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第7話

桔梗の遺体は組織の方で色々と世話をしてくれたようだがリビングは荒れたままだったので、


3人はまず荒れたリビングを片付け、


その後無月とメデスはリビングのソファに向かい合って座る。


「さて、どうするんだ?総帥がいる所なんてわかってないんだろ」


「それは組織の方で探してくれるようだが、ここでただのんびりと過ごす事もないだろ。


こっちはこっちで何か行動しないとな」


「じゃあ具体的に何をするの?」


祢音が3人分の麦茶を持って来ると無月の隣に座った。


「そうだな…手始めに親父の書斎でも調べて何か手がかりのようなものでも探すか」


というわけで3人は日向の書斎を調べる事にした。




「見つかったか?」


無月は机の引き出しを覗きながら他の2人に声をかける。


「いんや、見つかるのはわけのわからん書類ばっかりだ」


「こっちもそれらしいのはないよ」


というそれぞれ違う棚を探している2人の返事が返ってくる。


そしてカラスの鳴く夕方頃になり祢音は気づいたように呟く。


「もしかして本拠地あっちに何かあるんじゃない?」


一番下の引き出しを探し終えると後ろから聞こえてくる祢音の声に振り返る。


「そういや向こうに総帥専用の部屋ってのがあるらしいな。じゃ、作戦の立て直しだな」


探し終え、伸びをする無月の肩に手が乗せられる。メデスの手だった。


「まぁそう焦る事もないだろ。それより飯にしようぜ、飯。


オレ久しぶりに祢音ちゃんの手作り料理食いたいんだよな〜♪」


そう言ってメデスは手を無月の肩から祢音の肩へと移動させる。


「無類の女好きな所は相変わらずのようね」


祢音は引きつった笑いをしてメデスへと振り返る。


「いや、それは違うな。オレは女性であれば誰でも優しく、そして紳士に接するんだよ。


つまりポリシーだ」


メデスは全く自慢する事ではないのに気づいてないのか、誇らしげに話している。


「別にいいけどさ。じゃ、支度してくるよ」


そう言って祢音は日向の書斎から出て行った。


「さて、祢音ちゃんが夕食作ってる間にここを片付けるか」


「そうだな」





「祢音ちゃんの料理は相変わらず美味いな〜♪」


メデスは祢音が運んできた料理を次々に平らげていく。


「そりゃどうも」


祢音は受け流すような感じで礼を言う。


「結局何も見つからなかったな。総帥を捜そうにも見当すらつかねぇんだろ」


メデスは秋刀魚の塩焼きに手を伸ばすついでに箸の先を向かい側に座る無月へと向ける。


「…………そういやそうだな。


おまけに明日は月曜だから学園にも行かないとな」


そう言うと同時にメデスは無月を見て目を丸くする。


「お前ら学校なんか行ってんのかよ!?」


「?ああ、そうだが」


「そんなメンドいトコによく行けるな。オレも高校は卒業したぜ。


出席日数ギリギリだったけど成績はよかったからな」


と言ってメデスはヘヘッと笑う。


「…………」


無月はメデスの言葉を無視し食事を続ける。


「そうなるとオレは暇になるな〜。この島でも見学させてもらうか」


「そうしろそうしろ。今すぐ行ってこい」


無月は飯を一口含んだまま話す。


「いやいや、今じゃなくても別にいいだろ……ごちそうさま」


メデスは意外にも行儀よく手を合わせて言うとダイニングからリビングに向かう。


「オレはここで寝させてもらおうかね」


リビングのソファの端にクッションを置くとそれをポンポンと音を立てて叩く。


「「え!?」」


無月と祢音は同時に疑問の声を上げる。


「ち、ちょっとまて!まさかお前ここに泊まる気か!?」


そして無月はテーブルをバンと叩いてからメデスを刺すような勢いで指さす。


「そうだけど?オレここ以外に行くトコねぇもん」


メデスは当然だとでも言うような顔つきで話す。


「野宿させるわけにはいかないし、仕方ない…かな?」


と言って祢音はメデスをチラリと見る。


「だな…はぁ…」


無月は了承すると小さな溜息を一つする


「サンキュ。しばらく居候させてもらうぜ」


メデスは即座にソファに寝転がるとそのまま寝息を立てて寝てしまった。


「おいおい。早速寝てやがるぞ。今のうちに不法侵入で警察に呼ぶか?」


「やめておこうよ。美人警官でもいたら大変な事になるよ」


「そうかもな…」


2人は呆れ顔で横になっていびきをかいているメデスの顔を見た。






「じゃ、行ってくるね」


翌朝、学園に行かなければならないので無月と祢音は玄関に立ち、メデスは見送る。


「いってらっしゃ〜い。学園見に行くからね」


「来るな」


間髪入れずに無月がメデスを睨んで言った。


「それは私も遠慮しとくよ」


「そ。じゃオレは商店街でもぶらぶらしとくよ」


メデスはあっさりそう言って頭の後ろで手を組む。


「いってきま〜す」


そして2人は自宅から出て行った。


「さて、オレもぶらぶらしてくるかね」


それに続いてメデスも家を出た。





  〜メデスSIDE〜


「何かおもしろいもんねぇかな〜」


メデスは商店街に来ると歩きながら店を眺める。


「ん〜…」


メデスは洋服店の前で立ち止まり中を覗くと


「ここだな」


と言って入った。


店に入るといらっしゃいませという若い女性店員の声がする。


「やぁオレここの観光に来たんだけどさ。暇だったらこの島案内してくれない?」


するとメデスはいきなりその店員に(ベタな?)ナンパをしてきた。


「い、いえ。今は仕事中ですので」


当然(?)のごとく店員は愛想笑いをしながら拒否する。


「だったら終わったらでいいからさ」


しかしメデスは挫けず続けてアタックする。


「あ、あの――」


「ちょっとお客様、店員へナンパはやめて下さい」


胸の名札に店長と書かれている女性がそう言ってメデスを止めに入る。


「あなたはこの店の店長で?その若さで店長とは。


できる女というのはお美しい方ばかりだ。


どうです?今度一緒にお茶で―――もっ!!?」


最後の一文字を言う前にメデスの右頬に強烈な平手打ちが炸裂する。


「申し訳ありませんが私は軽い男とは付き合わない主義なんです」


そして決めの一言が俯せに倒れているメデスに浴びせられる。


「そ……そうです…か………」



☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



バシィッ



「さようなら!」


メデスは洋服店を出た後も数回ナンパをしていたが成功0。


あまりのしつこさに頬をしばかれたのも今のを含め4回ほどあった。


「何度やってもだめか。仕方ない一人で見て回るか」


やっとメデスは諦めると負のオーラを纏いながらトボトボと歩いて商店街を出て行った。




「ここがこの島一番の名所『水月湖』か意外とでかいな」


水月湖は両側を木に囲まれた舗装された道の先にあり、


島にある湖にしてはでかく島一番の観光名所となっているため辺りにはベンチや放置された屋台がいくつかある。


今は昼であるためただのでかい湖にしか見えない。


「デートにゃ最適だが月が出てないから魅力半減だな。夜にまた行ってみるか」


とメデスが振り返ると茶髪の男がポケットに手を突っ込みながらこちらへ歩いてくる。


「お前が如月無月か?」


いきなり男はそう言った。


「いや、違う。オレはメデスだ」


そう答えると男は慌ててポケットから一枚の紙を取り出す。


「メデス?メデスメデス……」


何かを探しているのか、名を連呼しながらメモ用紙を眺めている。


「あ〜〜…メデスぅ……抹殺決定」


男はそう言ってメモ用紙をしまうと1本の短剣を懐から取り出した。


「結界発動っと」


メデスは結界を張り2人を外部から遮断する。


「死ねやぁあああ!!」


こちらに向かって走り出すと短剣をメデスの喉元目掛けて突き出してくる。


「おっと」


メデスは右へ避けると男の鳩尾にボディーブローくらわすが


「ちっ」


男はバックステップして威力を軽減させた。


「そんなに甘くはないか。オレも少しは頑張ってみるかな」


そう言うとメデスは魔法で背丈ほどある槍を取り出した。


「『ゲイボルグ』を扱うオレの相手が務まるかな?」


と槍をクルクルと自由自在に振り回しながら言う。


「それはこっちのセリフだ!」


そして男は短剣を振り上げ、再び向かってくる。


「くらえっ!」


男は小さくジャンプし、たたっ斬るようにして短剣を振り下ろす。


「くっ」



カキィン



メデスは槍の柄の部分で男の攻撃を防ぐ。


「まだだっ!」


男はやめることなく攻撃を続けている。


鉄同士がぶつかり合う音が何回も響くように鳴る。


「はぁっ!」


メデスは男の短剣を持っている右腕を狙って槍を突き出す。


「甘いな」


男は右腕を少しに上げ槍をかわすとそのまま槍の柄を挟んだ。


「げ」


メデスはその瞬間口をへの字に曲げる。


「くらえ!」


男は短剣を左手に持ち替えるとメデスの喉元狙って刃を突き出した。


「ぐっ」


ギリギリかわしたため短剣の刃はメデスの首の真ん中を刺すことはなかったが


斬られた首筋からはドクドクと血が流れメデスの服を朱に染める。


「かろうじてかわしたか。反応も並ではないな」


「アブねアブね、もう少しで頸動脈ブッスリだったな」


メデスは傷口を押さえながらバックステップで一旦距離をとる。


「どうした、調律者とはその程度か?」


「いんや、まだ本気マジじゃねぇよ」


そう言うとメデスは槍を天空に投げた。


すると槍は弾け、無数の鏃となって雨のように男に降り注ぐ。


「この鏃の雨がかわせるかな?」


「くっ、まだだ!」


男は短剣に炎を纏わせ一振りすると炎が鏃を阻むように壁が作られる。


鏃は男に当たることなく炎の壁に阻まれてしまう。


そして槍は再びメデスの手に現れ戻る。


「どうだ!」


「お前の属性、炎か。こりゃ都合がいい」


「何?」


するとメデスは大きくバック宙をし、湖の中心の水面に立つと槍を消した。


「地の利はこっちにあるってわけ。これで終わりだ」


メデスが右手を天に掲げるように振り上げると湖の水が巨大な龍の形となって現れる。


「死ぬ前に教えてやる。


オレはオルタナティブ一女性に優しい水の調律者『メデス・ジュライアス』だ」


と言ってメデスはにやりと笑った。


「行け!蒼き龍よ!その体で全てを飲み込め!」


『グオオオオオ……』


龍は唸り声を上げると一直線に男に向かってくる。


「く、くそっ」


男は炎の剣を突き出すが水の前では炎など意味もなく、


男はそのまま龍(水)に飲み込まれ数十M流されると水の龍が通り過ぎると仰向けに倒れた。


そして男を突き抜けた水の龍は形を失い辺りは水浸しになる。


「起きな」


メデスは男の頬に槍の柄で軽く叩く。


「……何だ。早く殺せ」


「まだ殺すわけにはいかない。総帥の居場所を教えてもらおうか?言わなきゃ死ぬぜ」


それを聞いた男はちぇっと小さく舌打ちをして吐き捨てるようにこう言った。


「死ぬとしてもそんな事教えるわけねぇ」


メデスはやっぱりなと言って槍を取り出し構えると


「覚悟はできてるようだな。じゃ、これで終わりな」


メデスは勢いよくゲイボルグの矢先を男の心臓に向けて刺した。


「ぐあ…」


朱い血が男の左胸から放射状に広がり服を染めていく。


『光の浄化 ライトパージ』


「くっ、くらったのが1発だけだったとはいえ、傷が深すぎるな。


今日はおとなしく帰って寝るかな」


メデスは死体となった男を光の粒子に変えて消し去ると、


結界を解除させ血を垂れ流したままその場を離れた。

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