第43話
「いやぁ〜買った買った♪」
オレの両手にはスーパー袋の許容量を遥かに超えていそうな
重さを感じさせるスーパー袋がぶら下がっている。
「重い……これだけ買ってどーすんだ」
「だって冷蔵庫の中のやつほとんどダメになっちゃってるんだもん。
結構留守にしてたからね」
「だからってまとめて買う必要はないと思うんだが……あ」
ゲーセンの前を通り過ぎようとした時、何気なく中を覗いてみると康宏がいたのが見えた。
祐介もいて一緒に頭文字○をやっている。
「ん…?あ…結局来てたんだ。
………どうする?行ってみよっか」
さっさと家に帰ってこの呪縛から解放されたいという
こっちの気も知らないで祢音と奏はゲーセンへ入っていった。
康宏はオレはお前らを信じていた!と、人目をはばからず、むせび泣いていた。
祢音は実際に銃を扱えるタイプのシューティングゲームの反応の悪さに不満があったようで
感情のない機械相手にプレイ中所々で文句を言っていた。
その日の夕方、テーブルには実に様々な料理が並べられていた。
それを食うのが3人だけだというのもお構いなしに。
そしてさて食べるかという時に
「いや〜おまたせおまたせ」
メデスの登場。
「いや待ってない。さ、食うぞ」
「そうだな。じゃあ早速」
と言ってオレの隣に腰掛けるメデス。
「お前の分はない」
「いや、お前の分はオレがもらう」
メデスはどこから取り出したのか
この家にあるはずのない4膳目の箸を持ち(ちなみにイスはキリがいいように4つある)、
器用に扱って見せる。
「大丈夫だってちゃんとみんなの分あるから・・・・・多分」
勢いよくポンポンと口の中に料理を放り込み、
口に含んだままうまいうまいと言うメデスを祢音は苦笑いしながら見ている。
『最期の晩餐』ってヤツを思わせるような普段と比べれば妙な料理の数々だったが
祢音と奏はメデスが色々と話していたせいか
別にしんみりというフインキは感じさせず、逆に楽しそうだった。
料理は全て綺麗に平らげられ、祢音は作った甲斐があったと言っていた。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
「っつ……血が…」
食後しばらくソファに座っていると無性に血が欲しくなってきた、そろそろか。
「はい」
傍で立っていた祢音がオレの状況を察し、腕を差し出してきた。
「悪い…」
オレはその綺麗な腕を掴み、牙を突き立てた。
祢音は一瞬顔をしかめたがすぐにいつもの表情に戻る。
「ナンギだねぇ。常に血が要るってのは」
「………結構…飲むんだね…」
祢音の苦笑いのようなのが聞こえてくる。
「…ちょ……飲み…す…」
ドサッと誰かが倒れる音がした。
「ちっ!…無月!!!」
「!」
メデスの声でオレはハッとした。
夢から醒めたような気分だった。
気がつけばさっきまで立っていた祢音が気を失い、
ソファに体を預けるようにして倒れていた。
それに気付かず、オレはまだ祢音の腕に噛み付いていた。
「祢音!」
オレはすぐに腕を放し、祢音を起こそうと体に触れようとしたが
「離れてろ!!」
というメデスの怒声に怯み、伸ばした手を引っ込める。
気が動転しているのかひどく臆病になっているようだ。
「大丈夫、気を失っただけだ。
…もっとも、あのままだとどうなってたかわからねぇけどな。
奏ちゃん、祢音ちゃんの部屋どこだっけ?」
「こっち」
「…無月、2階に来るなよ。そこで大人しくしてろ」
メデスが祢音を抱きかかえ、奏が先導し、2階へ上がっていく。
オレはその様子を妙な疎外感を感じながらただ見ていた。
〜祢音SIDE〜
「ん…んん……」
目を開けると心配そうな顔をしている奏とメデスがいる。
私はベッドに寝てるみたい。
「起きたか。早めに気付いたのがよかったか」
えーと…。
確か晩ご飯の後にお兄ちゃんが血が何とかって言って、
私が腕出して、お兄ちゃんが噛み付いて、そしたら…。
「あぁ…」
「思い出したか?丁度いい、2人に話がある」
メデスは廊下へ続くドアを開け、
ちょっと様子を見てからまた閉じてドアにもたれ掛かる。
「今のこと?」
「さっすが奏ちゃん、察しがいい。オレは2つの事を報せるために来た」
そしてメデスは話を始めた。
「知っての通り、無月は吸血鬼だ。
完全じゃないから半吸血鬼か?まぁいいや。
血ってのは糧でありながら同時に麻薬のようなものでもある。
麻薬ってのはわかるだろ?
快楽を得られるが、その後禁断症状が表れ、さらに多くのそれを求めようとするアレだ。
それと同じで吸血鬼のは自分が確実に生きていくためにできた本能みたいなもんなんだとさ。
ちゃんとした吸血鬼だとなんとか抑えることができるみてぇだけど、あいつは半人前だからな。
抑えるコツとかわかんねぇんだろって
『フェイト・ドラキュラ・アカシャ』から聞いてきた。
忘れてたってさ、あの女。そんな重大な事を。
だから血を飲ませてる時、自分で危ないと感じたら、無理矢理にでも引き剥がすこと」
「うん」
「わかった」
「で、もう一つ話があるんだが…
これは祢音ちゃんと2人で話したいから
奏ちゃんは無月のトコに行って今のことを話してきてくれ。
あと、そのコツってのはオレの艦ん中で話すってな」
「わかった」
そして奏は出て行って部屋には私とメデスだけになる。
一応備えておくか。
「いや、そんな身構えなくても…
じゃ、話すぞ。オレが行った世界の中で科学の水準が異常なほど高い世界があった。
そこで興味深い機械が見つけた」
しばらく溜めた後ゆっくりとメデスは言った。
「…………心を分裂させる機械だ」
「ふうん」
なんとなく言いたいことはわかったかも。
「その世界には犯罪が極めて少ない。オレがいた国では年に数件だそうだ。
まぁあちらの1年がこちらの何年になるかはわからねぇけど。何でかわかるか?
犯罪を起こそうとする心がないからだ。
そういう心を分裂させて、
その心を消滅させることができる普通じゃありえねぇような機械だったよ。
祢音ちゃん、そこへ行けば悪魔の心を消滅させる事ができるかもしれねぇ。
そうすれば―――」
「悪いけどそれは遠慮しとく」
私はメデスが全て言い終わる前にキッパリと断った。
「悪魔が誰かを傷つける、これはこれから先で可能性のある事かもしれない。
でもそれがあっての私だと思ってるし、そんなのに負けるような心じゃないよ」
「……くくっ、そうか。よかったそれでこそオレの惚れた女だ!」
メデスは唇を「3」にしながら両手を広げてバカ正直に突っ込んでくる。
やっぱ殴っておこうか。
「…っ!?」
完璧に顔面を捉えたと思っていた拳は空振りした。
メデスは一瞬にして私の隣に何をするわけでもなくただそこにいた。
「毎回殴られっぱなしじゃこっちもおもしろくないからな。
たまにはいいだろ?こんなのも。
じゃな、調子が戻ってきたら言ってくれ。
ついでにオレの艦に乗せてってやる」
メデスは後ろへ退き、ドアを開けて出ていった。
「今まで殴られてたのはワザと?
てゆーかそんな事を言うためにわざわざ二人きりにしたワケ!?
あーあ、さっさと下行って奏と遊ぼ。
お兄ちゃんも元気付けなきゃならないしね。出発はそれからでいいや」
なにをして遊ぼうかなぁ。
そんな事を思いながら私は階段を降りていった。
この後、最終決戦があるんですけど調律師+αのそれぞれ戦闘シーン省いて無月のだけにしていいっすか?
さすがにアイデアが・・・・・・いえ、何とか頑張って全員分書かせてもらいましょう!!
んなわけで最低ラインの週に1話のサイクルが守れないかもしれないんでそこんとこヨロシク