第45話
城内は思ったより複雑だったが構造自体に大きな障害とはならなさそうだ。
それよりも中にいた巨人や魔術師が意外と手強かった。
ザコは外に集中していたということか。
「どうやら別れて探した方がよさそうだ。
ロキは最上階にいるだろうな。常識的に」
とあるエントランス、そこにいた魔術師が全員撃破してからオレは天井を見上げて言う。
目の前には何を考えて作ったのか、分かれ道が丁度3つ。
「うん。誰がロキを倒すか競争だね」
「じゃ、オレは真ん中っと」
オレは先に真ん中の廊下へ向かって走り出した。
さてその頃の外の様子は…。
「思ったように敵の数は減りませんねぇ」
後方で様子を見ているフェイトは呟く。
「ヘインヘリャルたちなら死にはしないから大丈夫でしょうけど他の兵は…」
足下には巨人兵の死体やこちらで連れてきたただの人間である兵の死体が
おびただしい…というほどでもないが、結構ある。
「城の方にいくつか強い魔力の衝突がありますね」
「ここの状況は長老様…もしくはイレギュラーの働きに期待するしかなさそうですね」
さてさてその頃の他の調律師+αの様子は…。
〜ゴートSIDE〜
「ふむ、空間転移か?」
城に突入し、その後最上階のみを目指して走っていたが
ある廊下を抜けるとそこは城内とは思えない場所に立っていた。
ゴートのいる場所はジリジリと太陽が照りつける砂漠のド真ん中だ。
「さて、お前の相手はオレがしてやろう」
ゴートに負けず劣らずの低い声がする。
そしてオレの前に転移魔法を使い、巨人が現れた。
右手には棍棒のようなものが握られている。
棍棒とはいってもかなり太く、あの巨体の力で殴られれば打撲程度ではすまなさそうだ。
巨人は魔法は使えなかったはずだがな…まぁいい。
「オレの名は『ベルゲルミル』お前の名は?」
「ゴ…いや、土の調律師『シグルズ』と名乗っておこう」
オレは大剣『グラム』を肩に乗せる。
「ほう」
「……ゆくぞっ!」
十秒ほど睨み合った後、オレは大剣を肩から降ろし、ヤツへ向かって走り出す。
体は大きいほう(太ってはいない)で砂漠上ではあるが走るのは決して遅くはない。
一気に間合いを詰めると体を回転させ、勢いに乗せたまま大剣を振り上げる。
砂煙が舞い、ヤツの姿ははっきりとは見えない。
が、オレの大剣は振り抜けず、動きを止めている。
砂煙が弱まり、ある程度見えるようになる。
大剣はヤツの横っ腹を斬り裂く前にヤツの手によって阻まれていた。
力には自信があったし、手加減をしたつもりはないのだがヤツの掌には傷が全くない。
一筋縄ではいかないと思っていたが傷すらつかないとはな。
「くっ…何をした?傷すらないなんてな」
強引に大剣をヤツの手から離れさせ、一旦退く。
「オレはただ掴んだだけだ」
「ならば!」
オレは土の調律師、そしてここはオレにとって有利な砂漠。
『砂嵐』
オレは魔法で砂嵐を発生させ、ヤツの視界を悪くさせる。
こっちは土の調律師、砂嵐程度では不利になったりはしない。
視界が悪くなっている隙にヤツの背後へ回り込む。
ヤツだって目は開いている。ここまで近寄ればオレに気付くだろう。
「そこかっ!」
予想通りヤツはこちらへ振り返り、すぐさま棍棒を振り上げる。
「ぐはぁっ!」
ヤツは何かに背後から後頭部を殴られ、蹌踉めく。
その何かとはオレが魔法で人の拳に形作った巨大な砂の塊だ。
これで殴っても蹌踉めくだけか。
「はああぁっ!!」
オレはその隙に再び横っ腹目掛けて大剣を振る。
さすがに防ぎきれず、ヤツは砂漠の上を滑っていく。その時には砂嵐は止んでいた。
ダメージは与えられたようだがおかしい。
ヤツを攻撃した武器は大剣だ。
それならば真っ二つにならず傷もつかない打撃を与えたような事になるのはおかしい。
「ふうっ…今のは効いたぜ」
ヤツの巨体が再び動き出す。
起き上がったその横っ腹には赤くなっているだけで骨にも異常はなさそうだ。
「なんて体だ」
思わずオレは呟いた。
「それだけが取り柄なんでな」
その瞬間、ヤツの姿が消えた。そして背後にヤツの気配がした。
「なっ!?」
振り返れば確かにヤツが棍棒を今にも振ろうとしていた。
「ぐあっ…!」
今度はこちらが横っ腹にくらった。
横っ腹と言ってもヤツの棍棒はでかい。
頭を除いた左半身全体にダメージを受け、転がっていく。
「これは重傷だな」
たった1発しかくらってないがその1発がでかすぎた。
不意を突かれてまともなシールドができなかった。
シールドのおかげで骨は折れているようだが粉々まではなっていない。
「やるか…」
―広大なる大地に眠る巨人よ 大地の響きとともに
土の調律師の名の下に命ずる
万物を破壊せし大剣を依り代とし 我の前に姿を現せ―
「来い!『ゴーレム』!!!」
そう言うとオレの茶色のペンダントから背後にゴーレムが現れた。
岩でできた巨大な人のようなものか…いや、人よりも全体的にゴツイ。
そのゴーレムが黄色い光玉となり、オレの大剣に宿る。
ゴーレムが宿り、大剣の重量がかなり増す。
だが振り回すことはできなさそうだが振るぐらいならできそうだ。
「オレの全てを懸けた攻撃だ!行くぞ!!」
オレは砂漠へ大剣を突き刺す。
するとヤツの周囲に蟻地獄を発生させる。
ヤツの動きを封じるためだ。
体の下半身を埋められたヤツは這い上がろうとするがそこは蟻地獄、
そう簡単に出られるもんじゃない。
そしてオレは空高くジャンプし大剣を振り上げる。
「一刀両断!『天翔重力斬』!!」
運動エネルギーも位置エネルギーも非常に大きい。
そしてその真下には動きのとれないヤツがいる。
「うおおおおお!!!」
ヤツは棍棒を盾にしたがそれは一瞬の手応えを残し、真っ二つになる。
続いてヤツ自身は今度は腕に受け止めようとし始める。
「く…これまでか…だがお前も終わりだ」
「何?」
そして今まさにヤツが真っ二つになろうとした瞬間、大爆発が起こった。
「く…こんなものを仕掛けるとはな。
ヤツがあんなこと言わなければシールドが遅れる所だった」
だがオレの体はそう長くは保たなさそうだ。
魔力もほとんど使い果たし、殴られた時と今の自爆のダメージ。
「ここ…までか…」
気がつけばオレは砂漠ではなく元の城内に戻っていた。
シグルズのバトルは頑張った方だ!
次話はもう手抜きです。ご覚悟を・・・・
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