第47話
〜ルリアSIDE〜
「ちっ聞いてないぞ、闇妖精が出てくるなんて。
これは兄さんの仕事じゃないのか?」
目の前にはスヴァルトアルフの女、名前は…ロールと言っていたか。
手にはおそらくあいつらの支配者『ヴェルンド』が創った『デュランダル』が握られている。
「いいじゃない、あなたはその妹でしょ?
それにあんな場所で過ごしてても何もおもしろくない」
「だったらこの祭に参加してみようってわけか」
「そーゆうことっ。そして私の相手はあなたです『フレイヤ』」
ロールはこちらへ駆け出してくる。
手に持つ剣は頻繁には使わないだろう。
エルフは物理攻撃はほとんどしない。攻撃方法は魔法が主体だ。
ロールは距離があるにも拘わらず、剣を振り上げるとビュッと音をさせて投げてきた。
でたらめな回転をする剣を何の苦もなく回避する。
だがすでにロールの姿は目の前になく、背後にあった。
「死ねぇ!」
背後から魔法弾を放ってくる。
私は振り向くこともなくその場に立っている。
魔法弾が当たる少し前に城の床から敷石を割り2、3本の大木が生え、防壁となる。
防壁の役目を果たすと大木は荒れた石畳をそのままに消滅する。
そのせいでさっきからの戦闘で城の床は荒れに荒れている。
「そう簡単には当たらん。そらっ」
羽扇を振るとさらに床から先端を鋭く尖らせた木が生え、ロールを狙う。
だがロールはバックスッテップし、
一撃目をかわすが木はスビードを上げ、蛇のようにうねり獲物を追う。
「くっ…うあっ!」
ロールは追いつかれ、先端が腹部に刺さる寸前デュランダルを盾代わりとする。
接触したのはバックステップをしている途中、
宙にいるため踏ん張れずそのまま勢いを増して後ろへ飛ばされる。
そしてその先には口をあんぐりと開け獲物を待ちかまえる食虫植物。
いや、人すらも喰ってしまいそうなほど大きいから食人植物でも語弊はないだろう。
「エルフは良い栄養になりそうだな」
だがロールを口の中へ入れた食虫植物はまもなく蒸発するかのように霧散してしまった。
「あなたとの戦いももう飽きてきた。
さっさと殺して次の相手を探しに行くことにするわ。本気でいく!」
「ではこちらも本気でいかせてもらおう」
―草樹を慈しみ 愛おしみ そして育む 森の母よ
樹の調律師の名の下に命ずる 我の前に姿を現せ―
「来い『句句廼馳』・・・・・憑依」
樹の聖霊ククノチが現れると広間は瞬く間に木々に埋め尽くされる。
もはや広間は森と化した。
「これは…!」
この広間への出入口は木によって封鎖した。
「これで私から逃げる事はできない」
「ならあんたを殺せばいい!」
そう言いながらロールは走り、魔力によって切れ味が増したデュランダルを振る。
「当たらないな」
ロールが剣を振り上げた時、私の目線が一気に下がる。
私の足は足下の大木に沈み、そして振られた頃には躰全てが大木に沈み込んだ。
「何!?」
そしてその後すぐに大木の中を移動し、背後に回り込む。
腱を切るか。
草で人を切るのは不可能ではない。それか尖らせた木で刺すか。
死ね。
だが私は腱を切り傷程度に傷を負わせるだけで
ギリギリで動き出したロールは森(というか広間)の奥へ逃げた。
ちっ…まぁその場に突っ立ってるってのは普通に考えても危険だからな、当然だな。
だが逃がしはしない。
「なっ!…ぐあっ!!」
私は移動中どこからか飛んできた大木もろとも吹き飛んだ。
木の内部で攻撃を受けるだと!?
「ちぃっ…」
まさかな…もう一度だ。
見つけた。
森の奥、大木に背中を向けたロールがいた。
何もせずにただ立っている。
こちらにも気付いていないようだし、もらったな。
「うああぁっ!!」
2発もだと!?バカな!?
「見つけた」
マズい。今のでバレたか。いや、攻撃を受ける前に気付かれてる。
「視えてる…というよりは感じてる、か?」
私は木から抜け出し、姿を現す。
「エルフがここまで魔力知覚が高いとはな」
「少ないわよ、ここまでなのは」
「ならば」
―生命の息吹となりし羽扇を依り代とせよ―
ククノチを躰から羽扇へ憑依先を変更する。
「これならどうだ」
羽扇を一振りすると全方位から先端を鋭く尖らせた木がロール1人目掛けて素速く伸びる。
全方位から、故に回避できる場所はない。
「ちっ」
予想通りロールはバリアを張った。貫けるか…?
木とバリアがぶつかり合い、激しい閃光が走る。
普段の状態なら防ぎきられただろう。普段の状態なら・・・・
次第にロールのバリアには亀裂が入る。
そして亀裂が入った直後バリアは破壊され、
逃げ場所のないロールは何もできず串刺しとなった。
もう8月も終わりですが予想してたより書けませんでしたね・・・・・
夏休みでしたからもっと書けると思ってましたが・・・・
まぁいいや。次回もお楽しみに〜