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Life   作者: 夜桜小春
1/1

序章

ひとつ、またひとつ落ちてゆく。


落ちたのは何―?


それは世の中にありふれたモノ。


それが何なのか分からない。


それが何なのか。


知らない方がいいのかもしれない。


今日もひとつ、またひとつ…


落ちてゆく―。



揺れる揺れる―。


水の中に―


どんどん深い場所に落ちてゆく―。


徐々に光が小さくなっていく―。


戻ることは出来るのか―?


否―


不可能であろう―


薄れゆく意識の中―


声が聞こえた気がする。



気がつくと霧の中に立っていた。


ここはどこなのだろう―


そんな疑問を抱きながら霧の中を歩き続けた。


しばらく歩いていると霧が晴れてきた。


ふと後ろに気配を感じた。


「誰―?」


「新人か―?」


気配の主は問いかけを無視して逆に問いかけてきた。


どうやら男のようだ。


声の感じからして年は自分よりは上だろう。


質問の意味が分からずに黙っていると男の方から語りかけてきた。


「すまないね。どうやら君は何も覚えていないようだ。」


男は少し考え込むとこう告げた。


「直に世話係が到着する。詳しい話はその者に聞いてくれ。」


男はそう言うと踵を返して歩き出した。


「あ、あの―。」


何を言いたいのか分かったらしく男は言った。


「ん? あぁ…私か? 私には名前が無い。皆からは『管理人』と呼ばれている。」


「管理人―。」


「そうだ―。おっと時間だ―。」


男はそう言うと再び歩き出した。


「君とはまた会えそうだ―。」


次の瞬間男の姿はもうなかった。



入れ替わりに別の気配がした。


「あなたが新しく入ってきた人ね?」


声の主は女のようだった。


年は同じくらいだろうか―?


女は話を続けた。


「はじめまして。 私はあなたの世話係の楓―。 小鳥遊楓よ―。」


「小鳥遊……楓―。」


「楓でいいわ。」


「それでー。」


「―?」


「それで君はどこまで覚えていないのかな?」


そういえば―。


そう思いながら思考を巡らせる。


だがしかし何も思い出せない。


しばらく沈黙していると楓は察したように話しかけてきた。


「そう―。何も覚えてないんだ―。」


楓はしばらく考えると言った。


「名前が無いと不便ね―。 そうだなぁ…真斗。なんてどうかな?」


「真斗…。」


「そ、いい名前でしょ?」


真斗か―。


確かに名前が無いのは不便である―。


一時的とはいえ名前があるのはいいかもしれない―。


「いい名前だね。」


気がつくとそう答えていた。


「そうでしょ? 結構気に入ってる名前なの―。」


楓は一瞬笑顔になるとまた悲しい顔をした。


何か悲しい過去でもあるのだろうか―。


「大丈夫?」


「気にしないで―。 それより街を案内するね。」


楓はそう言うと歩き出した。


俺は遅れないようにその後をついていく。




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