第一印象……目付き悪!?
胃が重たい土曜日の朝。最寄り駅で待ち合わせとなったのだけど、姉さんのはしゃぎぶりが半端無い。
お洒落にも心なしか気合いが入っているし、化粧もうっすらだが少しいつもより濃い気がする。
楽しみ……なんだろうなぁ。
最初は嫌がっていたわりに小笠原さんの事を気に入ったのだろうか。まあブラコンな姉さんを丸ごと受け入れる人なんてまず居ないから、気に入っても仕方がないのかもしれないけど。
代わりに向こうもシスコンだがな。
「ごめんユウコさん待った?」
駅の片隅で佇んでいると、一人の青年――恐らく小笠原さんが声をかけてきた。
第一印象は、何この優男。
まず背が高い。小柄な姉さんだと頭が胸にくるくらい高い。
加えて微笑みを浮かべた中性的な顔は整っていて、しかし頼りない雰囲気ではなく体格もそれなりだ。
何このイケメン。そりゃ周り盛り上がるわ。姉さんも気合い入れるわ。これは下手な格好では横を歩けない。
「そちらがカズマくんかな? よろしくね。こっちは妹のアユミ」
「……はじめまして」
そして隣で頭を下げる妹さん。
体格スラッ。黒髪サラッ。眼鏡シャキーン。目付きジトッ。な見るからに優等生お嬢さ……?
「……」
うん。もう一度よく見てみよう。
服装。ワンピースにロングカーディガンと中々可愛らしい出で立ち。
身長。俺と目線がほぼ同じなので女子にしてはかなり高い。
黒髪ロング。クセが無いストレートで猫っ毛癖毛の俺からすれば羨ましい程だ。
太めのフレームの眼鏡が似合うのは兄と同レベルの美形だからだろう。むしろアクセントになってるとすら言える。
顔付き。ふてくされてる。もう何が気に入らないのかふてくされてる。
……最後何!?
え? もしかして顔に出るくらい今日来るの嫌だったの? それとも素?
言っては失礼だろうが、胡乱な目のせいで美人三割減状態だ。
これがデフォルトだとしたら、彼女は今までどんだけ気に入らない人生を歩んできたのか。
「小笠原アユミです」
自分の名を短く告げる声は、凛としていて威圧感があった。
うん。この人俺が苦手なタイプだ。きっと「男子ちゃんとやりなよ」の筆頭だ。
「……斎藤カズマです」
対する俺の声は震えていたかもしれない。
もう嫌だ。女子恐い。
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初めて会った兄の交際相手、斎藤ユウコさんは、思っていたより可愛らしい人だった。
小柄で表情がコロコロ変わる小動物みたいな人。可愛げのない私とは正反対の人だ。
兄が惚れたのだから、てっきり私と似たようなタイプの人なのかと思ってたけど、まさかこうくるとは。
いや、むしろ正反対だからこそ兄は惚れたのだろうか。
「……斎藤カズマです」
そして斎藤弟。
背は私より少し高く、服装はきっちりとしたカッターシャツに黒いジャケットと中々に清潔感があり好印象だ。
そしてほぼ同じ高さの視線を合わせると――
――ギラン。
何かそんな効果音が聞こえた。
……目付き悪!?
いや、お姉さんはおっとりタレ目なのに君はどうしてそうなった!?
「……」
そのままスッと視線を反らす斎藤弟。そんな彼の頭を撫でる姉のユウコさん。
うん何だろう。チワワがライオンにじゃれついてるみたいな違和感。要するに本当に姉弟なのかこの二人。
「カズちゃんは照れ屋だから気にしないでね」
どうやら照れ屋さんは私が知らない間に品物を入れかえたらしい。
私には照れてるのではなく「チッ、うぜえな」という幻聴が聞こえてくるんだけど。
「君がカズマくんか。ユウコさんから話は聞いてるよ。僕のことは本当のお兄さんだと思ってくれ」
そう言って肩を無理やり組む馬鹿兄。立ち上る斎藤弟の不機嫌オーラ。
……殺られるのではなかろうか、うちの兄。
「……」
「うん、恥ずかしいんだねカズちゃん」
嘘だッ!?
そんな叫びを飲み込んで天を仰ぐ。
初夏の空は憎らしいくらい青かった。




