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天然という名の刃

「まだ電車が来るまで時間あるね」

「そうだね。暑くないかいアユ?」

「そういう気遣いはユウコさんにしなさい馬鹿」


 隣に彼女(一応)が居るのに妹を優先するなんて、普通の女性相手なら幻滅されている。


「本当に仲良いんだね」

「……」


 だというのに相変わらずお日様みたいな笑顔のユウコさん。

 ……ヤバい。この人普通じゃない。


「……?」


 ふと斎藤弟が会話に参加してないことに気付く。いや、あのスマイル百万円です状態な男が会話に参加するとは思えないけど、姿すら見えない。


 ――ガシャコン。


 独特な音がしたので振り向けば、斎藤弟が居た。自販機の前に。


 ――ガシャコン。


 ……離れるなら何か言え。まさか喋れないのかこの男。


 ――ガシャコン。


 というか何本買ってるのこいつ。


 ――ガシャコン。


 まさか。そう思っていたら斎藤弟が戻ってくる。……飲み物を四本持って。


「……好きなのどうぞ」


 お気遣いの紳士!?


「わあ、ありがとうカズちゃん」

「ありがとうカズマくん。君のはどれだい?」

「俺は残ったやつで良いんで」


 お気遣いの紳士!?(二回目)


 え、何こいつ。実は良い人? 飲み残し対策なのかジュースはもちろんコーヒーまで蓋付きのやつだし。 


「……どっちにする」


 兄とユウコさんが選び終わり残りはブラックコーヒーとミルクティ。


「……ありがとう」


 礼を言いながらミルクティを取ると、斎藤弟は何も言わず頷いて見せた。

 ……何だか妙に警戒されているのは気のせいだろうか。


 そう思いながら見ていると、ブラックコーヒーに口をつけた斎藤弟が少しだけ眉を歪めた。

 実は苦手だったのだろうか。やっぱり良い人なのかもしれない。



 小笠原さんが飲むかなと思ってブラックコーヒーを買ったが、意外にもリンゴジュースを選んだ。

 姉さんがオレンジジュースを選び小笠原妹がミルクティ。そして俺に残ったのはブラックコーヒー。

 ……カッコつけて残ったので良いとか言うんじゃなかった。俺コーヒーはミルク入れないと飲めないのに。


「まだ時間あるね」

「そうだねぇ……しりとりしようか!」


『何でだよ!?』

 姉さんの言葉にそんなツッコミを飲み込みつつそっと息をつく。

 何か心の叫びが誰かとシンクロしたような気がしたけど気のせいだろう。というか高校生にもなってしりとりて。


「じゃあ私から行くね。……マジカルバナナ♪」


『しりとりは!?』

 というツッコミを再び飲み込む。

 姉さんの言動にいちいちつっこんでたらキリがない。しかしツッコミを飲み込むのは、ツッコミ体質の人間には大きなストレスになるので程々にしてほしいものである。


「バナナといったら滑る」

「滑るといったらスキー」


 お約束通りに始まったので、様子見にお約束通りの連想で応える。


「スキーといったらジャンプ」


 あ、小笠原妹ちゃんと参加した。


「ジャンプといったら少年」


 続いて小笠原さん。順番は戻って姉。


「少年といったら蛙」


 天然な姉によるキラーパスが俺を襲う。

 待て。何をどうして少年から蛙を連想した。

 そう小一時間問い詰めたいが、ゲームは継続中なのでそんな暇はない。


「……蛙といったらはねる」

「はねるといったら水滴」

「水滴といったら湯気」

「湯気といったらArnld Schwarzenegger」


 元カリフォルニア州知事!? 

 というか姉さん発音上手いな!(ツッコミ放棄)


「……アールド・シュワルツェネッガーといったら映画」

「映画といったらポップコーン」

「ポップコーンといったら弾ける」

「弾けるといったら人間」


 誰の何が弾けたんDEATHかー!?


 結局電車が来るまで連想ゲームは続き、俺は姉の天然キラーパスに必死に抗い続けた。

 マジカルバナナ公式ルールにおいてユウコのような答えはアウトですが、斎藤家ルールではセーフです。

 姉の言葉は絶対なのです。

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