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ツンデレにツンデレと言うと反発する


 教室で模擬店の準備をしていると、マナーモードにしていた携帯がブルブルと震えた。

 取り出してみると受付担当の生徒からのメールが一件。


「小笠原さん署名の招待状持った男性が来たけど何者!?」


 脱力した。同時に面倒事に頭を抱えた。

 何が面倒かと言うと、そのメールが私以外にも数名に一斉送信されていたから。

 騒ぎを大きくしたくなければ、その数名にわざわざ言い訳のメールを送らなければならない。しかし事実を言っても騒ぎになるのはもはや避けられまい。


「……友人です」


 兄の恋人の弟だと正直に返しても、余計に説明が面倒になるのは目に見えている。故にある意味真実な答えを送信したのだけど、それは間違いだったとすぐに分かった。


「お友達から始めてるんですね」

「付き合い始めたばかりなんですね」

「さすがのツンデレ」

「ご結婚おめでとうございます」


 次々入ってくるメールの内容に膝を着きそうになった。


 話を聞け。

 照れ隠しじゃない。

 誰がツンデレだ。

 最後のは何故そこまで飛躍した。


 恋バナに飢えた女子校生をなめていた。当人置き去りにしてどこまで盛り上がるつもりなのか。

 こうなれば下手に否定しても逆効果だ。「ツンデレ乙」で返されるに違いない。


「……ごめん。ちょっと外すわね」


 とりあえず元凶を回収しよう。合流したらさらに騒ぎになりそうだけど、放置するわけにもいかない。


「あらあら、ごゆっくり」


 分かってますよとばかりに笑うクラスメイトにイラッとした。

 というか今の一瞬で噂がどれだけ広がっているのか。星嶺祭は始まったばかりだというのに、私はもう精神的に疲労困憊だった。




 突然だが、俺は気の強い女子が苦手である。

 特に口が達者で、周囲を扇動して味方につけるタイプは天敵だと言って良い。無口な俺では一方的に罵倒され、悪者にされるしかない。


 俺サボってないよ。先生に雑用押し付けられてただけだよ。これだから男子はとか見下げながら言わないでください。


 ……トラウマはさておき、とにかく俺は気の強い女子が苦手である。

 しかし気の弱い女子が得意かと言えばそうでもない。というか今まさに対処に困っている。


「ご、ご、ご、ごめんにひゃい!?」

「……」


 廊下のど真ん中。ラップでも始まりそうな勢いで噛みまくり、涙目というかほぼ泣きながら謝ってくる小柄なツインテール女子。

 俺は何もしてない。ちょっと不注意でぶつかっただけだ。しかしぶつかった女子が謝りながら俺を見上げた瞬間こうなった。


 うん、俺も自分の人相が悪いのは自覚してる。だけど初対面の女子に泣かれたのは流石に初めてだ。

 どうすりゃいいんだこれ。周囲の視線が痛い。何か俺が女の子を泣かしたみたいになってる。


 いや、実際俺が泣かしたのか? 俺の顔が原因だから泣かしてるな。

 うん俺が全て悪かった。何かもう生まれてきてごめんなさい。


「……何してるの斎藤くん?」


 土下座しかあるまいと覚悟を決めかけた所に、呆れた様子の小笠原妹が現れる。

 ちょっと待ってくれ。俺は今から泣かせてしまった女子のために、人生初の土下座にチャレンジしなくてはならない。


「お、お姉様!?」

「……宮城さん?」


 しかし俺が土下座をする前に、泣いていた女子が小笠原妹を確認すると、珍妙な言葉で彼女を呼んだ。


 お姉様て。

 ……ああ、ここ女子校だもんな。小笠原妹女子にしては背が高くてカッコいいもんな。

 そうか、小笠原さんはお姉様なのか。きっと全校生徒から憧れの目で見られているに違いない。性的な意味で。


「誤解よ!?」


 勝手に納得しかけた俺だが、珍しく焦った様子の小笠原妹に即座に否定された。

 やるな小笠原妹。一言も発してない俺の考えを見抜くとは。

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