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いつから喫茶店にメイドが居ると錯覚していた

 小笠原妹に腕を捕まれ、混沌の渦に包まれた廊下から連れ出された俺。

 そのまま小笠原妹のクラスに連れていかれ、隅っこに着席させられた。

 小笠原妹のクラスは喫茶店らしい。別に奇はてらっていないらしく、接客の生徒はセーラー服の上にエプロンを着用している。というか教室内にいる女子十数名が、距離をとりながら俺を観察している。

 ……何だこの状況。


「お待たせ。カフェオレなら飲めるでしょう」

「……ああ」


 黄色いエプロンを着けた小笠原妹が白い小洒落たカップを出してくる。

 カフェオレならて、何故俺がブラックコーヒーを飲めないと知っている。

 まあそれは置いといて……。


「……お姉様?」

「呼ぶな!?」


 疑問を口にしたら目をつり上げた小笠原妹に一喝された。机を叩かれた勢いでカフェオレが宙を舞い見事に着地する。

 やめて。マジ恐い。泣きそう。いい歳こいて泣きそう。


「泣くな!?」


 さらに一喝された。泣かされた相手に泣くなと言われる理不尽。やっぱりアンタいじめっこか。


「私は不本意なの。私には妹なんて居ないの。ましてやそっちの趣味なんて無いのよ。分かるわね?」


 にっこり笑って言う小笠原妹。

 間違いない。こいつ威嚇してやがる。茶化したら一見無造作に握られた右の拳が翻るに違いない。


「まあまあ、良いじゃないお姉様」

「……」


 勇者降臨。小笠原妹の拳が無言で振るわれ、にやけた面の女子がスパーンと片手で受け止める。

 ……え、ここ女子高だよね? 漢たちがしのぎを削る男塾じゃないよね?


「はじめまして彼氏さん。私はアユミの親友の楠田ミキです」

「友人だって言ってるでしょう!?」

「ツンデレ乙」

「……」


 小笠原妹から表情が消えた。

 もう嫌だ帰りたい。


「いや、でもこの子が同年代の男子と仲良くしてるの珍しいんだよ? 男嫌いだし」

「男嫌いではないわ。下らないことで馬鹿騒ぎする男子が嫌いなの」

「いや、それ男嫌いでしょ。思春期の男子なんて馬鹿の日本代表みたいなもんなんだし。この人だってムッツリ顔の下で絶対下らないこと考えてるって」

「……」

「『何故分かった?』みたいな顔をしない!」


 何故分かった!?

 というか本当に何でこの人俺の考えてること分かるの。自慢じゃないが俺の鉄面皮から感情を読み取るのは至難の技だぞ。


「顔以外からでも感情は読み取れるわ」


 ドヤ顔で言う小笠原妹。アンタ何者だ。



「ともかく、来てくれたのは嬉しいけど、私も午前はここのシフトに入ってるの。しばらくは一人で時間を潰してきてくれないかしら」

「……一人で?」


 心なしか不安そうな声で言う斎藤くん。よく見れば眉も少し下がってる。

 やめろ。そんな捨てられた犬のような目で私を見るな。


「ここで待っててもらえば? 文化祭と違って外部のお客なんてあんまり来ないんだし」

「身内だからって特別扱いはできるわけないでしょう」


 席にだって限りがあるのだ。その内の一つを知り合いだからと埋めるわけにはいかない。

 そう主張する私に、ミキは何故かニヤーっと嫌らしい笑みを浮かべる。


「へぇー『身内』ねぇー?」


 もう本気で排除していいだろうかこのアマ。


「別に一席くらい良いでしょ。ねぇみんな?」

『はーい』


 ミキの問いに一斉に答えるクラスメイトたち。皆こんな面白そうなものを見逃せるかと目が輝いている。


「……」


 その様子に気付き目で助けを訴える斎藤くん。その姿がちょっと可愛かったのは置いておくにしても、私にはもうどうしようもない。

 諦めろ。すぐに逃げなかった君が悪い。

 そう視線にこめて見れば、斎藤くんは絶望したように項垂れた。

 無表情な割にはリアクション可愛いなぁ、このムッツリ。

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