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Gun Control  作者: 燐火
第二章 家族と夏休み
17/21

No.017 姉弟の苦労

「さぁて!次は誰の家にいくー?」

「佳奈っちの家がいいと思います!」

 佳奈の質問に対して、真っ先に答えたのが智也だった。

「ほら!多分残っている中で一番困らないのは佳奈っちでしょ!ね!ね!佳奈っちの家に行こう!行こうよー!ね!」

 かなりのごり押しに引く一同。

 

「・・・え?いきなり智也くんはどうしたの?」

「えっ、いや、ほらこれは、ねー?素直に佳奈っちの家がいいなーって思って…。」

「それは【他の人の家に行くことを進めて、実は僕の家に来てほしいアピール】ってやつ?ねぇ智也くんそうなの?」

「なっ!? いやそんなことはないよ? なんのフリでも無く本当に単純に佳奈っちの家が」

「よっし!じゃあ次は智也くんの家に行こう!そうしよう!」

 あぁ…智也、そんなこと言うからこうなってしまうんだ。

 こうなったらみんなの家に行くことは、ほぼ決定していたのに。なんで無駄な抵抗を試みたのかな…。




☆★☆




 日向学園北学生寮、海が近くにある影響か窓が大きく、全体的に開放的なつくりだ。

他の学生寮には一度も行ったことがなかったからこれが初めてになるけど、壁の色は俺が住んでいる南学生寮と同じだ。しかしこれもまた海の色と合っていてとてもいい。

 話変わって、近くに海あるんだから海いこうよ!っていう提案が昨日佳奈から提案されたのだが、海はまた別の日に来るらしい。それに香帆がちょっとしたプライベートビーチ的な砂浜を知っているらしく、海はそこに行くことになった。

 そして今、俺は何をしているのかというと。

文、佳奈、香帆と共に智也の部屋〔104〕の前で、待っているのだ。

何故部屋の前まで来て中に入っていないのかと言うと、智也がまだ中に入ってはいけない

と言っているのだ。その理由も明白で、部屋の奥からは智也らしき声が「姉さん!」やら

「本当にお願いだからちょっとどいて!」などと言う叫び声―――基、悲鳴が聞こえる。

「苦労…しているんだね…」

 と、同情も込めて香帆が呟く。様子を見るからに、香帆も智也くらい、またはそれ以上の苦労を積み重ねているようだ。

 事情がアレなので、別に外で待たされるのは良いのだが、いくら海が近くにあっても、いくら少し雲が出ていたとしても、今は夏だ。

 そう、夏なのだ。普通に今日も猛暑日でして。持参したアイスはほぼ解けていてまた冷蔵庫に入れなおさないといけないし、ジュースはぬるくなってきている。

 もう智也より持参したアイスやジュースを心配するようになってしまった。

 ―――いや、今も尚奥からは悲鳴が聞こえてくるのだが、それがもうみんな慣れてきてしまっている。それほどなのだ。


「まーだっかなー・・・」

 佳奈が不意にそう呟いた、すると扉の向こうから“タッタッタ”と廊下を歩く音が聞こえ、その音はだんだん大きくなりながら、こちらに向かってきている。

 

ガチャッ!


 と勢いよく扉が開き、開けられた扉の向こうから智也が登場する。

「はぁ…はぁ…はぁ…………、ごめん。お待たせ」

 体中汗だくで、息も上がっている智也。一体中でどんなことがあったか想像もつかない。

 智也の疲れ具合に少し驚きながら、玄関から部屋の奥を見ていた文が質問をした。

「おう、別にいいんだが…。中川の姉さんはどこにいったんだ…?」

 俺も玄関から少し覗いてみると、見える範囲では至って普通に綺麗に片付けられておりさっきまでの悲鳴が幻のようだ。

「う、うん。自分の部屋で大人しくしていて下さいと頼んでおいたから多分大丈夫、多分」

 なんか姉と弟の立場が逆転している気がするのは俺だけだろうか。

「まぁ、とりあえず暑かったでしょ。中に入って入ってー」

 ドアをさらに一段開き、みんなを招き入れる智也。

 文の家と同様に、香帆を先頭に突入していく。

 夏ということもあり、家具は必要最低限設置されておらず、解放的な空間となっている。

 風鈴の音色が響き渡り、とても涼しげな部屋だ。

「そういえば俺の部屋風鈴ないな…今度買―――」

―――バッ!

「にゃっ!」

「にゃっ!?」

 突然現れた20代半ばと思われる警官服の女性に、香帆がナチュラルに猫のような声で驚く。この人が・・・?

「なんだ智也可愛いじゃーん!え、なになに?あんたこんな子達と絡んでいるのー!?」

 どうやら智也の姉さんらしい。

「あっ、えっと…初めまして」

 先頭にいた香帆が挨拶をする。すると智也の姉さんは、香帆を二度、三度見しながら。

「やっば!何この子可愛すぎるでしょ!」

「あ、え、えぇ…?」

 戸惑いを隠しきれていない香帆。結さん同様、なんか大変なことになりそうだ…。

「あ、ごめんごめん、忘れてた! 初めまして、えっと。一応服装から分かると思うけど警察やってる中川 玲也《れいや》と言います!よろしくねー。ええっと・・・」

「あ、天野香帆と言います。よろしくお願いします」

 丁寧に挨拶をする香帆だが…

「香帆ちゃんね! わー可愛い名前!よろしくっ!」

あまりのテンションの差に違和感すら覚えるこの会話。智也が疲れるのも分かる気がする。しかもまだ俺も含めて3人も自己紹介を終えていない。これは・・・。

「えっと、玲也さん初めまして。私は星野 佳奈と言います。よろしくおねが―――」

「―――わー!こっちは美人じゃない!しっかも佳奈ちゃんとか可愛すぎるじゃん!え、もう羨ましい! 智也ずっるーい!」

「・・・」

 佳奈が黙っただとっ!?

 これはかなり強敵だな…。

「えーもう智也が女の子も連れてくるとか言っちゃうから、どうせそこら辺にいそうなふつーの女の子かなーとか思っちゃったけど全然違ったじゃん!」

「ね、姉さん、まだ自己紹介終わってない人もいるんだから。ね」

 智也の発言に活気を感じられない。既に相当な気力を使い果たしているようだ…。

 そして自己紹介も残るは2人、俺と文なのだが、どっちが先に言うかお互いに探りあいを入れていると、(ま、最後に言うのは嫌だし…)と玲也さんに聞こえないように呟いて。

「えっと、神楽坂 文って言います。よろしくお願いします」

「あー!この人が智也の言っていた友達と書いてライバルって読む人?」

「え、と、智也・・・?」

「・・・聞くな、聞かないでくれ」

 智也って文に対してそんなこと思っていたんだ…っておい!半泣きになるなよ!

 とりあえず間を繋ぐためにも自己紹介…。

「俺は井上 和樹って言います。よろしくお願いします」

「・・・普通ね」


 ごめん泣きそう。




☆★☆




「それにしても何しようねー」

「提案した人がそれ言う?」

「えー、でも来てみたかっただけだしー」

「今本音漏らしたよね、ね。もう今更いいけどさ」

 何度も言いますが、本当に智也の言葉に活気がないです。

「そんなことより!今からどーするのー?」

「ふむ、みんな暇のようねー」

 ちょっと落ち着いてきた玲也さん。何かと普通に混ざっている。

「あ、そういえば玲也さんって、警察のどこ所属なんですか?」

 そういえば、玲也さんは服装通り、職業は警察官だ。文に言われて俺も少し気になった。確か智也の話によると結構すごいところにいるとか・・・。

「んー?私は愛知県警銃犯罪対策部所属だよー」

「銃犯罪対策部って…例の最近作られたところですか?」

 えっと、文と玲也さんで話が進んじゃっていますが、とりあえず聞くだけ聞いてみよう。

「そそー、そこで一応課長っぽいことやってるー」

「それって結構凄いんじゃ…?」

「いやいやーそうでもないよ。さっき文くんが言ってくれたように、本当に最近設立されたから、階級なんて今はまだ適当なもんだよ。まだ実験段階だし」

「実験段階…?それはどういうことで?」

「警察庁内部から、刑事課と別に置くことは必要なのか?という声が結構多くてねー。私は、今こんな社会だから必要かなーって思っているんだけど。なかなか通らなくて…んで愛知県警に実験的に設置されたってわけ」

「なるほど…それで、仮にも課長さんがこんなところにいていいのですか…?」

「うん?んー…、いいんじゃない?いいのよいいのー!目の扶養だよ!」

 と言いながら香帆と佳奈を交互に見る玲也さん。なるほど、目の扶養ねぇ…。

 しかし、よく文は警察の階級とかわかるなぁ…、俺にはなんのことかさっぱりだ。

 実はこうして会って話せるのはとても貴重なことだったりするかもしれないし、もしかしたら普通の警察署に勤務している街で会って話しかけられるくらいの人かもしれない。

 話によると玲也さんも銃関係の部署?にいるらしい。

 実際に会ってみて感じたのだが、智也の聞く話よりは全然ダメ人間じゃないっぽい…。俺達の前だからっていうのもあるかもしれないが、それでも人前で優しく接してくれる良い人だ。俺の中で玲也さんの好感度が少しだけ上がった。

 別に自己紹介したあとの言葉で好感度底辺まで下がったわけじゃないからな!


 と、いきなり玲也さんの携帯が鳴った。

 携帯の画面を見て、少し顔を歪めゆっくりと携帯を耳につけた。

「はい、中川ですが……はい、え、そ、そうだったんですかー?すいません…はい!行きますのですぐにはい!はいはーいはい!」

 …最後無理矢理切ったようにも見えますが!?

「どうしたの、ですか…?」

 気になった佳奈が少し恐る恐る聞いてみる。

「いやそれがね?本当は今日仕事だったのよー、でも智也が家に友達連れてくるとか言うからさーちょっと休もうかなーとか計画していたんだけどやっぱ呼び出しくらっちゃった」

「それってまずいのでは…」

「うん、まぁ怒られるね。それでね!実はちょっと良い話があるんだけどさー!」

 良い話、とは。少しだけ嫌な予感がする。

「一人怒られるの嫌だしー…、みんなも一緒に来てみない? 来て損はないと思うよー!」

「来て損がないとは…?」

 その発言に思わず質問を返してしまった。しかし、俺の質問に玲也さんは少しニヤッと笑いこう答えた。

「最近愛知県警が建設した、射撃練習所の視察よ」





☆★☆




「というわけで日向学園の子達連れてきちゃったわけだけど、まぁいいよね?」

 警察の射撃練習所ということもあり、ちょっとした興味本意で付いて来てしまったのだが、今玲也さんと会話しているのは玲也さんの上司らしき人。なんか交渉しているみたいだけど…本当に来てしまって大丈夫だったのだろうか。

「まぁ…中川が言うならいいか…責任は取らんぞー」

「ありがとうございます!」

 どうやらOKは出たみたいだ。

 タッタッタと軽く走りながらこちらへ戻ってくる玲也さん。

「うん!入っていいってー!けど条件付きね」

「………条件?」

 香帆が首を傾げる。その仕草に「かわいいー!」と言いつつ。

「そ、条件。実際に銃の射撃テストに付き合ってもらうっていう条件!」

「なるほど、俺らにとって損はないな…それにまだ使った事ない武器も使えそうだし、いいんじゃないか?」

「うん、文くんの意見に私は異論ないよー?」

「うん、僕もいいと思う。(というか僕は付き合わないと…)」

 あ、久しぶりに喋った智也。何か呟いたことに関してはスルーしておこう。

「いいと思うよ」

 今更この決定に賛同する必要もないと思うが、一応言っておいた。

「よし、じゃぁレッツゴー!」




「ねね、姉さんの印象ってどんな感じ…?」

 射撃テストが行われる場所に移動する間、智也が少し近づいて話しかけてきた。

 玲也さんの印象か…

「昼間っから酒飲んでいる人って聞いていたけど、それなりに良い人なんじゃない?」

「そう見えるよねぇ…」

「うん…、まぁファイト」

「ありがと…」

 いつもの智也じゃない!多分友達の前で大人しくしている姉さんに複雑な気持ちを抱いているんだろう。

 っと、智也と一会話し終わったところで射撃場に辿り着いた。




「はいっ!ていうことで、好きな武器取って好きに狙撃してねー。一応ここの動作がしっかりとしているかどうか確認するだけだから、適当に遊んでいいよー」

 と言われて、目線の先にあるのは武器の数々。射撃場の壁に掛けられている武器は20を越えるだろう。その中には見覚えのある武器もあったが、見たこともないような武器もあった。

 真っ先に動き出したのは香帆だった、壁に掛かっている狙撃銃を取って、銃撃位置に立つ。多分あれはドラグノフ狙撃銃だ。

 俺は少し香帆の狙撃を見ることにした。

 トーナメントでは何回も助けてもらった正確な狙撃だが、練習以外その姿を見たことはない。これも練習とは言っちゃ練習なのだが、機会が少ないため自然と興味が沸いた。

 香帆がしばらくその場で立っていると、奥のほうのベルトが動き出し、やがて的が現れた。的は中心部分が赤く塗られ、その周りを黒。さらにその周りを白と、ダーツのような的になっている。どこにでも見かけ、容易に連想できるあの的だ。

 素早く腰を落とし、銃を固定し安全装置を外す香帆。

 学校の銃は声で安全装置を解除できるが、ここの銃は違う。それにも関わらず普通に手動で安全装置を解除する行動は流石だ。

 そして10秒もしないうちに標準を定め―――


バァンッッ!!


 見事命中し、的が揺れる。しかし当たった場所は中心部より少し左に逸れており、黒い部分に命中している。撃ちはじめがこの命中率だ、すごすぎる。

 再びベルトが動き出し、新たな的が出てくる。

「右に5mmかな…」

 香帆がスコープを覗きながら呟いた。もしかして、あの一発で銃の反動補正がある程度掴めたのか!?

 再び狙いを定めて、2発目を撃つ。

 的を見てみると、ほぼ誤差なく中心部、赤い部分を撃ち抜いている。

 やはりSR1位の実力はすごい。


 よし、俺も何か参加することにしよう。

 俺は壁に掛けられていたM4カービンを手に取り、射撃位置に立つ。

 みんなもそれぞれ自由に銃を手に取り、射撃位置に立つ。その中には智也も含まれていた。普段銃を使わず刀を使う智也だが、今回ばかりは流石に銃を使うようだ。

 ベルトが動き出し、的が俺の一直線上で止まり、準備完了。

 安全装置を解除し狙いを定める。狙うは中心赤い部分。

 息を吐き、止め―――撃つ!

 トリガーを思いっきり引いて、銃が弾を吐き出す。

 普段使っているAN94より反動が少し大きく、腕に力を入れる。

 赤い部分を狙い続けて、1マガジン使い終わったところで撃つのを止める。

 一応ほぼ的に当たった気がするんだが…どうだろう。

 ふと横のモニターに目を向けてみると、そのモニターの中に的が映された。

 香帆を見ていたときは気付かなかったけど、しばらくモニターの画面を見つめていると的の中に青い点が浮かび上がってきた。多分これが被弾点なのだろう。

 赤い部分は掠っているものの、真ん中に命中はしていない。

 次に黒い部分だが、被弾点はここに集中しているみたいだ。

 20発中半分くらいの数が黒い部分に示されていた。白い部分は少なく。命中率が良いのやら悪いのやら…。

 武器を選びなおすついでに、みんなの様子を見てみる。

 佳奈や文はまだ銃撃を続けているようだ、智也は奥のほうでやっているから見えないけど…香帆は既に3つ目のSRで狙撃練習を行っている。

 ま、これも何かのボランティアだし、最近銃撃ってなかったからサビ落としとして頑張るかな…!


 その後、俺達は1時間ほど銃撃練習を続けていた。

 たまに武器を変えたり、何回か続けて同じ武器を使ったり。

 しかし、1時間も続けているとやはり多少は疲れてくる。

 俺以外のみんなも疲れが目に見えるほど疲れ始めてきている。

 それを察したのか、

「そろそろ終わりにしよっか…?うん、みんな疲れてきているみたいだし、なんかジュースでも奢るよ」

 という玲也さんの一言で、射撃練習は終了した。

 久しぶりに銃を握ったが、ある程度感覚は戻った気がする。

 警察の施設を利用してもらえるなんて、よく考えたら凄いことだったし良い体験だったんじゃないかな。

「っと、その前に私もちょっとやろっかなー!」

 玲也さんが立ち上がりながら言った。

 そういえば、玲也さんここに来てまだ一度も撃ってなかった気がする。

 ベレッタ92を手に取り、射撃位置に立つ玲也さん。

 しばらくすると的が流れてきて―――

パンッ!パンッ!

 ―――的が止まる前に打ち始めた。

 的が移動しながら揺れている、命中はしているようだ。そしてやっと的が止まったというところで、次のマガジンに装填。慣れた手つきで装填を終わらせ、すぐにまた撃ち始める。

 ・・・!?

 普通、銃というのは反動が少なからずともあって、それにより連射による命中率が段々低下していくのだが、玲也さんの腕をよく見るとほとんどぶれていない、まるで何かに固定されたかのように銃がまっすぐ的に向いている。

 玲也さん、もしかしてすごい人なのかもしれない。いや、智也から話を聞いた時点でいろんな意味で凄い人だとは思っていたけど、本当に凄い人だ…。

 やがて銃声は鳴り止み、静寂がやってくる。

 みんな無言で横の画面を見つめる。

 すると、青い表示は、的の赤い部分一点を示していた。

 そんな馬鹿な、的が移動している時点で5発以上は当たっているはずだぞ?

 なのに、示している部分は一点ということは…。

「全部、中心部に命中させた、のか…?」

 疑いつつも、その真実を口にする文。

 画面の左上には被弾数30発と表示されており、玲也さんの使用したベレッタの装弾数は15、2マガジン使ったから合計30発となる。

 つまりそれは、当たったのは30発、しかも全部中心の赤い部分に命中していることを示している。

「すげぇ…」

 思わず声を漏らしてしまった。

「ふふっ、ありがと。まぁ今日はたまたまよ」

聞こえてしまったのか、反応してくれたが。たまたまでもこれは凄い。

「さぁ、みんな何がほしいー?」

 んー…、やっぱこういう疲れたときは炭酸がいいかな。

「じゃあ俺はコーラで」

「僕もコーラで」

「なら俺もコーラにするかな」

 俺がコーラを頼んだら、男性陣みんなコーラを選んだ。

 3人でお互いを見合い、無言でハイタッチ。

 ヤバイ、楽しい。

「えっと…、私麦茶で」「私は緑茶をお願いします」

 佳奈が麦茶を頼み、香帆が緑茶を頼んだ。

 こちらは食い違ったようだが、二人は今やっていた射撃練習の話をしていた。

 相変わらず仲がいいな…。


「はーい、買ってきたよー!」

 両手にペットボトル5本を抱えて持ってきた玲也さん。

 今にも落ちそうなんだが、とりあえず香帆たちにお茶を渡す。そして空いた手でコーラを持ち直し―――

「井上くんいっくよー!」

―――嫌な予感しかしない。

 左手に持った一本のコーラを、ブラブラと回し始める玲也さん。

 まて、まてまてまてまてまてまて!!!!!

「ほーい!」

「マジかよっ!」

 綺麗な半円を描きながら俺の元へ飛んでくる黒いペットボトル。

 両腕で優しく受け取って全身を使って衝撃を和らげる。

「もう!あけるときこれどうするんですか!」

「大丈夫、さっき振っておいたから」

「それ冗談ですよね!?」

「うん、冗談冗談」

 もうあけるのが怖い!

 とか言っても俺の喉は既にコーラを求めているので、恐る恐る、ゆっくりあけてみる。

 ぷしゅっ、といつもとはちょっと強い音を発しながら泡を立てるコーラ。すぐにキャップを閉めて様子を見る。

 まぁ、なんとかなりそうだ。

「じゃあ、智也もいくよー」

「うん」

 え、智也のその反応…まさか投げることが日常茶飯事だったりする?

 何気なく行われた会話に驚きつつ、智也と玲也さんを見ていると、

「ほーいっ」

「よっ、と」

 普通に受け取っているよ。え、なんかすっごいはしゃいでいた俺恥ずかしくないですか?

 そして何事もなかったかのように普通にあけようとする。

 一方、文は玲也さんから普通にコーラを受け取っていた。

「こんなイケメンにコーラ投げられるわけがないじゃん!」

 できるだけ聞こえないように言ってほしかった。


ぶっしゃぁっ!!

 いきなり、智也の方から嫌な音がした。

 見てみるとコーラを盛大にぶちまけていた。

「あ、言い忘れてたけど智也は本当に振ってあ……もう手遅れか」

「…姉さんやりすぎ。着替えとかどうするの」

「あー…、家帰らないとないわ…」

 これは智也。怒っていいんだよ?うん、十分怒っていいと思う。

「じゃ、みんな帰るかー」

 玲也さんに反省の色なし…。



□■□




「じゃーねーみんなー」


 ・・・はぁ、疲れたー今日は。

 みんながいる中、姉さんの面倒見るのがこんなに疲れるとは思ってなかった。

 服も濡れるし、嫌な銃撃もしなきゃならないし。

「みんな帰ったー?」

「あぁ、帰ったよ」

「いやぁーみんな銃撃うまかったねー、それに可愛い子もいたし」

「銃撃、ねぇ…」


「ま、みんなあの子よりはうまくなかったけどねー…」

「あいつの話はしないでくれ!僕もう寝る」

 あぁ、もう今日は寝よう。さっさと寝よう。そうしよう…。




□■□




 ・・・はぁ、すっかり寝ちゃって。

 いいじゃない、ちょっと智也が人連れてくるからってどんな服着ようか思っていたら。

「姉さんとりあえずその露出度高い服はやめてくれー」

 だとか、

「なんでこんなに服散らばっているのー」

 とか。

 そしたらなんか上司から電話掛かってくるし、結局あんな暑苦しい服になっちゃうし。

 智也もなんか元気なくなっちゃうし。

 調子狂うなぁ・・・。

 ま、それでもみんな良い子っぽいし、安心っと。

 ・・・おやすみ、智也。

燐火:はい、おはこんばんにちわー。

   ガンコン十七話目は、姉弟の苦労です。

美帆:と、いうか。主に中川しか苦労してないんじゃないかな・・・?

燐火:いやでもほら!最後に玲也さんの苦労もちらっと見えてわかったんだから!

美帆:まぁ確かに、姉は姉で大変そうだったけどねぇ。

燐火:それ故のサブタイトルです。

   人は見えないところで苦労してるもんですよー。

美帆:私も台詞奪われたり色々大変なんだけど・・・。

燐火:えっ?なんか言った?

美帆:なんでもないよもう!ほらっ、次回次回!

燐火:え、は、はい。と、いうことで!

美帆:次回もお楽しみにっ!!

燐火:今後ともどうぞよろしくお願いします!!

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