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第52話

〜祢音SIDE〜


「でかいね」


目の前の巨人の身長は3m強。


ここに来るまでに戦ってきた巨人よりいくらかでかい。


名前は『霜ノ巨人 私ハヨツント呼バレテイル』って言っていた。


それ以外は何も喋ってない。


一筋縄ではいかなさそうな相手っぽいな。


「悪いけど、さっさと終わらせてもらうよ!」




―風にのって舞う美しき獣よ 風と共に謳う艶やかな獣よ


                風の調律者の名の下に告ぐ 我の前に姿を現せ―




「きて!『ハーピィ』!!」


『憑依』


「いくよ」


『エアスパイラル』


ヨツンを中心としていくつかの小さな竜巻を発生させる。


竜巻は不規則に動きヨツンの体を切りつけていく。はずだった。


「!?」


すぐに異変に気付いた。


ヨツンは全く動いていない。それに体に切り傷は一切ついてない。


竜巻を消滅させ、よく見てみるがやっぱりない。


「ちぇっ」


次の手っと。


私はヨツンに近づき撹乱させるために周囲を闇雲を跳び回るけど何も気にしてない様子。


『エアエッジ』


手足や銃に風の刃を纏わせて蹴ったりしたけど全く効いてないし動きもしない。


ホントはむっちゃ硬いただの像なんじゃない?あ、さっき喋ってたか。


まぁこいつ倒さないと扉が開かないんだろうから次進めないしなぁ。次の手次の手。


今度は『フリューゲル』に加えて『レリーフ』も出して2丁にする。


さらに顔面まで迫って手加減なし1発に込められる最大限の魔力を込めて零距離で発砲する。


そして煙が私とヨツンの顔を覆った。けど私はヨツンの顔は見えている。


その顔には傷は負わせることができたけどそれでも予想外。


顔面を吹っ飛ばすつもりだったのに。


「嘘…」


すると虚構を見据えているように眼球を一切動かさなかったヨツンの紅い眼が私を睨んだ。


「え…?きゃっ!」


私はヨツンに掴まれて強く放り投げられた。


「いったぁ…。


でもこれであの程度なんてなんて体してんのよ」


天使に力借りようかなぁ。出し惜しみしてる状況じゃないみたいだし。


―後、任したよ―


そして『私』の意識は私の奥へ、代わりに純白の翼を持った『天使の私』が表面上に現れる。



☆こっからは3人称で☆



「さて、参りましょうか」


『ガトリングフェザー』


両サイド3枚づつある小さな翼の内、


上4枚が大きくなり、まさにガトリングガンのように羽を放つ。


放たれた羽はヨツンにヒットするとすぐに消滅する。


これでもかと放つがヨツンの体に傷がつくことはない。


「くっならば!」


神からの脅威ディバインメネス


天使が翳した両手から悪魔の使う『闇の咆吼』が聖なる砲撃となって放たれる。


天使が放った魔力の砲撃がヨツンを完全に包み込む…まではいかなかった。


砲撃の大きさは決して小さくはないのだがヨツンが大きすぎた。


だが砲撃はヨツンの巨体を吹き飛ばした。


立ち上がったヨツンはようやく祢音(天使とも言える)を敵視したようで


こちらに体を向けた。


「く…」


鋭い眼力に天使は一瞬怯む。


あれは数多の戦いを戦ってきた者の眼。


この終わりなき闘争曲の中で何度もラグナロクを経験した者の眼だった。


ヨツンは腰に縛られてあった大剣を持つとドシドシと走ってくる。


巨体なもんだからその1歩もでかくすぐに目の前まで来た。


「オオオオォォォォ!!」


薙ぎ払うように繰り出された大剣は難なく石でできた床を斬り裂いた。


天使はというと降り始める瞬間に飛び立ち回避していた。


さらにもう片方の手が天使へと襲いかかる。


『グレイプニル』


だがそれは天使に触れる前に魔法の紐で縛られ、動きを止める。


パワーアップしたせいか前回使ったような詠唱は必要なかった。


さらに両腕両足も縛り上げる。


「さぁ死んでもらいます」


天使は上空へと上昇しヨツンを見下ろす。


この城は巨体の巨人のためなのか普通の城よりでかい。天井も結構高い所にある。


そして天使は歌うように詠唱を始める。


神の裁きディバインジャッジメント


悪魔の時とは違い真っ白な光の柱がどこからともなく降り注ぐ。


「グゥッ…ヌオオオオオオオオォォォォ!!!」


辺りが真っ白になる。


ヨツンの生死はわからないがアレをくらって無傷、ということはないだろう。


「ふぅ…。!?」


視界が真っ白の中、天使は自分へと向かってくる『何か』を感じ、さらに上昇する。


そして見えたのは大きく開いた大きな手。魔法の紐は消えている。


ついさっきまでいた私の所でギュッと握り、


手応えがないと理解するとまた白の中へ消えていく。


「まさか…生きている!?」


さっき見えた傷ついた手は間違いなくヨツンのモノ。


だが生きている?そうだとしてもここまで届くのか?


さっき天使がいたのはヨツンよりさらに高い所だ。


あの巨体で飛び跳ねたのだろうか。


光が収まり、見えたのは紅い翼を持ったヨツン。


それで飛んでここまで来たというのだ。


よく見れば蒼い尾。背中には亀のような甲羅。そして白い体毛に覆われた太い足。


それぞれが違った強大な魔力を持っている。


その姿は私のような『天使』や『悪魔』という存在が眠っていた頃、


『祢音』という存在の中で視た『キメラ』のようだった。


「何…これは?」


「私ハ四ノ聖獣ヲ持ツ。


朱雀…青龍…玄武…白虎…」


言われてみればそれぞれがそれらの一部のように見える。


(ただ玄武の一部であるはずの甲羅に蛇がいないが)


それを全て憑依させたということ。


「なんて器の大きさ。同時にそれだけ憑依させるなんて…」


魔力が感じられるのは具現化されている部分のみ。ヨツン自体の魔力はない。


急にヨツンの大剣が突き出された。


「くっ…痛っ!」


シールドがわずかだが破られ、掌に傷を負う。


さっきとは威力が違う。それに急にリーチが伸び、反応がわずかに遅れた。


ヨツンの持つ大刀は新たに柄が追加され、


大刀部分の形状も変わって『青龍偃月刀』となっていた。


「くっ」


『グレイプニル』


両腕両足を再び縛る。


魔法の紐による締め付けで偃月刀が手から離れ、天使はそれを軽々持つと遠くへ投げる。


「オオオオオォォォォォ!!!!!」


やかましいほどの叫び声を上げヨツンは藻掻く。


そしてついにグレイプニルは破られてしまった。


「なっ!?」


怯んだ天使へヨツンのでかい拳が襲いかかる。


「くぅ…」


拳がようやくシールドから離れたかと思うと今度は体を回転させ、尾が襲いかかってくる。


「ああっ!!…くっ!!」


油断していたのか尾の攻撃をもろに腹へ受けた天使は一直線に吹っ飛び壁に激突する。


続いて偃月刀を拾ったヨツンが天使の体目掛けて突き出してきた。


「う…」


意識が朦朧とする中でなんとか逸らそうとシールドをはる。


「うああっ!!」


なんとか逸らせたものの脇腹に刺さり貫通する。


「はぁ…はぁ…はぁ…」




〜祢音の心象世界〜


「うああっ!!」


表面上にいなくても躰が感じることは全てこちらも感じる。


躰に受けた痛みも同じ。これは余計な設定かも…まぁしょうがないか。


「どうしよう。天使の私でも無理なんて…」


「あいつは『守』が役目だからね」


痛みに苦しむ私の背後からケロッとした顔で悪魔の私が現れた。


「なんであんた平気な顔してられるのよ」


「これが痛い?気持ちいいじゃない」


「あなたってマゾだっけ?」


「そうゆう意味じゃない!あんたが苦しむのを見るのが嬉しいのよ」


「そう。で、何の用?」


「あいつ…てゆーか私たち死にそうじゃない?


死ぬのは私も嫌だし助けてあげようってのよ」


「だから躰をあなたに委ねろって?嫌よ」


「天使は主に『守』の力を持ってるの。で、私は『攻』。


この状態じゃあ天使に守る力はないわよ。巨人の攻撃力はかなり高いし。


ほらほら攻撃は最大の防御ってゆうじゃない」


「でも委ねれば躰を乗っ取るつもりでしょ?」


「あったりまえじゃん!」


にんまり笑顔で言う悪魔の私。自分の事ながら呆れるね。


「素直ね。嫌よ」


「はぁ!?…死ぬ気?」


今度は悪魔の私は呆れ顔になる。


「ううん…今度は天使の私とあなたの力を私に貸してもらおうかな」


「そんなことできるの!?」


「できるよ。天使の私とあなたが私へ全てを委ねてくれればね」


「ははっ!私が!?あなたに全てを委ねる!?


ムリムリムリ!…バカ言ってんじゃないわよ?」


初めは笑っていた悪魔がここに来て悪魔らしい冷たい眼をして私を睨む。


「私がバカならあなたもバカなんじゃない?同じ『私』なんだし。


それにこのままじゃ本当に死ぬ。


あなたが手を貸してくれる以外方法はない。ほら」


私は悪魔の私へと手を差し出す。


悪魔の私はその手を値踏みするようにじぃっっっと見つめてから


「はぁ…もういいわよ。私の負け。


やっぱりねぇ。


あんたみたいなポジティブ人間じゃマイナスの想いである私が弱いわけだわ」


と言って私の手を掴んだ。


「そんなことない。私だってマイナスの想いぐらいあるよ。


それはあなたが一番よく知ってるんじゃない?」


「はいはい。じゃ私の全てを貸すから死ぬんじゃないわよ。天使ぃ!」


すると天使の私が現れ、私と悪魔の私の手を握る。


「よく悪魔なんか説き伏せましたね」


「ノンノン。悪魔じゃないよ、私だよ」


「さっさとしないとホントに死ぬわよ」


「じゃあそろそろいきますか!」





〜現実世界〜


「……さて、勝負の続きだね」


今私の背中には右翼には天使の翼が、左翼には悪魔の翼がそれぞれ3つずつある。


それ以外の容姿は私が人格の主体になっているし変わりない。


魔力は私と天使の私、そして悪魔の私のがそれぞれ感じられる。


細かい調整はそれぞれに任せている。


ちなみに腹部の傷は天使の私が残り少ない魔力を使って治しておいてくれた。


さて、どうしようか。


―まずは聖霊の憑依を解除させるべきです。


飛ばれるのはやっかいなんで先に朱雀ですね。


翼の付け根あたりが魔力が弱くなってます―


天使の私の声が聞こえる。


魔力のない物体と波長を合わせるわけだしね、でもちょっと背中に回り込むのは難しいかも。


―じゃ私たちを使えばいいじゃない。私たちが一瞬で回り込んで―


悪魔の私の声がした。


そんなことできるの?


―躰自体を分離させるのは無理だけど魔力としてなら可能っちゃあ可能。


数秒と保たないだろうけどね。でも十分よ―


「じゃ、それでいこうか」


瞬時に『フリューゲル』を取り出しヨツンの顔面向けて3発速射する。


ヨツンがそれを偃月刀で防ぐ間に右側から天使の私が左側から悪魔の私が両側から回り込む。


『闇の咆吼』『神からの脅威』


そしてそれぞれ翼の付け根へ向けて放った。


甲羅から2匹の蛇が出てきて襲いかかってきたけどそれもろとも消滅させる。


その攻撃を受けた翼はすぐに消滅し、天使の私と悪魔の私は私の所へ戻ってきた。


砲撃は背中の玄武の甲羅や躰をも貫通し、傷痕から血が流れる。


「オオオオォォォ!!」


今だ。


私は憑依が強制解除された精神的ダメージと躰の痛みに苦しんでる隙に偃月刀へと飛ぶ。


『レリーフ』も取り出してそれぞれ風の刃を装備させる。


柄まで辿り着くと腕をクロスさせてそこから挟み込むようにして斬る。


「はああっ!」


ガラン


と音を立てて偃月刀の刃の部分が床に落ちた。


それと同時に尾も消えたみたい。


―これだけやれば十分でしょ―


―あとはトドメを刺すだけです―


オッケー


―我罪深き者に罰と共に救済を与えん…―


身の危険を感じたヨツンは逃げようと足に力を込める。


―させません―


『グレイプニル』


だけど天使の私がその前に身動きできないよう縛る。


残酷な救済クルーエルセルベイション


身動きできないヨツンに光り輝く十字架が次々と突き刺さり、


ヨツンの躰は血の紅と十字架の白に染められる。


「救済!!」


そして次の瞬間光の十字架と共にヨツンの躰は光の粒子となって消え去った。


「ふぅ……疲れた。ありがと、2人とも」


―いえいえ―


―お礼なんて必要ないわよ―


そして私はそのままの状態で開かれた扉へ走っていった。


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