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第38話

  〜奏SIDE〜


「非力そうな女だな。そんな体で私を殺そうというのか?」


既に結界は張ってある。これなら思いっきり暴れても大丈夫。


「魔術師同士の戦いだったらそれだけでは決まらない」


「そうだな…。はぁっ!」


リーガルが杖を私に向けると杖の先から雷が放たれる。


ほぼ直進してきたからかわすことは容易だった。


回避した後一気にリーガルとの距離を詰める。


そして剣を振り下ろすがその攻撃はシールドで防がれる。


どうやら隙を突かない限り普通に攻撃しても無理のようだ。


剣だけでは私にあのシールドを破壊するのはほぼ不可能。


でもシールドする暇を与えなければそれでいいのだけれど。


さて、どうしようか。


さっさと終わらせて無月を助けないと。


『ヤドリギの枝』


まずヤドリギの枝でリーガルを縛り上げる。


リーガルは藻掻こうともせず素直に縛られている。


『まどろみの幻影』


続いて魔術を使い、私は分身を創り出す。


私の分身はリーガルを取り囲む。


そして剣を振り上げ一斉に飛び掛かる。


『サイクロン』


もう少しで刃がリーガルに当たる寸前でリーガルは竜巻に包まれる。


「くっ…!」


さすがに威力が強い。


私の分身は呆気なく消え、私も顔や体に切り傷を負う。


隊長の時と同じようなのじゃダメか。


治癒するための魔力を指に集め、頬の切り傷をなぞって癒す。


「はっ!」


次にリーガルが出したのは無数の火球。


魔法学校の校長をやってるだけあってあれだけあっても


炎を専門に扱う無月の火球と同じぐらいの魔力がある。


「これが避けられるか!?」


そして杖をこちらへ向け、一斉に無数の火球を放つ。


並の腕じゃ避けられない。


でも、私にはお父様から引き継いだ能力がいくつかある。


それは数ある『カナデ』の中でも私だけしか得られなかった能力。


私は走り出し、正面から突っ込んでいく。


『ソニックムーブ』


音速の動きで私は火球を回避する。


当たりそうなのは右手でシールドを張ったり、左手の剣を使って受け流す。


無月の火球を何度か見てるから私の動きが速過ぎても


動きとか魔力の具合が何となく先読みできる。


そうやって全ての火球を回避し、リーガルの正面に立って剣を振り上げる。


「くっ!」


リーガルはにシールドを張った。


その時既に私はリーガルの背後にいた。


音速と幻影の併用。私ほどになればそう難しくない。


「何!?後ろか!」


リーガルはシールドを張ろうとするが遅い。


私は心臓狙って剣を突き出す。


「なんて速さだ」


そうは言っているもののリーガルは私の剣で心臓を貫かせはしなかった。


脇の下辺りを斬った程度。致命傷とまではいかない。思ったより反応がいい。


だったら…。


私は右手に魔力を込めてもう一度音速でリーガルの背後に移動する。


そしてリーガルの後頭部に静かに手を添える。


だったら五感を潰してしまえばいいだけ。


『夢幻』


私は一旦離れる。


これでリーガルの五感は潰した。


潰したと言っても幻術で現実とは別の映像、音、臭い、触感、味、魔力を感じている。


最後のを加えれば『五』感じゃないけど、


これでリーガルは自分が傷つけられていることを知るなく死ぬ。




……………アレ?


私が今見てるのは芝生の上に立つリーガルのはず。


でも違う。私が見てるのは暗闇の中に立つお姉様と無月・・・・・


アレ………なんで……?


しまった!!


この自体に気づいた私は強い魔力を脳に集中させ、魔力の乱れを修正する。


ガシャァン


頭の中で大きなガラスを強い力で割ったような衝撃が走る。


「く…痛っ…」


次に私の眼に映ったのは芝生の上に立ったリーガル。


そして下を見れば私の血で朱く染まった芝生。


それらが全て横倒しで見えている。


私は仰向けに倒れていた。


「案外気づくのが速かったな。


…幻術返し。使われたのは初めてか?」


幻術返し。


あるのは聞いていたけどどうやって使うのかは聞いてない。


それに強い幻術だとその分返すのが難しいらしい。


さっきの私の『夢幻』は弱くはない。むしろ強い方だ。


それを返すなんて…少し侮っていた。


「降参してこっちに来ないか?


お前を次元管理局に引き渡せば巨額の金が貰えるんでな。どうだ?」


私の体は傷だらけだ。深すぎて私の治癒魔法では癒すことはできない。


力も入らなくて剣を握る手はプルプルと震えている。


どうやら私の力では戦うことはできないらしい。


『アレ』を使わなければ……。


『アレ』はお父様が私のためだけに用意してくれた力。


でも『アレ』はあまり使いたくない。


『アレ』を使えば私は自分を見失うかもしれない。


でも今はそんな事は言ってられない。


私はここで死ぬわけにはいかない。


それに今は無月を助けに行かなきゃ。


使おうか…『アレ』を……。


私はなんとか立ち上がり呪文を唱える。


そうそう、結界も強いものにしておかないと。


あんまりバレたくない事だから。




―我の奏でる音と共に まどろむ月夜に舞え 

     

               9つの力を持つ幻獣よ 


                  奏の名の下に告ぐ 我の前に姿を現せ―




「来なさい『妖狐』」


そして私の背後に妖狐が現れる。


「『第一の尾開放 同一』。任せたわ、妖狐。あまり無茶しないでね」


私の躰に妖狐の霊が入り込む。


「つっ…くっ…うぅ…」


予想以上にキツイかも…。


私の躯が妖狐になるわけだから憑依よりは遥かに辛い。


「あ…ぁあ…ぐぅ…」


自分の手が獣のように変化していくと共に私の意識も薄れていく。



☆奏の意識がなくなったのでここからは三人称で表記します☆



そしてしばらくして奏は9つの尾を持つ妖狐となった。


上から下まで真っ白な体毛に真紅に染まった眼。


大きさは3m強。霊としての妖狐よりは小さいが奏よりは大きい。


傷は癒え、人間であった頃の面影はどこにもない。


「ほう、そこまでするか」


リーガルは感心か呆れか、ふうっと大きく息を吐く。


「グルルルルルルゥ」


妖狐は大きく手を振り上げ、一気に振り下ろす。


リーガルは頭上にシールドを張り、妖狐の攻撃を受け止める。


「重いな…」


そうして受け止めている間にもう片方の手が横から襲いかかる。


「しまった!」


バシッ


リーガルは上からの重みを受け止めるしかなくそのまま叩かれる。


そのままほぼ直線に吹っ飛び校舎に激突する。


ぶつかった校舎の壁には放射状に大きな亀裂が入る。


妖狐は口元に膨大な魔力を溜める。


それは魔術師1人では足りなさすぎる量だ。


『邪炎』


妖狐の口から放たれた紫の炎は大きく揺らめきながらリーガルに向かっていく。


「ぬおおおおおおお!!」


リーガルはシールドを張ったが全く意味がない。


邪炎はシールドに一瞬でも進行を阻まれることなくリーガルへ向かい、燃やし尽くした。


そして妖狐の姿はゆっくりと奏の姿に戻り、妖狐の霊は消え去った。


「はぁ…はぁ…はぁ…」


なんとか帰ってこられた。


!!??


この寒気以上に恐怖すら感じる魔力は確か…。


私は疲労のせいでゆっくりとだったが無月を探して歩き始めた。





  〜共通(またの名を無月)SIDE〜


「お、奏か」


結界を解き、


屋根に寝ころんで夕日に染まった朱い空を眺めているオレの視界に奏の顔が映る。


「大丈夫?ロキが来てたようだけど?」


「ああ、大丈夫。なんか助けてくれたみたいだ」


「どうして?」


「知らん。気まぐれだとよ」


「そ」


そう言うと奏はオレの隣に座った。


「魔玉は持ってるの?それとも雫に場所訊いた?」


「いや。でも調べりゃあすぐわかるだろ。じゃ、行くか」




魔玉は案外早く見つかった。場所は本棚の一番右下の端っこ。


結界で魔玉に触れないようにし、本棚に見せてあった。


見つけるのは早かったが結界の解除は容易ではなかった。


少し時間は掛かったがようやく中の魔玉を手に入れられた。


「さて、さっさと転移するか」


呪文を唱えようとしたがそれを奏は制した。


「待って。私も無月も魔力を消費している。今日は休んだ方がいい」


しばらく考えていたが確かにあの技でかなりの魔力を消費した。


雫との戦闘中結界から漏れ出した魔力をほんのわずかに感じた。


何かは知らないが奏も多く魔力を消費する魔法を使ったようだ。


「そうだな。部屋に戻るか」




学校では校長と雫がいなくなったことで騒ぎになっていた。


オレと奏の所にも何か知ってるかと聞かれたが知らないと答えておいた。


そして部屋に戻り、ベッドで寝た。



☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



そして翌朝オレはヤなヤツの怒声で起こされる事になった。


「おい!起きろ!無月!!」


「何だうるせぇな…ってメデス!?」


メデスはオレの布団を引っぺがし揺さぶっていた。目覚めは最悪。


「ようやく起きたか。一大事だ!祢音ちゃんが見つかった!!」


その一言で一気に覚醒した。


「本当か!?」


「ああ早く来い!」


目の前にはスキーズブラズニルへの扉がある。


奏はすでに起きていた。準備は万端のようだ。


「よしっ行くぞ!!」

さあ!とうとう祢音の居場所が判明!!

無月たちは祢音を元に戻すことができるのかっ!!?次回もお楽しみに!


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