真実を知りたい
「……なに、ソレ」
保健室で愛莉から聞いた話は、正直、私達には受け入れ難いものだった。彼女からは毎日のように先輩のいい話を聞かせてもらっていたし、零のような「最近彼が冷たい」などといったものすら聞いたことがない。むしろ楽しそうだった。なのに突然、こうなってしまった。どういうことだろう。私は愛莉が告白した日を思い出した。あんな優しい笑みを浮かべる人がこんな残酷な別れ方するだろうか。
「最低じゃん。イケメンだからってやって良いことと悪いことがあるよね。愛莉をこんな風にフるなんて。絶対許さない」
零が先輩の顔を思い浮かべたのか、しかめっ面をする。私もこんな話を聞いたら、そりゃ胸糞悪い。でも、おかしいとも思う。いくらなんでも急すぎやしないか。
そうとうショックを受けている愛莉は私や零ではなく、澄み切った青空をただぼうっと見ていた。あんなことがあったのなら仕方のないことだろう。
……仕方ない、と言ってしまうのが本当に正しいのだろうか。
どくん、私の心臓の奥の辺りが疼いた。
――どうやら私は、よほど恋が知りたいみたいです。
だって、口が勝手に動いちゃうんだもん。
「恋ってそんなもの?」
突然呟いた私を見て、二人が目を丸くする。一回こんなことあったよね。屋上で零と二人で話してて、私が暴走し始めたとき。あのことを思い出したのか、零が駆け寄ってきて私の肩を強く掴む。多分、私が言おうとしている言葉が愛莉を傷つけるかもしれないという事がわかったのだろう。
手入れされた綺麗な眉がつりあがっている。
「今はっ! そんな話してる場合じゃないでしょ!」
「じゃあ、いつならいいの? 愛莉がこんな状態のままじゃいつまで経っても出来ないよね? 私は今しかないと思う。人の心は変わっていくのよ。変わった後で理由を聞いても駄目なんじゃないかな」
冷静な私の台詞に零は口を噤む。あの時と同じく、嫌われても良い覚悟で言った。私が今ここで出来ることはこの状況を冷静に判断して的確な指示を出すこと。伊達に十六年間を一人で生きてきたわけじゃないからね。これくらいなら、できる。
「おかしいと思う。急すぎない? 昨日まで仲良くしてたのに今日別れてくれだなんて。飽きたっていう言葉を真に受けすぎ。きっと何か理由があったのよ」
「……それでも、愛莉を泣かせていい理由にはならない!」
「知りたいと思わないの? 理由も知らずに怒ってたら先輩に失礼じゃない?」
零は軽く私を睨む。愛莉は相変わらず宙を眺めていて、私達の話なんか聞いていない。
先輩がこんな真似をした理由を知りたい、それだけだった。私はこれも恋のマジックの一つだということを、心のどこかで信じたかったのかもしれない。
勿論、自分勝手なのはわかってる。どうせ私は恋が知りたいだけの役立たずだ。
でも、これだけは言える。
苦しんでる「友達」を助けたいって、初めて思えたんだ。
「愛莉には、真実を知る権利があるわ」




