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第35話

今回敵が現れた場所は中心にある広場ではなく、


オレたちがいた校庭と反対側の校庭だった。


校舎は四方を広い校庭に囲まれている。


校舎の中を進む直行コースでも校舎自体が大きいため


目的地である反対側の校庭に着くまで少しかかった。


転移魔法を使えばよかったのに気づいたのは目的地に着いてからだった。


「また来やがったか」


見上げれば昨日の船と同型の骨でできた船が宙を浮いている。


奏の言った通り船から強い魔力を感じる。


それは魔玉のように『物』が持つ魔力ではなく『者』が持つ魔力に感じられた。


だがそれ以外の魔力が感じられないわけではない。


「まずはザコだな」


骸骨兵が船から降りてくる。


と思ったのだが一向に降りてくる気配がない。


代わりにオレと同じくらいの1人の少女が船の甲板から姿を現す。


「!!」


その姿を見て一瞬でわかった。


強い魔力を持った者……こいつだ。


実際に姿を見るのと見ないのとでは感じられる魔力は全く違った。


ロキほどではないが今まで会ったヤツの中でもトップクラスの魔力だ。


「……お前か。私の船を破壊したヤツは」


ヤツはオレが船を破壊した時の状況を見ていないのに


破壊したのがオレだとわかっているようだ。


確実にオレの眼を見て言っている。


「私は死者の国を統べる女神『ヘル』」


少女でこれほどの魔力と威圧を放っているのには驚いた。


だがそれよりも驚いたのは姿だ。


右半身は普通の少女の姿をしているのだが異常なのは左半身だ。


なんと言ったらいいのか腐っている…と言えばいいのか、


とにかく生きている人の肌ではない。


言葉にするのは難しいのだがあえて言うと死んでいるように見えるのだ。


金色をした髪は下までは見えないがかなり長そうだ。


だが前髪は眼が隠れるほどでもない。


女神なんて神々しい名が合うような姿ではない。


真っ黒な服を着ているのは死を暗示しているのだろうか。


「そこのお前、降参して降りてこい!すでに包囲されている!」


気がつけば何人もの魔術師が杖を構えたまま船を囲んでいる。


「邪魔だ」


『召還 ダイダラボッチ がしゃどくろ』


ヘルが左手を挙げると校庭に大きな魔法陣が2つ現れ、


そこからゆっくりと起き上がるようにして2体の巨人、


ダイダラボッチとがしゃどくろが現れた。


ダイダラボッチは青い半透明の体をしていて剣などの武器は持っていないようだ。


同じくがしゃどくろも持っていない。


「これは……」


遅れてやってきた雫も言葉を失う。


ウルトラマンでも召還すれば勝てるか?


いや、オレそんなの召還できねぇっつか召還すらフェニックス以外できないぞ。


それにあんなでけぇヤツを一度に2体も召還できるなんてな。


「撃て」


ヘルが命じるとダイダラボッチの口元が光り出す。


「離れ―――」


オレが言い終わる前にダイダラボッチの口からレーザーが放たれ、


校庭の芝生に地割れのような傷ができる。


幸いそこには誰もいなかったが当たればケガ程度ではすまないだろう。


「!」


その後がしゃどくろがその大きな腕で校舎を薙ぎ払う。


校舎はあっけなく崩れ瓦礫の山と化す。


そこに人がいたのかはわからない。


「私は生徒たちを避難させてきます」


そう言って雫は校舎の方へ走っていった。


「さて、どうするか……」


やはり召還したヤツ……つまりヘラを倒せば還ると思うんだが…聖霊の場合はそうだし。


……やってみるか。


「奏、あのでけぇのは任せたぞ。


無理して倒さなくてもいい。ヘラはオレが殺る」


「わかった…」


オレは飛んでヘルのいる船の甲板に降り立つ。


「さて、さっさと死んでもらうか!」


オレはレーヴァテインを取り出す。


「あなたが如月無月……父様に勝てなかったあなたが私に勝てるとでも?」


ヘラはそう言って嘲笑い、骨の武器を創り出す。


その武器は先は尖っていてオレの剣ほどの長さをもつ骨だ。


「!? そうか、そうだったな」


神話の中ではロキには子供がいたっけな。


「じゃあ……いくぜ!!」


いくつもの火球を創り出し、一斉にヤツへと向かわせる。


「当たらないわ」


だがヘラは軽々と全てを回避してみせる。


ヘルが火球の回避に集中している間にオレはヘルの近くまで走る。


「くらえっ!」


ヘルがかわした瞬間にそこを目掛けて剣を振る。


「無理だ」


だがヘルの持ってる骨でその剣はヘルに当たる前に動きを止める。


「くそっ」


オレは一旦ヘラから離れ、剣の切っ先をヘルに向ける。


そこから勢いよく炎が放たれる。


「無理無理」


『ボーンシールド』


何もない所に一瞬で骨の盾が形成され、炎を防ぐ。


破れる感じはしない。


……なら。


オレは炎を放ったまま骨の盾に向かって駆け出す。


そして剣を盾に突き刺す。


オレの手に一瞬の手応えを与えてから盾は崩れ去った。


炎を放ったまま…。


「くぅっ!」


ヘルは炎の直撃を浴びる。


これで結構ダメージを与えられただろう。


「さすがは炎の調律師と炎の魔剣レーヴァテイン。威力は並ではないな」


殺すことも致命傷を負わすこともできなかったがダメージは与えられたようだ。


「だが私は死者の国を統べる女神、そう簡単には死なぬぞ?」


「んなもんわかってらぁ」


『炎刃』


オレはレーヴァテインに炎を宿らせる。


「お前を殺すのには小細工なんて通用しねぇだろうしな。全力でいくぞ!!」


オレは魔法陣を出して魔力を極限まで高める。一撃で欠片も残さず焼き尽くす。


「素晴らしい魔力だ……だがすまないな、用ができた。


今日の所は帰らせてもらうとしよう」


せっかくテンションが上がってきたというのにつれない事言いやがる。


「素直に帰すとでも思うか?」


もちろん帰すつもりはない。ここでヘルを殺す。


「いや…」


ヘルは持っていた骨をこちらへ投げつける。


「っと……ぐっ!」


骨は余裕でかわしたのだが、


その瞬間にヘルはオレの懐まで潜り込みオレの腹を蹴った。


その力はかなり強く、オレは船から放り出されてしまった。


その時に魔法陣も消滅し、高めていた魔力も元の値に戻る。


「うわっ!」


なんとか校庭に落ちる前に体勢を立て直し、再び飛んだがもう手遅れのようだ。


船は次元転移魔法によって転移し始めていた。


それと共にダイダラボッチとがしゃどくろも


うっすらと姿が薄くなって船が転移する頃には消え去った。


「ま、いっか。こっちも用があるし」


そしてオレは背後にいたリーガル校長、雫を見る。


「さて、教えてもらおうか。なんで異世界の人間である雫がいるのか。


それと魔玉の魔力を使って敵を呼び寄せていたのか………」


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