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愛莉side

 昼休み開始のチャイムと同時に、アタシは目的地へ向かって教室を飛び出した。朝学校に来たら、彼に呼ばれたんだ。「昼休みに校舎裏で待ってて」って。勿論オッケーしたけど……何の用だろう? 弥生っちと零ちゃんに何も言わずに来ちゃったから心配してるかな――そう考えながら袖を少し伸ばす。そろそろ本格的に寒くなってきたしマフラーを出しておかないとね。あ、バレンタインも近いし、彼とお揃いのマフラーとか作っちゃう?

「愛莉」

 そう呼ばれて、くるりと振り返る。声だけでわかる。そこには愛しい彼の姿が。

「先輩っ!」

 自然と笑顔になってくる。何ヶ月前になるのかなぁ。アタシは先輩に告白して、見事お付き合いをさせてもらうことになったのです! それからは毎日放課後デートしてて、幸せで……うへへへ。最近は先輩の受験勉強で全然デートしてないけどね。だから制服の先輩を見るのは久しぶり。そりゃ顔もにやけてくるよぉ。


 そんなことを考えている間に、アタシの体は先輩の胸の中。



 ……え? 胸の中? 

「ふぇっ? せ、先輩?」

 大きな体に包まれて、何も考えられない。ど、どうなってんの? やばい、恥ずかしすぎて何にも考えられない。

 俯くアタシの顔を先輩が覗き込んでくる。熱い吐息は顔のすぐ傍で、思わず目を瞑ってしまう。

「……愛莉、こっち向いて?」

 囁かれて、声の方へ目を向けてしまうアタシ。でも先輩の整った綺麗な顔が目の前にあってまたすぐに目を閉じる。だけど、やっぱり先輩の方を向かされる。すっごく恥ずかしくて、体が熱い。頭がくらくらして、このまま先輩に溺れてもいい。そう思った時、体から先輩の温もりが離れた。


「突然呼び出したりして、ごめんな」

「い、いえ……」

 赤い顔を隠すように、アタシはまた俯いて、セーターの袖を伸ばした。今までこんなことなかったから、妙に嬉しくもある。先輩も私と同じ気持ちなのかな、と勝手に想像したけど、照れくさくてやめる。


 今日、なんかの記念日だっけ。それとも先輩の気まぐれかな。色んな考えがアタシの頭をぐるぐるして……。恋は盲目って、こういうことかな。いや、いつだったか、誰かが言ってたな。「恋は魔術師だ」って。バレエの劇の題名らしいけど、盲目よりもぴったりな気がする。アタシを別の世界へ連れて行ってくれる。いろんなことを魅せてくれる。まるで魔法のようにね。

 あ、そろそろ名前で呼んでほしい、とかかな? いつも「先輩」ばっかりで、呼んだことなかったな。え、でも「凜さん」とか言ったらなんか恥ずかしいし……。


 このままずっと時が止まればいいのに。そう願った時だった。


 そんなことを願っていたのはアタシだけだったんだ、って嫌でも思い知らされたんだ。



「俺と別れてくれないか」



 突然現れたその言葉は氷のようにアタシの心を抉った。

 今、なんて?

 ナンテイッタノ?

 そして脳が遅れて理解するんだ。

 私はもう、先輩の隣には居られないってことを。

「……どうして」

 それしか言えなかった。眼球が震えて、足ががくがくしてる。人間じゃなくなったみたい。


「ん……飽きた」


 言いにくそうに先輩がアタシから目を逸らす。何か言っていたけどアタシの耳はそれをも遮断してしまって、音も何も聞こえないし、聞きたくもなかった。目からは細く涙が零れ落ちるだけで何も映し出さない。絶望、そんな言葉が頭の中をぐるぐるぐるぐるぐるぐる回る。



 いつの間にか先輩はどこかへ行ってしまっていて、アタシだけが世界に取り残された。

 そして意識が朦朧とする中、目から溢れる涙を拭ってアタシは走った。自分の親友に会うために。



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