表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/73

第36話

「気づいていたんですか。ここは人が多いので校長室で話しましょうか」


そりゃ都合がいい。十中八九魔玉は校長室にある。


オレとやっとこちらに来た奏は校長室にいくことになった。




「では話してもらいましょうか。


いつから気づいていたんです?」


校長室のイスにリーガル校長が座り、隣に雫が付き添っている状態で話を始めた。


「始めにおかしいと思ったのは雫、お前が異世界の事について知っていたからだ。


普通異世界の存在を知らない世界に来た時は異世界の事について話さない事が多い。


なぜなら信じてもらえない事が極めて多く、信じてもらえてもどうにもならない事も多い。


だがお前は知っていた。」


「それはたまたま教えてくれる人に出会ってましたし、


私が信じるタイプだったかもしれませんよ?」


「まぁ確かにそれはあり得る話だ。


確信したのは違うところにある。


それはお前が自分の魔力を隠していた事だ。


その服によってな。その服には誰かの魔力が込められている。


多分そこの校長だろうな。


お前の魔力がこの世界のヤツらと違っていて服の魔力で誤魔化してると気づいたのは


初めて出会った時ファイルを棚に入れるために魔術を使ったその時だ。


あの時お前は自分の魔力で魔術を使った。服の魔力を使うことはできないしな。


おかしいと思ったがその時使ったのは


簡単な魔術で魔力なんてわずかに使うだけだから気のせいだと思ってた。


その時はオレはお前の服の魔力で見事に誤魔化されてた。


で、その後、オレはお前が魔術を使うのを何回か見た。


3回目ぐらいか、その辺りでお前はオレたちと同じように


この世界の人間じゃないってことに気づいた」


「他には?私たちが魔玉を使って敵を呼び寄せていた事でしたっけ?その根拠は?」


「その答えは簡単。ヘルやヘルの手下が現れたのは魔玉の反応があった後だったしな。


あいつらもロキの手下でもあるし魔玉を狙っているハズだ」


次元の怪盗も一応引き寄せられたヤツの一人だったけどそこは伏せておこう。


「魔玉捜索用のこの水晶ですら今まで感じ取れなかった魔力が


一時的に感じられた時があったのは


おそらく魔力を抑えていた結界が一時的に解かれたからだろう」


「他にも理由はあると思いますよ?例えば―――」


「そんなもんどうでもいい。


その辺は勘だ。あってたみたいで安心した。


オレが知ってるのはこんぐらいだ。


今度はお前たちに訊こう。雫が何者かなんて関係ない。魔玉はどこだ」


ここに魔玉があるのは確かなハズだが


結界が張られているせいかピンポイントではわからない。


「雫さん、こいつ目障りですねぇ……消しますか」


リーガルが立ち上がり指揮棒ほどの長さの杖を取り出し、こちらへ向けると先端が光り出す。


「ちっ!」


だがリーガルが杖を取り出した時にはすでに奏は走り出しており


術を使わせる前に奏はリーガルを押し出しそのまま後ろの窓を突き破って外に出る。


ちなみにここは3階だ。


このまま落ちてどうするつもりだろう。ま、いっか。





  〜無月SIDE〜


「お前がどうやら主に行動してたみたいだな。


もう一つ訊きたい事があるんだが……どうやってリーガルに協力させた?」


「彼は異世界の存在を理解してくれた唯一の人でした。


1日1回魔玉の結界を解いてその魔力に引き寄せられる者を殲滅して300万ルピー。


この条件を提示したら喜んで協力してくれましたよ」


なるほど。見た目通り意地汚いヤツだ。


「で、お前の正体と目的は?」


「私は『次元管理局第2特務部隊副隊長 雫』。


目的は魔玉を狙う者の殲滅と魔玉の回収。


この世界の魔玉は回収せずに餌となってもらいました。


そういえば……あなたも魔玉を狙っていましたね」


雫がそう言うと一帯に強力な結界が張られる。


この世界への一応の配慮ということか。


これならレベルの低い魔術師なら入って来れない。


じゃ、オレも自己紹介しておくか。


オレは『オルタナティブ所属の炎の調律師 如月無月』だ!」


『炎刃』


そう言って燃え盛るレーヴァテインを取り出す。


『飛炎斬』


雫へ剣を2回振ると炎だけがそのまま雫へ向かい、飛ぶ刃となる。


だが雫には軽々避けられる。


そのまま刃は壁にぶつかり、一定時間燃えると傷跡を残して消えた。


「炎を扱う魔術師ですか。では私の能力もお見せしましょうか」


すると雫は懐から医師が手術の時に使うようなメスを一本取り出す。


「それでどうするんだ?」


オレと雫との距離はメスなんかでは


投げなければ攻撃できないほど離れているが何かあるハズだ。


特務部隊の副隊長となれば……。


「こうするんです」


雫がメスをオレの頭より少し上あたりを目掛けて振る。


「!?」


後ろで何かを切るような音がしたので振り返ってみれば壁に大きな傷跡があった。


「私の能力は『創』。


今のはメスを媒体として魔力で刃を伸ばしただけです。


私の魔力は研ぎ澄ませば刃以上の切れ味を持たせることができる」


魔力ってそんなこともできんのか?まぁ雫のは特殊なんだろうが。


見えない刃。やっかいな能力だな。


「殺すつもりだったら今ので殺しておけばよかったんじゃないのか?」


「あなたのような何か知っていそうな者は捕らえてくるようにとの命令です。


それに能力をわからせてからでも勝てる自信はありますから。それでは……」


雫はそのまま後ろへ後退り、窓から飛び降り……ずに上へ飛んでいった。


「くそっ…待て!!」


オレも後を追って窓から出て上へ向かう。




現在屋根の上でオレと雫は対峙している。


雫の右手には伸縮自在の見えない刃を持つメス。


「………!」


その時、雫がメスを横に振った。


オレを切ろうとしているのは見えない刃だがオレは剣でその刃を脇腹辺りで止める。


見えてるよりは不利になるがメスの動きだけで長さはわからないが、向きぐらいはわかる。


その後、何回か雫はメスを振るが全ての攻撃をオレは防ぎきる。


全ての攻撃を防ぎ終えるとオレは雫に向かって走り出す。


「少しは見えているようですね。ですが…」


雫は性懲りもなく再びメスを振った。


オレはメスの動きで脇腹辺りを狙ってくると判断し、


剣を脇腹と平行に構えて刃を待ちかまえる。


そのまま弾き返して蹌踉よろめいた所を狙う!


だが……。

「!? なっ!」


雫がメスを振り終えても刃の当たる手応えがなかった。


それどころかオレの腹に鋭利な槍が突き刺さった感触と痛みを感じ、動きが止まる。


「誰も形にできるのは刃だけなんて言ってませんよ?


魔力なんですから曲げたり他の形にもできます」


迂闊だったか……腹の傷は浅くはないものの戦えないほどでもない。


「見切れますか?この動きを!」


雫は再びオレへメスを振る。


「ぐあっ!」


今度は体が切れる事はなかったが右太ももを貫通し、穴が空いた。


足に力が入らなくなりオレは膝をつく。


「ほらほらっ」


右腕、左腕、左太ももに次々魔力の槍が貫通し、オレの足下は血溜まりができる。


自分でもよく意識を失ってないな、と感心するほどの痛みが襲う。


「さあ降参して私と一緒に来なさい。提供してくれる情報次第では罪は軽くなる」


「嫌だね。仲間を売るような事はしない」


「…そう。決意は固いようね。じゃ、死んでもらおうかな」


雫は軽く微笑むとメスを大きく後ろへ引く。


どうする?


このままでは殺られる……。


「……!?」


体が……疼く……?


雫の振ったメスの先からオレ目掛けて伸びてくる何かぼんやりとした気配が感じられる。


キィィン


金属音が響き、オレはほぼ無意識に腕を動かし雫の攻撃を防いでいた。


「……え?」


雫は防ぐとは思わなかっただろう。オレでさえ思わなかったぐらいだからな。


体が勝手に動いた……?


この感じ……ヤバイな。


これはおそらく……早く誰かの血を飲まないと……。


オレは立ち上がった。


それはオレの意志ではなく血を求める欲によって……。


「オマエノ血ヲイタダクゾ……」


時間がない。血の欲がオレを支配するまでに何とかしないと。


「それは………殺さなくてはいけないですね。


あなたのような『魔物』は」


魔物か……そう言われても仕方ないか。吸血鬼だしな。


オレは再び走り出す。


「はっ!」


雫はさっきと同じようにメスを振るう。


だがメスの先の魔力の動きはさっきとは違うのがわかった。


ムチのようで足を払おうとしてくる。


オレは軽くジャンプしギリギリでかわす。


「くっ」


オレの目の前に大きな長方形の魔力が現れた。


おそらく盾代わりなのだろう。


オレは迷わずにその魔力を燃え盛るレーヴァテインで…斬った。


ついにオレは雫の傍に来た。


女を傷つけるのは気は進まないが今はそんなこと言ってる場合じゃねぇ。


腕を狙って剣を振るとひゅっと風を斬る音を立てる。


「うっ…」


雫はさすがに瞬発力がよく後ろへ退かれ、


あまり深く斬れなかったが腕は傷つけられたし血が剣に付着している。


オレも一旦後ろへ退き、剣に付着した血を舐める。


「何とか間に合ったか……さて張り切っていくか」


感想&評価待ってます〜

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ