中央の奥には

  ステージが設置してある。

 ビリヤード台では、幾人かの冒険者達がビリヤード台でガムを噛み、ビールを飲みながら遊び、4人ほど座れる各テーブルでは、食事やポーカーなどで遊んでいる冒険者達の姿があった。

 



「―――――――その新しく加入した冒険者は、そんなに手が終えなかったのか?

 ネイック」

 タバコやガム、酒類を積んだ棚を背にしている店長は、カウンター席の椅子に

 疲れ切った表情の常連の男性冒険者のコップに醸造酒を注ぎながら尋ねた。

  「手が終えないというか、何というか・・・・素行は悪くはないが、

 あの魔法を使う行為がなぁ・・・」

 ネイックと言われた男性冒険者が溜息を一つする。

  「何が問題なんだ?」

  店主が尋ねる。

  「マスター、何か魔法関連の流派・・でいいのかな。額に壁や床にぶつけないと唱える事が出来ない教えとか聞いたことがない?」

 ネイックと言われた男性冒険者が、そう応えた。

  「いや、俺はそんな事は聞いたこともないが」

  店主は、一瞬何かの冗談かと思ったが、ネイックの表情が決して、冗談を

 言っている様には見えなかったため、そう告げた。




  「聞いたこと無いか・・・。いや、その俺の所に入ったその冒険者、えーと、

 ネクベワトルって言うんだが、その彼は魔法を発動するたびに、迷宮の壁や

 床に頭をぶつけるんだよ」

 ネイックは、憂いじみた声で応える。

  「それは何というか、壮絶な唱え方だな」

  店主は、それを聞いて若干貌を引きつらせながら告げる。

  「性格もその冒険者としての技術も問題はないんだが、ただ、その

 唱え方がね」

 ネイックは、コップに注がれた醸造酒を喉に流し込みながら応える。

  「その加入したネクベワトルやらに聞いたのか? なぜそんな方法で

 唱えるのか」

  店主が尋ねる。

  「もちろん尋ねたさ。彼が言うには、『この方法は、師匠から教わった方法なんで』らしいよ」

 ネイックは応えた。

  「一体どんな師匠だ・・・・・・・、もし、本当に無理なら外した方がいいんじゃないのか?」

  店主が、そう助言をする。

  「それも考えたんだが、今から再び募集すると予定している階層まで時間が

 無いんだ。それに魔法が使える冒険者は貴重なのはマスターだって知っている

 事じゃないか」

 ネイックは、頬杖を付きながら応える。




  「・・・何処まで予定しているんだ?」

  店主が尋ねる。

  「二層まで予定しているよ。アトンダとユスティナーが、『ハルワメース』の

 迷宮に行きたいらしいからね」

 ネイックは、何とも言えない表情を浮かべながら応えた。

  「パーティリーダーは大変だな」

  店主が、空になったコップに醸造酒を注ぎながら告げる。

  「だったら、変わってくれる?」

 ネイックは、少し戯ける様に応えた。

  「俺は酒場の店主だぞ」

  店主は苦笑いを浮かべながら応えた。




 ―――――――翌日、ネイック一行は、迷宮の二層に挑んだ。


  二層の中央付近で、上半身が裸で、頸から上が緑色をしたカエルの貌をした

 魔物の集団と遭遇し、闘う事になった。

 アトンダと名前の男性冒険者が、詰め寄ってくるカエルの貌の魔物を見事な

 剣戟で撃退しているが、数が多い。

  「うぉぉぉっ!!数が多いぞっ」

 アトンダと名前の男性冒険者が吠える様に告げる。

  「お任せくださいっ、強力な魔法で一掃します!!」

 その問題の男性冒険者、ネクベワトルが大声で告げると、壁際に急いで

 走り寄る。

  「いやいや!!  この程度ならアトンダ一人でも大丈夫だ」

 ネイックは、嫌な汗を流しながら言う。

  「そ・・そうよっ!!  アトンダは巨人だって一人で倒す実力者よ」

  女性冒険者のユスティナーも、そう告げる。

  「おいっ!? 巨人は幾ら俺でも単独では倒せるかっ!!」

 アトンダは、一体のカエルの貌の魔物の頸を跳ね飛ばしながら反論する。



  「これから始めます!!―――――――――――――― 

  ガダルカナルを忘れるな  ガダルカナルを忘れるな

 ガダルカナルを忘れるな  ガダルカナルを忘れるな  

 ガダルカナルを忘れるな  ガダルカナルを忘れるな

 ガダルカナルを忘れるな  ガダルカナルを忘れるな

 ガダルカナルを忘れるな  ガダルカナルを忘れるな

 ガダルカナルを忘れるな  ガダルカナルを忘れるな

 ガダルカナルを忘れるな  ガダルカナルを忘れるな

 ガダルカナルを忘れるな  ガダルカナルを忘れるな

 ガダルカナルを忘れるな  ガダルカナルを忘れるな

 ガダルカナルを忘れるな  ガダルカナルを忘れるな

 ガダルカナルを忘れるな  ガダルカナルを忘れるな

 ガダルカナルを忘れるな  ガダルカナルを忘れるな

 ガダルカナルを忘れるな  ガダルカナルを忘れるな

 ガダルカナルを忘れるな  ガダルカナルを忘れるな」




 ネクベワトルは、今度は誰も聞いた事のない名を呟いた。

 ただ、ひたすらに詠唱の様に呟きながら壁に額をぶつけはじめる。

  以前の時は、無表情だったが、今回のは鬼の様な凄まじい形相で壁に額をぶつけている。

 その光景に、ネイックとユスティナーは、身を震わせた。

 ネクベワトルのその行為が、何処か鬼気じみているからだ。

 ネクベワトルは、「ガダルカナルを忘れるな」という言葉を吐き、打ち続けて

 いる額から血を流しながら、壁にぶつけ続ける。

 ひたすら、強く強く打ち続ける。

 どれだけ繰り返したのか、しばらくしてその壁からふらふらと離れると、

 前回の時と同じように、迷宮の床を爪先と踵で踏み馴らす。




 しかし、今回はこれで終わらず、ネクベワトルは足を交互に滑らし、前に歩いているように見せながら後ろに滑りはじめる。

 額から血を、口は半開きのまま涎を垂れ流し、目は落ちくぼんで一切の光を

 拒む。

 様子からして、ネクベワトルは気を失っているのかもしれない。

 しかし、それでも、ネクベワトルは止まった場所で両手を高々と掲げる。

 すると、ネクベワトルの頭上に、無数の水晶玉ぐらいの大きさの炎の玉が出現

 した。




「――――――きょうりょくなぁまほうよびだしたのでぇ、こうげきしますぅ」

 ネクベワトルは、掠れた様な声で呟くと、カエルの貌をした魔物の集団に

 無数の炎の玉を飛ばした。

 それらは、炎の尾を引き猛スピードで飛んでいく。

 カエルの貌をした魔物の集団は、次々と激しい爆発と炎に巻き込まれ、

 断末魔と共に猛火に呑み込まれていく。

 その光景を、アトンダ、ユスティナー、ネイックは呆然と見る。

 3人から見ても、凄まじい魔法の威力だという事はわかる。

 ネクベワトルがよろよろとした動きで、3人に近づいた。

「どうでしょうか? 僕は役に立ったでしょうか」

 ネクベワトルは額から血を流しながら、何処か一仕事終えたような爽やかな

 表情を浮かべて尋ねてくる。




「・・ああ・・・十分だ。  あの、今のも?」

 ネイックが、恐る恐る尋ねる。

「はい、今のも亡くなった師匠から学びました。

 ただ、自分も『ガダルカナル』とは何の意味なのか、師匠から教わって

 いないです」

 ネクベワトルが、そう応える。

「(どんな師匠だったんだよ)」

 ネイックはそう思ったが、それは口に出さずに、ユスティナーにネクベワトル

 に回復魔法をかけろと短く命じた。




やはり暑くて、続きを書いてみました

うん、やはり暑いと書いてしまうものですな(W

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