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Gun Control  作者: 燐火
第零章 CHAINの日常
21/21

3月19日

「あ、智也くん」

「あっ!佳奈っち! どうしたの~?」

「学校終わりユニ棟に集合ねー!OK~?」

「え、あ!うん!りょうかいっ」


これはもしかして・・・サプライズ!!



□■□



「えー、では。これから智也くん誕生日会計画を発表します」

「あれ、なんでこんな会議みたいなことになってるの?」

「はい静かにしてくださーい、和樹くん?」

「・・・・・・。」

「今回の計画は、何もしません。飾りつけもしなければクラッカーも用意しません」

「それはどういうことだ? 流石にケーキは用意しないとまずいだろ」

「あーうん。流石にケーキは私と香帆ちゃんで作るから気にしないで。文くんと和樹くんは何もしなくていいから」

「ふむ・・・まぁ俺は星野に一任しているから、従うまでだ」

「そういうことなら、俺も別にいいけど・・・」

「はいっ、ていうことで解散。また学校終わりにねー」


 佳奈が何を考えているかわからないが、とりあえず誕生日計画会議は終わった。

 本当に何もしないままでいいのかな・・・。嫌な予感しかしないんだけど。



□■□



 そっかー、サプライズかー♪

 こういうの仕掛けられたら、ちょっと揺さぶってみたくなるんだよねー。

 一時間目が終わった瞬間飛び出す。

これから飾り付けをすると思う・・・かっきーの教室に行ってみよう。

とりあえずチャイムが鳴り終わってから最速できたから、先に行ってしまったってことはないと思う。

まずは何も知らないフリをして、2年5組の前を通り過ぎる・・・が、会わなかった。

まぁ、そりゃそうだよなぁ・・・と思いながらもう一回反対から通り過ぎてみる。

しかしこれもまた会わなかった。

「あっれー・・・」

 不思議に思い、ドアの隙間からこっそり覗いてみる。

 教室内には意外と人がたくさんいて、その中にかっきーもいた。

 あっれ・・・飾り付けはいいのかな・・・。

 それにかっきーなら何か雑用の一つでも任されていそうなのに、教室から動かないってことは何も任されていないのかな・・・。

 しばらく待ってみたが、本当に教室から出る気配がないかっきー。

 僕は諦めて教室へと戻った。



□■□



 二時間目が終了し、今度は2年7組の教室に行ってみる。

 一時間目と同じように教室の前を行ったり来たりしてみるけど、やっぱりこっちの3人も動き出す様子はない。

 声かけてまで探りたくはないし・・・。

 んー・・・。サプライズ・・・の、はずだよね?



□■□



「なぁ星野」

「ん?なぁに?」

「いや、ケーキの準備とか、大丈夫なのか?」

「んー、準備はほぼできているし、スポンジは昼食の時間に香帆ちゃんと一緒に焼きに行くし。クリームとかもすぐにできるから問題ないよー?」

「そうか…」

「うん!大丈夫大丈夫ー、今日は普通に授業受けて大丈夫だよー?」

「…嫌な予感しかしないんだが」

「だ、大丈夫、だって…!」

「文、しつこい男子は嫌われるよ?」

「お、おう…すまない、わかった」


「香帆ちゃんナイス援護っ」

「佳奈も明らかに動揺しすぎっ」



□■□



 三時間目、授業中すごい考えてみたけどやっぱりサプライズだよ!

 ほら、だってサプライズってバレないようにするようにするやつだもんね。

 流石に誕生日会も僕で4回目だし、きっと慣れてきたんだよー。


 授業が終わり、これ以降僕はみんなの教室へ覗きに行くことはしなかった。



□■□



 昼食の時間、何故か佳奈と香帆にユニ棟へ呼ばれた俺は購買部で買った焼きそばパン片手にユニ棟へ向かった。


 最上階まで上りドアを開けるとそこにはエプロン姿に着替え途中の二人がいた。

 机に並べられているものなどをみて、どうやら最終的なケーキの準備をするようだ。

「おー!和樹くんよく来てくれたっ」

「まぁ断る理由ないしな、んで、何もしないはずじゃなかったか?」

「それはフェイクだったのさー!」

 と香帆に髪を結んでもらいながらVサインを作る佳奈。

 嘘、となると。やっぱり裏で何か計画しているんだろうなこいつら・・・。

 そして俺が呼ばれた理由など大抵見当がついている。また雑用を任されるんだろうな。

「……俺は何をすればいい」

「まぁまぁとりあえずエプロン着て!」

 と言いながら差し出してきたのは、前回の香帆の誕生日会で買った俺のエプロンだ。

 今回は買出しじゃないんだな・・・。と内心ちょっとだけ安心しつつも、佳奈の異様なニコニコ笑顔に焦りを感じていた。

「じゃーこれっ。はいどうぞ」

 とエプロンの次に渡されたのは銀色のボール。中には白い液体が入っているが何かわからない。

「これ、なんだ?」

 疑問に思ったので短く質問してみた。

 この質問に答えてくれたのは香帆だった。

「簡単に言うと生クリームの素みたいなもの。和樹はひたすらそれをかき混ぜて」

 と言われ、香帆から渡されたのが泡立て器。

 あーなるほど? つまり生クリームを作ってくれと。 それでこれ、コンセントは?

「ねぇこれコンセントついてないけど…」

「あぁ、和樹くんは手動で頑張れ~」

 と言いながら佳奈の手には電動ミキサー。

「いやいやいや、それ使わせてよ!」

「だめだよー、これ私のだし、私も生クリーム作るんだからっ」

「え? なんで佳奈まで生クリーム作るんだよ」

「大丈夫私も作るから」

 と言いながら電動ミキサーを見せつけてくる香帆。

 なんで二人とも電動なんだよぉおおおおおおお!!

「っていうかそんなに生クリーム作る必要あるのかよ!?」

「あるから作るんだよ~」「っていうことで頑張って」

 と、言いながら電動ミキサーのスイッチを入れてボールの中身を混ぜ始める佳奈と香帆。

 この二人絶対俺を応援する気ないだろ・・・。

「畜生…それなら文も呼んでくればよかった」

 と、この発言を自分でしておいて。文が呼ばれてないことに気がついた。

 すると佳奈が、明後日の方向を見ながら呟いていた。

「文くん…色々と鋭いから…」

 なるほど、追求されたくない裏計画があるから、勘が鋭い文は呼ばなかったのか。

「そんで、お二人さんは何を隠しているんだ?」

 さらっと聞いてみた。

「早くやらないとボールもう一つ追加するよ!」


 結局俺は昼飯の焼きそばパンを食べることができなかった。



□■□


 五時間目。

 はーやっくー、おーわらないっかなー♪

 授業終わらないかな・・・。

 そういえば昼飯中、佳奈っちからメールで「ケーキ好きだよね!生クリームいいよね!いけるね!よしいちごケーキ作るね!」

 って結構勢いがあるメールきたんだけど、早く食べたいなー。

「おい、中川聞いているのか」

「……はいっ!えっと、聞いていませんでした!」

「そうか、授業終わり補習な」

「はいっ!………えぇっ!?」



□■□



 学校終わり、今回は俺が智也を呼びにいく予定だったのだが、緊急招集という題のメールが佳奈から届いて、ユニ棟へ向かうことになった。

 部屋に入ると既に自分と智也以外の3人は揃っていた。これでも早めにきたつもりなのだがな・・・。

「はいっ、和樹くんが来たところで。緊急に集まってもらった理由を簡潔に話します」

 俺は佳奈の話を聞きながら、椅子に座る。なんだろう、嫌な予感しかしない。

「智也くんが、授業をちゃんと聞いていなくて補習を受けるそうです」

 なんで自分の誕生日に、しかも自分の誕生日会が開かれる日に補習なんか受けているんだあいつは!!

 みんなの反応を見てみると、文は手を組んだ状態で頭を抱えこみ、香帆は斜め下を向いて溜め息、この状況に佳奈も苦笑いだ。

「だめだ…あいつバカだ」

「うん…どうしようもないね」

「ハハハ…、だから30分くらい遅れるらしいよー」

 流石にこればかりは智也を援護してやることができない。

 と、なると。少なくとも残りの30分間暇を潰さなければならない。

 しかし、本当に準備もなにもしていないので今更やることもないし、佳奈たちも今回の裏計画について口を開こうとしない。

 一応文にもこっそり聞いてみたけど、やはり文も検討がついていないらしい。

 思わぬハプニングと謎の誕生日会計画によって、何もしない時間がただ刻々と進んでいた。

 他のみんなも特に何かすることはなく、CHAINでは珍しく、ちょっと気まずい雰囲気が漂っていた。


 その空気を動かしたのは佳奈だった。

「よし、そろそろネタバレしますか」

 といって立ち、再びエプロンを着始める佳奈。

 ネタバレ、っていうことはやっぱり裏計画のことか?

 そして佳奈と一緒に立ち上がってエプロンを着始めたのは香帆。

「えっと、これ私が説明したほうがいい?」

「ううん、計画したのは私だから私から説明するよー」

 どうやらこの裏計画を一番初めに考えたのは佳奈らしい。まぁそういうことをやりそうなのは佳奈しかいないんだけどな。

「ほら、テレビとかでよく生クリームたっぷりつけた皿を顔に投げてやるゲームみたいなのあるじゃん!あれをしようと思うの」

「もしかして大量に作っていた生クリームって全部ここに使うのか!?」

「んー、全部じゃないけど。ほとんど、かな?」

 最悪だ・・・。生クリーム、ボール5つ埋まるくらいの量は準備されてたぞおい・・・。

「なんだ、井上。お前生クリーム作っていたのか?」

 完璧に何も知らされていなかった、というか知る余地がなかった文が問いかけてきた。

「うん…なんか昼に呼び出された」

「そうか…。着替えてくるか…」

「あーそうそう!絶対に汚れると思うから制服以外のものに着替えておいてねー!」

 思い出したかのように付け加える佳奈。

 ということは、智也も体操服に着替えさせてから連れてきたほうが良さそうだな。

 制服以外の服装で、今日持ってきていたのが防護服くらいしかなかったので、隣の部屋で文と一緒に防護服に着替え、佳奈たちの作業を手伝うことにした。

 着替え終わり、佳奈たちの元へ寄ってみると机に並べられたいくつものボール、その中に入ったたくさんの生クリーム・・・。これ掃除も大変そうだな。

 そしてそのクリームを皿にたっぷりと盛り付け・・・ってこの皿。持ってみたが重くないか!?

「ねぇこの皿、紙皿じゃないじゃん!」

 今更気付いたこの重大な問題。それに反応した佳奈はとぼけたような顔で、

「え?紙皿でやるの?」

 と、とんでもない返事を返してくれた。

「痛いだろ!当たったら!」

「………そっか!」

 それに気付かない佳奈の無計画っぷりというか、天然というか・・・。

「とりあえず盛り付け作業は一旦中止して、紙皿探さないと」

 香帆の一言で、今度は紙皿探しが始まった。しかし部屋中さがしても見つからない。

「やっぱこの皿のままでいっか…」

「いやよくねぇよ!? ……どうやらないみたいだし、買ってくるか」

「でも毎回和樹くんに買ってきてもらっているしー」

「今回は嫌でも買いに行くからっ!じゃあ行ってきます!!」

 結局こうなるんだよなぁ・・・。



□■□



「先生、僕今日誕生日なのですが」

「それがどうした」

「いや、仲間が今日祝ってくれる予定でして」

「それがどうした」

「………早く終わりませんか?」

「………進級できないぞ」

「すいませんでした………」



□■□



「はぁ……はぁっ……買ってきたぞっ…」

 全力疾走でいつもお世話になっているお店と学校の間を往復し、帰って来た俺。

 倒れこむように部屋に入った俺を出迎えたのは、

「ほーいっ!」

 視界一杯に広がった白いやつ、俺はこれを知っている。生クリームだ。

 次の瞬間、顔面全体に容赦なく襲い掛かってくる冷たさ、そして独特な甘い香り。

「………何してくれるん」

「いやー…練習?」

「ほい、井上タオル」

「………ありがとう」

 やられたらやり返すのは当たり前だよなぁ・・・?

 まぁ今はやらないけど。

「まぁこんな感じでいいってことわかったから、じゃあ次は智也くん呼んできて!」

「これ以上俺に走らせるのか!?」

「………和樹、ファイトッ」

 と疲れて腰を下ろしている俺を立ったままの香帆が上から見下ろすような形で応援する。

 なんとなくだが、腰を上げて立ってみた。

 すると今度は香帆が俺を見上げるような形になって、少し暗い表情が窺えた。

 なんか、うん。予想通りだったけど、ごめん。



□■□



「はぁ…」

 ようやく終わった。いや正確に言うと明日も受けることを前提に今日早めに終わらせてもらっただけなんだけどね・・・。

「あ、智也」

「あ、かっきー」

 僕を迎えにきてくれたと思うかっきーが手を振りながら補習室の前に立っている。

 いやードキドキするなー♪

「あ、智也、着替えてくれ」

「へ? なんで?」

 今から僕は自分の誕生日会に行くんだよね?なのになんで着替えなきゃ・・・?

「まーまー、うん。とても凄いサプライズが待っているから!着替えて!」

 なるほど!よくわかんないけどとても凄いサプライズのためなら着替えよう!


 着替え終わったところでユニ棟へと向かう。

 若干かっきーの足取りが重く感じたけど、多分気のせい。

 どうせまた買いに行かされて疲れているんだろー!なんて気楽に考えていたら、いつの間にか部屋の前まで着いてしまっていた。

「緊張するなー! いやー楽しみ楽しみっ」

 心を躍らせながら、ゆっくりと扉を開く。

 逆光のせいで、一瞬、目を閉じてしまった。そして、

「誕生日おめでとう!智也くんっ」

 と、瞼を開ききらないうちに声を掛けてくれたのは佳奈っち。

 嬉しさが心の底から込み上げてきて、目を開く。

 真っ先に飛び込んできた光景は白い液体。そして白いお皿。

 かなりの勢いで僕のほうへ飛んでくる、これはなんだろう、僅かな甘い香り。

 そしてあっという間に視界は白で埋め尽くされ、ドロッとした感触が肌に触れる。

 ここまで白い液体・・・いや、生クリームを僕の顔まで運んできてくれた白い紙皿は、僕の顔にありったけの生クリームをつけて、ボトッという音と共に床へと落下した。

 反射的に目をまた伏せてしまったので、今度こそ違う光景が見えることを祈りながら、顔にのった生クリームを手で落とす。

 さっきよりもっとゆっくりとしたスピードで瞼を再び開けると、目の前には文がいた。

 その両手には紙皿にのった生クリーム。もう嫌な予感しかしなかった。

「誕生日おめでとう」

 と冷酷に呟きながらまずは右手の皿をこちらへ勢い良く投げてくる文ちゃん。

 逃げようと思ったが、すぐにその気は失せ、真正面から受け止める。

 ほとんど拭いきれていない生クリームの上に、重なるようにして生クリームが顔に付着する。

「あれだ…中川、どんまい」

 といいつつも飛んできた計3回目の生クリーム。

 とりあえずもう飛んでこないだろうと思って、もう一度顔から生クリームを落とす。

 生クリームのせいか、さっきよりももっと重くなった瞼をゆっくりと、ゆっくりと開ける。すると、目の前には、香帆りんが立っていた。はぁ、なんだこの循環は。

「おめでとう智也」

 そういって香帆りんは、右手にあった生クリームがのった紙皿をぶん投げてきた。

 香帆りんのSRの腕は学年で1位だ、その命中力はほぼ100%と言っていいらしい。

 僕は銃も扱えなければSRなんてもってのほか、触れたものじゃない。

 そんな人投げた生クリームは、若干勢いが足らず顔より少し下の顎辺りにヒット。

 脅威の命中力を誇る香帆りんが狙いを外した初めての瞬間かもしれない。なんて考えてしまうほどこの状況に混乱していた。

 とりあえず、一応確認してみよう。

「かっきー・・・?」

「大丈夫、俺は投げないし智也の後ろにいるから」

 と、言われても、若干信用できない。けど、顔のクリームを早くどかさないと前を向く事もできない。

 僕はこれで3回目となる生クリームを顔から落とす作業を終え。やっとのことでCHAINメンバーと向き合う。

「質問していい?」

 誰に質問したわけでもないけど、とりあえず言ってみる。これに答えたのは佳奈だ。

「大丈夫、今から世界一平和な戦争を行うだけだから!」

 と言われ渡されたのは佳奈や文、香帆が投げてきたのと同じ生クリームがのった紙皿だ。

 なるほど、なるほど・・・。

「かっきー」

「ん?」

「てりゃっ!」

 状況をなんとなくだけど把握した僕は思いっきりかっきーの顔面向けて渡された生クリームを投げた。

 だがすぐ反応して避けたかっきーは肩を掠める。

「ちっくしょ! やりやがったな智也!」

「はっはー! ざまぁみるがいい!」

 笑いながら逃げる僕のあとを半分怒りながら追いかけてくるかっきー。

 急いで部屋の中を見渡し、例の物を探す。

 そしてその例の物は机の上にあった。綺麗に盛り付けされて並べられていた。

 僕は逃げながらも机に近づき片手にクリームパイを手に取る。

 またかっきーに当ててやろうと振り向いた瞬間、かっきーがいるところとは別の方角からクリームパイが飛んできた。

 反射的に避けることに成功したけど、一体誰が・・・。

 飛んできた方角に目線を向けるとそこには佳奈っちがいた。

 どうやらクリームパイは部屋のあちこちに置かれているらしく、まじで戦争するつもりだなこの人たち・・・!

 とりあえず反撃として佳奈に向かって投げる。

 しかし力を入れすぎてせいで佳奈っちの横を通過していった。

「ふっふーん、まだまだだね智也くん!」

 自分だって避けられて当てられなかったくせに・・・!

 悔しいけど佳奈を標的にするのはやめよう、あの運動神経といい反射神経といい勝てる気がしない。

と、なると。それに近い運動神経や反射神経をもつ文ちゃんもほとんど勝ち目がないと言っていいかな・・・。今はかっきーと交戦中だけど、明らかにかっきーのほうが被害受けているみたいだし。

香帆りんは・・・。

「ん?なぁに智也」

 僕の後ろのほうにはキッチンがあるのだが、香帆りんはそのキッチンでこっそりと持ってきたいちごやらお菓子やらプリンやらに作った生クリームをつけて食していた。

 こんな状態の子にクリームパイ投げつけるなんてできないよね。

 まぁ、目の前でそんなおいしそうなものを食べられたら・・・。

「ずるいよ?」

 いちごを2つほど頂いて、生クリームにつけて食べてみた。

 うん、普通に美味い・・・。やっぱいちごのショートケーキとか最高だよねっ!

 てことで微妙にお腹を満たしたところで、未だかっきーと交戦中の文ちゃんに不意打ちすべくクリームパイを手に取る。

 勝ち目はないけど攻撃はできるっ!ならば攻撃しなくてどうするのさっ!!

 かっきーに気を取られているうちに一発投げないと。

 しばらく二人の様子を見る。佳奈っちはなんか飽きたみたいで、僕と同じように観戦していた。

 かっきーは椅子の裏に隠れ、文ちゃんは小型の丸いテーブルを盾として使って防いでいる。

 明らかに状況的には文ちゃんが不利なのに、ついているクリームの量はかっきーのほうが多いという謎。

 文ちゃんの隙を探りつつ、自分も隙を見せないように一応警戒はしておく、もしかしたら背後から香帆りんがいきなりパイを投げてくるかもしれない。

 ・・・それはないだろうなぁ。

 そしてチャンスは巡ってきた、かっきーは頭を使い、文ちゃんの足元へとクリームパイを投げる。文ちゃんはそれを飛んで避けた。

 僕はそこを狙った。着地した瞬間に文ちゃん目掛けて全力投球。佳奈っちに投げたときとは違い、これじゃあ文ちゃんは避けられない!

 予想通り、不意を突かれた文ちゃんは僕の投げたクリームパイが右腕に命中、驚いた文ちゃんはこっちを振り向くが、そこを見逃さなかったかっきーが今度は文ちゃんの顔右半分に命中させる。

 明らかに怒っている文ちゃんが反撃を開始しようと、右手にクリームパイを持って投擲姿勢に移る、しかしそこに第三の攻撃が文ちゃんを襲う。

 さっきまで観戦にまわっていたはずの佳奈っちが投げたクリームパイが、見事文ちゃんが持っていた右手のクリームパイに命中、そのまま文ちゃんの投げるはずだったクリームパイは地面に落ち、佳奈っちが投げたクリームパイは文ちゃんの腹部に命中した。

 あー・・・。これは・・・。

「お前ら…」

 怒っていますね。

 今度こそ反撃にでた文ちゃんは両手にクリームパイを持ち、まずは一番近くにいるかっきー目掛けて左手のクリームパイを投げるが、椅子に阻まれかっきーには命中しなかった。

 次に僕に目掛けて投げてきたけど、右に避けたら当たらなかった。

 最後に佳奈っちに投げようと後ろを振り向き、新たなパイを手に取ろうとしたが、もう在庫がなかったようだ。

 その場に立ち尽くす文ちゃん。

「もう、やめようぜ、普通のケーキ。食べないか?」

 かなり切実に訴える文ちゃんを目にしてしまったら、流石にこれ以上は続けられなかった。



□■□



「うっまーい!!」

 今回の誕生日ケーキは、佳奈っちが言ったとおりイチゴケーキだ。

 5等分に切り分けられ、一つだけ乗っかった苺、それをちょっとだけ寂しそうに見つめていると、香帆りんが自分のケーキに乗っかった苺を一つくれた。

 予想外の行動に驚いていると、

「家からたくさん持ってきたから、一つくらい大丈夫っ」

 と言って、冷蔵庫から取り出してきたのは苺がたくさん入った透明パック。

 さっきも食べていたのに・・・いくつ持ってきたんだ・・・?

 取り出してきた苺をもう一度水で丁寧に洗い、パックから取り出した苺をちょこんとケーキに乗せる香帆りん。

 香帆りんって甘いもの食べているときが一番幸せそうだよね。



 結構な大きさだったイチゴケーキは、すぐになくなってしまった。

 若干物足りなく感じた僕は、残った生クリームをスプーンですくって食べることにした。

 すると、香帆りんが僕の隣に座り、果物を分けてくれた。

「ありがとー」

 と短くお礼だけ言って、黙々と二人で生クリームを消化していく。

 みかんやスティック菓子、中には野菜スティックまであったけど、流石にきゅうりは合わなかった。

 こんな感じに生クリームと合う組み合わせを色々と探していると。

「おいっ」

 という声と同時に頭部に衝撃が加えられた。

 後ろを振り向くとそこには文ちゃんが、笑顔ではない顔でこちらを睨んでいた。

「ど、どうしたの?」

「どうしたの?じゃねぇよ、片付けがあるんだから、手伝えよ!」

 と濡れ雑巾を押し付けられる。

 見ると文ちゃんの後ろには水が入ったバケツとモップ。

「わ、わかった。でも香帆りんは?」

 僕には濡れ雑巾を渡されたが、香帆には何も渡されていない。

「あぁ、ほら。人間って幸せな時、邪魔されると嫌だろう?そういうことだ」

 なるほど、まぁこればかりは・・・仕方ないか。


 片づけを済ませ、一段落した僕らは次に写真を撮ることになった。

いつも通り香帆りんがカメラの準備をする。

 毎回主役は中心になっているので、言われる前に中心となるであろう場所でしゃがむ。

「香帆りーん! ここらへんでいいー?」

「んー。もふほっとふひろー!」

「香帆ちゃん生クリーム食べながら…というかスプーンくわえながらだと何言ってるかわからないよー?」

「ん…、ごめんごめん、もうちょっと後ろに下がってくれる?」

 香帆りんはここにきてまでも生クリームを食べ続けている。

 なんかもう、執念というか何か違うものを感じるよ、香帆りん。

「じゃあ、私は智也くんの右に座ろっかな、それで、私の後ろに文くんで、その隣に和樹くん。智也くんの左側に香帆ちゃんね!」

 という佳奈の指示で、それぞれの配置は決まった。

 そして香帆のカメラの準備も終わる。


「よし、智也くん!香帆ちゃん!左手の中指と薬指を折り曲げて!」

「こ…こふ?」

「こう?…ていうか香帆りんまだ生クリーム食べてるの?」

「あー!ずるいっ!私も食べるっ」

「………つめたっ!」

「………やり返しだ」


ピ、ピ、ピ、パシャッ


 撮った写真を香帆りんに見せてもらうと、見た瞬間大爆笑してしまった。

 文ちゃんがいつのまにか持っていたクリームパイを写真撮る寸前でかっきーの顔面に投げつけていたのだ。

 全然気付かなかったけど、今見てみたらダッシュで洗面所に向かうかっきーの後姿が見えた、どんまい。

 そしてその犯人である文ちゃんは、擦り付け終わったやつだと思う、少しだけ生クリームが残った紙皿を片手に、カメラ目線でいた。しかもちょっと怒った顔で。

 よっぽどさっきのみんなからの集中攻撃に怒っていたのだろう。そのやり返しがかっきーだったという悲劇。

 対して前の方にいた佳奈っちや香帆りん、そして僕は凄く平和だった。

 みんな同じポーズ、それに加え女子二人は生クリームを食べながらなのでとても満足そうだ。

 さらに今気付いたけど、僕のほっぺたに生クリームが若干ついていた。

 落としにいかないとな・・・あっ。

「みんなーありがとう! かなり激しいお祝いだったけど楽しかったよ!」

 と言い残して、かっきーの後を追うように洗面所へと向かった。




「かっきー大丈夫?」

「ん、まぁ…文はほぼ何も知らなかったしな、それであの仕打ちだから怒っても仕方ないだろ」

「あとで謝らないといけないかな?」

「ん? 裏でこっそり生クリーム食べていたくらいだから、大丈夫じゃない?」


燐火&美帆:中川智也! 誕生日おめでとう!!


燐火:ということで中川智也くんの誕生日です!

美帆:ちょっと燐火さんここきて正座してください。

燐火:・・・はい。

美帆:なんで投稿日が3月27日なんですか!

   智也くんの誕生日は19日ですよ!!

燐火:えっとですね

美帆:言い訳はいらないです。

燐火:忘れてましたすみません。

美帆:と、いうことで。作者の燐火さんがやらかしてますが。

   智也くんはいつも元気な僕っ子です!

   銃が使えないちょっと変わった存在だけど、近接武器の強さは本物!

燐火:はい、説明ありがとうございます。

   ちょっとバカな所もあるけど、良きも悪きもバカということです。

美帆:さて、いよいよCHAINの日常 第四弾にして作者が躓いておりますが!

燐火:うぅ…。次回もお楽しみにしていただけたら…な、と思います!

美帆:お楽しみにっ

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