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第8話

「おっかえり〜」


無月と祢音の2人が学校から帰ってくるなりメデスが玄関で迎える。


「どうしたの?その傷」


メデスの首には朱く滲んだ包帯が巻かれている。


「ああ、これ?ちょっとね、外で遊んでたら掠り傷ついちゃってね」


けろっとした顔でメデスは首の包帯を指さして言う。


「誰かにやられたのか?」


カバンを肩に掛けた無月が犯人を問い詰める刑事のおうな鋭い眼で指摘をする。


「ふ〜ん、何でそう思う?」


メデスは目を細めて無月の目を見て言う。


「普通に生活してればそんなトコに傷はつかないし、


包帯に滲んでいる血の量が掠り傷の程度じゃない」


「おみごと!そうだよ。襲われた、中々の手練れにな。最後にゃ勝ったけど」


メデスは強敵に襲われたにも関わらず、全く焦りのない笑顔で拍手をする。


「もう総帥は動いてるのか?」


「そうみたいだな。ちなみに無月、お前を探してたみたいだぜ。


オレも名前を言ったら襲われたんだけどな」


「じゃあ私も狙われてるのかな…」


祢音は俯いて悲しみが込められた声で言った。


「だろうな。まったく、子を殺させる親って何だよ」


無月は片手で頭をかかえ溜息を一つした。


「気をつけておいた方がいいぜ」


「ああ」


「うん」




次の日、いつも通りメデスは無月と祢音を見送り外に出かけた。




  〜無月・祢音SIDE〜


(何で授業ってのはこんなにメンドいんだろうな)


無月は夢うつつな眼で黒板に書かれた白い文字を眺めている。


「おいおい、寝るなよ」


後ろから誰かががシャーペンの先で背中をツンツンと突くのがわかる。


「おい!新田康宏、何をしている?」


無月の後ろに座るのは新田、突いてきたのはその新田だった。


「い、いえ、何でもありません」


新田は手を引っ込めると慌てふためいて答える。


「ふん」


英語教師は鼻を鳴らすと授業に戻った。


その後何でオレが怒られるんだよ、という新田の声が聞こえた。


そして今にも授業が終わろうとしたその時――



ガシャン



1階で激しくガラスの割れる音がした。


ちなみに無月たち、1−Aの教室は4階にある。


「何だ!?」


教室内の男子の一人が声を上げる。


「気にするな。どうせどこかの誰かが巫山戯ふざけてガラスでも割ったんだろう」


英語教師はわかりきっているのか至って冷静だ。


(おかしい、何かを感じる)



キーンコーンカーンコーン



「さて、今日の授業は終わ――」



ダダダダダダッッ



「ぎゃああああ!!」


銃声と共に下の方で誰か男子の叫びが聞こえた。


「何だ!?」


さすがに今のは驚いたようで英語教師も声を上げた。


「きゃあああああ!!」


今度は同じ方向から女子の悲鳴が聞こえた。


「お前らはそこでおとなしくしていろ!決して来るんじゃないぞ!」


英語教師はそう言うと持ってきた教科書などを置いたままにして教室を走って出て行った。


「おいおい、何だよ今の」


「普通じゃないぜ」


「悲鳴があったぞ」


と細々とした声が辺りから上がる。


「お兄ちゃん、何か感じない?」


頬杖をついてボーっとしていると右隣に座っている祢音に耳元で囁かれる。


「ああ。それにこんな小さな島で銃声なんて変だ」


それはどうやら他の教室も同じのようで廊下を見れば、


隣の教室で授業をしていたのだろう教師が1−Aの教室前を走っているのが見えた。


「見に行こうぜ」


教室で誰かが興味津々に言った。


「「お、いいね」」


そして肯定する者が現れた。


「やめなよ。先生ここにいろって言ってたしさ」


はっきりと不安が顔に表れている女子が止めにはいるが


「大丈夫大丈夫、ちょっとだけだから」


そして3人教室を出て階段を降りてしまった。


すると数分後階段を駆け上がる音がした。


「嫌な予感がするな」


と無月は呟く。その予感は見事的中。


帰ってきたのは先ほど野次馬に行った男子ではなかった。


「お前ら静かにしろ!死にたくなかったらな!!」


マシンガンを1丁づつ持った覆面の男が3人教室にそう叫びながら入ってきた。


一斉にその場がシンと静まり、音一つ立たなくなる。


(そういうことか。だがここで動くのは危険すぎる。どうする…)


無月は頬杖をついたまま動かずに男たちの覆面で覆われた顔を見ていた。


「安心しろ。おとなしくしてりゃあ命まではとりはしねぇよ」


そう言って男は笑う。笑うといっても覆面の中の顔の緩みで推測しただけだが。


「はぁ…はぁ…はぁ…」


先ほど3人の男子を止めようとした女子から荒い息づかいが聞こえる。


元々気の小さい女子だったし、この状況では耐えられないのだろう。


しかも一番前の席だし、武装した男は目の前だ。


そして見れば体が震え、カタカタと音を立てている。


物音一切しない静まり返ったこの場ではそれははっきりと聞こえる。


「鬱陶しい!静かにしろ!」


男の一人に銃口を突きつけられその女子はビクンと跳ねる。


「死ぬのが恐いか?ぁあ!?」


「は、はい」


女子は今にも消えそうな声で答える。


「ふふ、オレたちに反抗の目を向けているヤツもいるようだからな。


見せしめにしてやろうか」



ダダダダダダッ



「あ……」


心臓に何発か撃たれ、悲鳴も怒りの声もなくその女子は倒れ死んでいった。


「アハハハハハハハハハハハ、刃向かったヤツはこうなるんだ。覚えておけ!!」


祢音の前にいる女子が必死に泣くのを堪えているのが見えた。


その子は撃たれた女子といつも一緒にいた友達だった。


祢音はその子を哀れんだ目で見ていた。


そして男は再び教室を歩き始める。


今のが効いたのか誰も男たちと目を合わせようとしていない。


(ちっ、みんなの精神も限界に近い。このままでは…)


「このやろっ!」


すると一人の男子が男の隙をついてマシンガンを奪うと奪った男に銃口を突きつける。


教室内の目が全てその男子に向けられる。


「お前ら!こいつを殺されたくなかったらここから離れろ!!」


と叫ぶが突きつけられた男は動ずるどころか笑っている。


「そこから離れろ!」


無月は叫ぶが遅かった。


「うわっ」


男は銃を奪った男子の足下を蹴り払い男子の体がよろめいたところでマシンガンを再び奪い返すと


尻餅をついた男子に突きつけた。


どうやら相当訓練の受けている者たちなのだろう。


「バカなヤツだな。死ね」


「あ…うあ…あ……」


男子は先ほどの威勢はどこにいったのか恐怖でうまく喋れていない。



ダダダダダダッッ



「うあああああああ!!」


男子は文字通り蜂の巣のように銃弾が通った穴だらけとなる。


「きゃあああああ!!」


撃たれた男子の後ろの席にいた祢音の親友、千春は大きな悲鳴を上げる。


「黙れと言っただろ!!」


教壇に立っているもう一人の男が千春に銃口を向けた。


「ゴメンネ。動くよ」


その瞬間祢音が飛び出し千春をはねけるとマシンガンから放たれた全ての銃弾を


銃で他の生徒に当たらぬよう上下に弾き返した。


「何!?」


全ての銃弾を弾き終えると傍にいた先ほど抵抗した男子を撃った男のこめかみに銃を突きつける。


「許さないよ」



ダァン



「ぐあ…」


男の血が辺りに飛ぶ。


「きゃああああ!」


千春ではない他の何人かの女子が叫んだ。


「て、てめぇ!」


教室の一番後ろにいた男が祢音にマシンガンを向ける。


「ちっ、面倒な事を」


そう言って無月も刀を取り出して男の持つマシンガンを何回も斬り落とした。


「なんだこいつ…ら」


そして無月は男の左胸に刀の切っ先で刺した。


「許さないよ」


間髪入れず祢音は教壇にいる男にも銃弾を放って殺した。


「……………」


その銃声を最後に再び教室が静まり返った。


そして生徒たちの視線の全てが無月か祢音のどちらかに向けられている。


「悪いな。みんな」


無月はそう言うと短い呪文を唱え、忘却術を使い教室内の生徒を眠らせた。


「まだ敵がいるはずだ。時間がないし、祢音、二手に分かれるぞ」


「うん。職員室前で集合だからね」


「了解」


2人は教室から出ると左右に分かれて走っていった。




2人は他の教室にいた強盗団らしき団体を殲滅していき職員室前で合流した。


教室では死人がでている所がいくつかあった。


「あとは職員室だけだね」


「もうバレてるだろうからな一気にいくぞ」


「了解」


そして2人は扉をぶち破って中に入った。


「あれ?」


「何でお前がここにいるんだよ」


そこには5人、マシンガンをもった男たちが職員室の至る所で死んでおり、


職員室の中心にはメデスがゲイボルグを持って立っていた。


「よ、何か大変な事になってたみたいだな」


そして職員室の一角には猿ぐつわを噛まされ手足を縛られ眠っている教師たちがいた。


その中には事件発生時に授業をしていた英語教師までいた。


「大丈夫、記憶は消しておいたから。


ま、オレが現れたところからだけだけど」


「そんなのオレたちもやってる。


それより何でお前がここにいるか聞いてるんだよ」


「ああ、散歩してたら物騒な得物を持ったやつらが商店街を車で駆け抜けてったから後を尾けたんだよ」


メデスはそう言って槍をしまう。


職員室内を見渡せば机の上にあったであろう書類やファイルが散らかっている。


「随分暴れたみたいだね」


「まぁね、さすがに5人相手じゃ気遣ってられないよ。


それにしてもよかったな2人ともケガなくて」


「でも殺された人もいるよ」


祢音が俯いて死んだ生徒たちの姿を思い出すようにして言う。


「でも何でここにこいつらが来たんだ」


メデスは血を流して倒れている男の顔を見て言った。


「どうやらこいつらは操られてたみたいだ。よく見れば目が正気じゃなかった」


「あ〜そういやそんな感じがしてたな」


メデスはよく気がついたもんだと言って再度男の顔を見た。


「やっぱりお父さんが…?」


「否定したいがこの状況では一番怪しいだろう」


すると無月と祢音は校舎の外が騒がしくなるのに気づく。


「ああ、オレが警察に連絡したんだよ。もう来たのか」


と言ってメデスは窓の前まで移動すると窓から外を覗く。


「じゃ、オレは帰るな。2人ともちゃんと教室に戻って大人しくしておけよ」


「わかってるよ」


「ありがとね、助かったよ」


メデスはニッと笑うと見つからないように窓から出て空を飛んで帰って行った。


「じゃ、戻るか」


「うん」


そして2人は駆け足で教室に戻った。


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